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ひねくれ少女ネトゲに入り浸る~強いってだけじゃ駄目なんですか?~  作者: せいゆ


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 無言で宿に戻った二人は、酒場の席に座り思い思いの表情で時間の流れに身を任せる。

 プリスターは何か方法がないか、ネットなどを眺めながら模索し、ミナモは退屈そうに足をぶらつかせてテーブルに突っ伏す。


「姫」


「姫じゃないけど、何?」


「姫は初心者じゃないですよね?」


 その立ち振る舞いや言動は初心者でない。


「初心者の定義にもよる、ネットゲーム歴はそこそこあるし、このゲームのプレイ歴は半年ほど」


「十分初心者じゃないですよ……」


「他のプレイヤーとの行動なんて殆どないし、このゲームの一般的な知識もそう多くない、そしてテイマーなんて初心の初心。そういう意味では初心者と何ら変わりないよ」


「そんなもんですかね?」


「知ったかぶりができないのさ」


 初心者に混じり、問答が出来るほど、WLMの知識が無いのだ。

 正確にはあるが、一般という枠組みの知識がない。


「じゃあ綺麗な羽の正体を教えてください」


「言って信じるなら教えてあげるよ」


「信じます」


 プリスターの表情は真剣そのもので茶化す事はできない。

 しかしミナモはそんな状態でも真面に信じるのか疑問に感じていた。


「噂程度でいいから、このゲームは他のゲームのストーリーやアイテムとか、色々要素が入ってるって言うの知ってる?」


「え? ……確か、そういう眉唾の話は聞いたことがあります」


 噂と言っても有名ではなく、とてもマイナーな噂だ。即興で思いついた嘘の様な、そんな信ぴょう性のない話となっている。


「う~ん、ほぼ嘘みたいな状態なんだね」


「本当?」


「さあどうでしょう」


 話が進まないというならば、プリスターはそれを受け入れるしかなく、じっと話すのを待つ。


「まあ、信じるか信じないかは自由に、私は羽について話すから適当に聞き流してよ」


 ミナモは羽の正体、天使について話すが、プリスターはやはりまだ半信半疑であった。

 完全に信じられない、理由はいたって簡単だ、証拠が無いからだ。そんな状態で話しても妄想の範疇を出ない。


「まあ、確たる証拠も無いからね、そう易々とは信じないのも頷ける」


「……正直、そうですね」


 ミナモは一人立ち上がり宿の受付へと向かう。


「どうするんですか?」


「手っ取り早く証拠を突き付けた方が早いでしょ」


 何をするのか不安になり、プリスターはその後ろを追いかけた。


「店主~」


「なんだ?」


「ここ何ヶ月かで一日寝込んだ人どれだけいます? できれば接触したい」


「ん? ……ああ、あの流行り病かって噂が立った時のか。

 確か……」


 店主は考え込み、一考すると難しい顔でミナモを見詰める。


「どうしたんですか?」


「い、いや、……う、う~ん」


 言いたくても言えないのか、ミナモを見て話せずにいた。

 しかしミナモには、その先の言葉が手に取る様に分かる。


「寝込んでる奴に殺意でも向けられましたか?」


 図星のようで目を白黒させたが、次第に顔を伏せていく。


「……ああ、そうだ」


「やっぱり」


「なんで分かったんだ?」


「単刀直入に、子供たちが持っていた綺麗な羽は今誰が持っている? 行方知れずの子供の兄?」


「綺麗な羽? ……羽?」


 羽についての記憶はなく首を横に振る。


「分からない、俺はその羽というのを知らない」


「なら寝込んだ奴に会いたい」


「分かった、しかし一体何なんだ? 子供達はそれで解決するのか?」


「今は暗闇の中を藻掻いてる最中さ、一つ一つ潰していくしかない」


 子供達を追うよりも、目の前の障害になるだろう事象を潰す事を優先した。

 店主に先導され、一軒の家に向かう。明かりが窓から漏れていて起きている事が伺える。

 しかし扉の前でノックをしても応答がない。


「誰も居ねぇ、まさか探し回ってるのか? あの娘は外なんて出歩けるほど強くはねぇぞ」


「……次の家に行きましょうか」


「全部は知らんがいいか?」


「全員でなくてもいいよ」


 さらに次の家に向かうが、その家にも寝込んでいた者の所在は不明であった。


「ここも居ないんですか?」


 プリスターは信ぴょう性が生まれてきたことに、不安感を大きく募らせる。


「ここの奴はガタイが良いから捜索に行ったかもしれん」


「じゃあ行ってない人で思い当たる人は?」


「……あの家なら」


「もう居ない気がする」


 次の家へと向かうが、結果はミナモが予想した通りに、寝込んでいた者の姿が無かった。


「なんで居ないんだ?」


 答えを求めるようにミナモへ視線を向ける。

 しかしミナモは肩をすくめて誤魔化した。


「さあ? 何かしてるんでしょ」


「それを一番知りたいのだが」


「分からん、しいて言うならろくでもない事なのは間違いない、ひょっとしたら子供達はそれに巻き込まれたのかも。

 ……このタイミング出払うっていうのもタイミングが良すぎる」


 偶然にしてはあまりにも事態が噛み合い過ぎていた、偶然ではなく必然と考えるのがもっともな考えだ。


「もしも、洗脳されてるとして」


「洗脳……?」


 村に住んでいるだけなら、絶対に聞く事の無い単語に、店主は首を傾げる。


「解決するにはどうしたら? 解除方法は本当に無いんですか?」


 プリスターの求めに、思いもよらない解答をした。


「肉体の変異が始まる前は殺しやすい」


「ころ、す?」


 プリスターは困惑する、洗脳はされていても捕らえて拘束すればいいのではないかと、そんな考えしかなかった。

 それなのに突然殺害と言われれば嫌でも頭が混乱する。


「殺すって、え? なんで? 捕らえて何とか洗脳を解くようにすれば」


「後だしで悪いが、肉体の変異が起こるんだ。

 最初は思考が、そして次第に肉体が変わっていく、そうなれば多分手の着けようが無くなる」


「変異って」


「幸い羽一枚じゃ10人、状態によっては20人程度しか眷属を増やせない」


 そしてプリスターに向き合い。


「覚悟を決めなくてはならないよ、無論、逃げるのも一つ」


「逃げる?」


「逃げればそれで君は手を汚さずにいられる、苦しい思いはしなくなるよ」


 プリスターは間違いなく村人に攻撃することを躊躇うだろう。

 攻撃できても殺害までに至ることできない、それは想像に難くない。

 逃げる事でそれ等を回避できるのならそれも選択の一つである。


「無論変異体はこれからもこの村に潜伏し続ける、もしくはどこかへ向かうか、あるいは」


「あるいは?」


「この村から人が居なくなるかもね」


「……この村で何が起きるんだ」


 ミナモは拳を握り親指だけを下げて首元に持ってくる。


「これさ」


 そして首を切る仕草をした。

 悲惨な事態になる事は変わりない。

 さらに選択させるのは、話を聞いた店主にまで及ぶ。


「さあ、店主、私の話を戯言と切り捨てるか、信じて何かしらの行動に移すか。

 選択の時だ」


 突き付けられた言葉のナイフに、二人は黙り頭を悩ませるしかできなかった。

 突然そんなことを言われても対処など難しい。

 しかしこのまま手をこまねいていても、見えない所で事態が最悪な方に転がっていく。


「姫は、どうするんですか?」


「私はどうもしない」


「どうもしない?」


「正確に言えば何かをしようと言う時は、誰も手を付けられなくなった時だけ、例え奴らが暴れだしても何もせず静観する」


「そんな……」


「いざ戦いとなるならば、君が頑張るか、あのテイマーが戦うしかないよ。

 幸いここから街は近い、プレイヤーでも呼んで対応してくれるだろう」


「私も半信半疑なのに、……来てくれませんよ、洗脳されて暴れるかもしれないから助けて? 私が正気を疑われます」


「なら子供が行方知れずだからと、それで呼べばいい、大事なんだろNPCが」


「そ、それなら」


 何をするにもプリスター一人では対処に困る。

 人が多ければそれだけ案が増える。

 急いで公式掲示板で人を募ろうとした、のだが。


「ま、待ってくれ、さっきの洗脳や変異って、も、もしも本当にそうなったら、その人達はどうなるんだ? 家族が居るんだぞ、殺さないだろ?」


 店主がすがるように訴えかける。


「私以外の人達が妙案を思いつくかもね。

 と言っても、タイムリミットはもう過ぎてるとは思う」


「タイムリミット、に、肉体の変異は?」


「洗脳後半月から一か月くらいで肉体の変異は終わる、潜伏してるという事は人間に化けてるんだろ」


 二人は必死に知恵を巡らせていると、突然ミナモが立ち止まり、プリスターと店主がぶつかった。


「……あの山の頂上付近で戦ってる」


「え?」


「あそこ」


 ミナモが指さす場所は山の一角であった、一見何の変哲もないはずなのだが、二人が目を凝らしていると。


「光った!」


 パチパチと光が何度も迸る。

 その光は山の木々が邪魔で原因を特定できないが、激しく何度も点滅していることから松明などの光ではない。戦闘により発生した魔法などの攻撃と推測した。

 真夜中にそういったやり取りがあるのは珍しく、野生のモンスター同士でそういった戦闘はあり得ない。


「あのテイマー、子供達を守りながら戦ってる、私達よりも早く行動してた様だね」


「子供達が!?」


「ど、どうしてわかるんですか!?」


 ミナモはアウトセンスで見つけたが、原理の分からない二人は困惑するしかない。


「相手は、ふむ、……じゃあ私達は村を行こうか、その方が良い」


「村にって、こ、子供達なら助けに――」


「一瞬であそこまで行けるならそれでいい。

 私達は全て後手に回ってしまっているからね」


「後手って、……まさか!?」


「覚悟を決める時間もなかったね」


 足取りは変わらずミナモは村の中央の方へと足を向けていった。

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