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時間はミナモ達が寝室でログアウトした時に後、メイアも少ししてログアウトしたのだが、その30分後に再びログインしていた。
「指示、待ち……」
イトウの教育方針の話で、指示待ちという言葉に悩まされていた。
休憩中もその言葉が響き、休むところではなかった。
(指示待ち人間、……わたくしが何度も言われた言葉)
その言葉は自分に向けて言われた言葉。
メイアは自分を指示待ち人間だとは思っていなかった。
しかし教育された環境のせいか、両親の言葉をただ聞いてその通りに行動していた。
(お父様やお母様の言葉を聞いて、自分なりに考えて行動していたのに)
自分が考えて行動していたはずであった。
『言われたこと以外もちゃんとやってよ、こっちにもやる事あるでしょ? みんなやってるよ、何もできない指示待ち人間なの?』
その言葉は文化祭の準備の時に言われた言葉。
学園に入学後、周りと馴染めぬまま時が過ぎていき、自主行動の際自分は何もできずにただ立ち尽くしていた。
同じく何をやるのか分からない者も居たが、そんな人間も近くに居た者に話しかけて行動していた。
(初めての学園祭なのに、みんなきっちりしてた)
教師の指示以外の行動に驚きを隠せなかった。
何故行動しているのか、本当に教師の指示以外の事をしてもいいのか、そんな疑問が浮かんでは消えて行動にすら移せなかった。
『ガチガチのお嬢様育ちみたいだし、所詮ただのボンボンよね』
良くも悪くもお金持ちの父母による教育だけ、娯楽よりも勉学に励ませるタイプであった。
学校でも自主性を高める様な教育ではなく、知識を増やすだけの授業ばかり。身なりの良い生徒ばかり、授業内容も凝り固まっていた。
周りの人間も、親同士が交流による繋がり、決められた相手以外の交流は出来ず、似たような人間ばかり。
(高校からはまったく合わなかった、別な生物が話してるかのようだった)
高校に入学するにあたり、メイアの両親は世界の広さを伝える為に、多種多様性を重んじる学校に進学させた。
そこは完全に異世界、知らない者達が会話し、言語が違うとしか思えない、意味不明な話題をする者達ばかりであった。
(だから、必死に話を聞いて、自分を変えるためにゲームをプレイし始めて……)
飛び交う言語にVRやゲームという単語を聞き、普通の人間はゲームをして遊んでいるという事を知った。
誰かと話を合わす事すら難しく、会話ができない為、切っ掛けを求めてゲームを始めた。
そして飛び込んだゲーム世界でも困惑することになる。
(全く分からなかった、言語が同じはずなのに)
翻訳されて同じ言語に聞こえるはずなのに、高校に入った時同様に異世界の言葉ばかりだ。
楽しそうに話す者達に負けじと、その言語の解読を始めた。
(テイマーを勧められたのも、ただ騙されてだった)
お勧められた当初は不遇でしかなかったテイマー、メイアは仲間になったモンスターをどうすればいいのかも分からず、強くなるために只管戦ってきた。
メイア自身戦闘は初心者そのもの、的確な指示は出来ないが、情報を次々と仕入れて自分なりに考えて育ててきた。
知れば知るほど世界が広がっていき、プレイヤーが話す言葉の意味も理解し、現実での教室での会話というのも理解できるようになっていった。
サブカルチャーに触れてメイアは成長はしているものの……。
(それでも友達は出来なかった)
いざ話しかけようとした時、声が出せずに話すことができなかった。
いつしか臆病になり、そしてゲーム内部でも一人で行動してしまい、全てが裏目に出てしまった。
(それでも上手くはやってきていたけど……)
ゲームにおいてはNPCやプレイヤーと話す事が多い。
話は事務的な事ばかりで盛り上げる事は無かったが、同じような人種がそこそこ居たため無駄な会話もなく続ける事が出来た。
(戦ってばかりだった、それしか知らなかったから)
ゲームイコール戦闘という考えの人が多いせいで、活気ずくWLM内の情報は戦闘面の話題が多く、メイアはそのことばかり仕入れて戦いに明け暮れていた。
最初は苦手であったが、従魔達が強くなって進化していくのを見て、一喜一憂し、のめり込んでいった。
戦う事ばかりだと思い込んでいたからこそ強くなり、そして『仲間』ができると思って一心不乱に頑張ってきた。
何時しかトップテイマーという名前を頂き。
(けど、友達は出来なかった)
逃避と同じであった。強くなることで仲間や友達が増えると思い込んでいたのだ。
心を許せる友達や仲間というのに巡り合うことは出来ず、頭を悩ませる。
そんなある時、ゲーム内の喫茶店で、複数人で談笑している会話を耳にする。
『だっる、もっと楽に稼げないのかなぁ』
『それな』
『なら俺の体を売るよ、安いぜ』
『要らねぇ、男だろ俺たち』
『俺ならいいぜ』
『うわ、きもっ』
『出会ってまだなのに、キモイ会話すんな』
『お前から始めたんだろ』
下らない談笑と下品な会話、ゲラゲラと笑う声は、メイアにとって不快しか感じない。
だというのにそのやり取りに心は惹かれる。
(どうしてあの人たちは会ったばかりなのに仲良くできるんでしょ……)
自分になくて他にあるもの、手を伸ばせば届く気がするが、どうしても手を伸ばせずにいた。
(わたくしもあんな親密に会話なんて)
フレンドリーな対応というのがどうしてもできない。
これだけはどう頑張ってもできる気がせず、時間が経つほど難易度が上がっていく。
『つーか、ほんと、親しみやすいよなお前』
『当たり前だろ』
『どういう意味だよ?』
それはメイアが知りたかった事、自然と彼らの話に意識を集中して聞いていたのだが。
『素を出しているからだよ、一々へつらってても合わないやつとは合わないから、素を曝け出していくのさ。
そうすりゃ気の合うのしか残らんからな』
それはメイアが求めていた答えではなかったが、それを参考にして出来る限り思った事を口にする事にした。
しかし今に至る。むしろ孤高、悪く言えばコミュニケーション能力の欠如、所謂コミュ障を発症した人物でしかなかった。
(どうしてあの子たちはすぐに打ち解けられるんだろ……)
ミナモとプリスター、その二人を見てメイアは打ち解けの速さに驚かされた。
(そもそもあの子、ミナモっていう子はあまりにもだらしなかったのに、一番何かを考えてる風で、……悔しい)
あまりにもだらしなく、しかし柔軟に態度を変えて潜り込む。飄々としながら実力を示して、羨ましくも腹立たしく嫉妬を抱いてしまう。
「はぁ、リセットしないと」
酒場を後にして外の空気を吸いに行く。
星々の瞬きと生活の光が心地いい、しかしこの時ばかりは雰囲気に浸ることが出来なかった。
宿の裏にある従魔達の宿舎に向かうと、二匹の従魔はメイアの姿を確認して立ち上がる。
(……わたくしはこの子達にも間違った育て方をしてしまったんでしょうか?)
自主性を重んじる、その育て方を知り、自分の行動が間違っているのではないかと、強く不安を抱く。
従魔達の顔をそっとなでると従魔達はメイアに頬擦りをして返す、その行為に不安が少し取り除かれるが、すべてを拭い去ることは出来ない。
(今からでも、遅くはない、わたくしだって変わりたいから)
自分を変える為従魔達の為にも、何度目かの再スタートを切ることにした。
気合を入れたところだが、従魔達がメイアではなく別な方へと視線を向けていた。
「どうかしました?」
釣られてそちらの方を見ると、そこには小さな人影達が建物の影から、顔だけ覗かせいる事に気が付いた。
(子供達? こんな夜に?)
子供達が不安そうにしながら眺めていたが、意を決した一人の子供が恐る恐るこちらへと近づいてくる。
「どうしました? もう夜ですよ?」
「た、旅の、姉ちゃん、って強い?」
「え?」
質問の意図は分かるのだが、何故それをこの時間に脈絡もなく聞かれるのか意味が分からず首をかしげる。
「一応は、強いつもりですが」
「じゃ、じゃあさ、お、俺たちを、この、村を救ってくれ!」
突然ことに固まった。
村を救う、子供達に言われても揶揄っているだけにしか聞こえないが、6人の子供達はとっても必死に訴えていた。
「俺達の知らない所で、村が乗っ取られるって。それにこいつの兄ちゃんも体が弱いのに急に元気になって」
「え? 元気になるのは良いのでは?」
それに対してラタークの弟は首をゆっくりと横に振って答える。
「おかしくなっていくんだ、体も変になって、お父さんとお母さんは街にお医者様を呼びに行って帰ってこないの、……もう嫌だ」
「体が変に?」
「それだけじゃねぇんだ、よくわかんねぇ事ぶつぶつ言って、怖いんだよ、母ちゃんや父ちゃんもそいつらの仲間だと思うと……」
それを皮切りに子供達はメイアに抱き着いて必死に訴えかける。
「助けてお姉ちゃん!」
「お父さんを元に戻して……」
「お願い!」
子供達の数名は泣き縋り助けを求める、釣られて泣きそうになる者もいた。
そんな姿を見ればただ事ではない事は明白である。
(もしも本当だったら一大事、この様子から間違いない気がする)
助けるのが一番なのだが、子供たちの情報だけでは行動に移しづらい。
(ど、どうすれば……)
自分一人で行動するにはあまりにも規模が大きい話だ。
判断をしかねていると、ふと言葉がよぎる。
『指示待ち』
その言葉が響くと急激に冷静になっていく、次に取るべき行動を考え出していた。
(一先ずもっと詳しい話を聞いて、それからその話自体の裏付け)
行動するにも情報が必要であった。
「いいですか? 物事を一つずつ順に話してください」
そして羽を拾った後からおかしくなっていったという事を話し始めた。
最初はラタークに羽をプレゼントした後から異変が始まった。
二日ほどで快方に向かいったのだが、その時から変な事を口走り始めた。
「穢れが蓄積しているとか、よくわからない事言い始めたの。
小さな声でよく分からない事も言ってたんだけど、聞こえなかった」
それから村では一日寝込む者が現れ、同じくおかしくなる者が現れた。
「わたしのお父さんもおなしくなって、怖くて……」
「しばらくして人が森の中で白い化け物になってさ、……父ちゃんも母ちゃんもああなってるかもしれねぇ」
子供たちの不安はすでに限界に近い。
「もし私達が来なかったらどうしたんですか?」
「俺達今日この村から逃げて、街に助けを求めに行こうと思って……」
「子供達だけで……」
子供達の覚悟は本物だ、疑う余地もなくメイアは信じることにした。
「分かりました。わたくしが助けます」
助けると判断したのだが問題はある。
(どう行動すればいいのでしょ?)
解決への道しるべが見えない。
村に化け物が居る事が分かっただけで、それ以外の情報が無い。
(人が化け物になる? 流石に人から化け物にはならないでしょうから、この場合何かしらのモンスターが人間に化けていると考えるしかないわね)
子供達は真実を話しているのだが、信じる事は出来ない。
人間が化け物になるという事例がないという事もあるが、もしも本当だった場合今後のプレイに支障がでる、未来は疑心暗鬼の世界になるだろう。
「じゃ、じゃあ、いったん街に人を呼びに行こう、早く人を多く呼ばないと」
その提案をした男の子にメイアが首を振った。
「それは街の住人達は信じないでしょう」
「ど、どうして?」
「わたくしは信じましたが、多くの人に信じてもらうとなるとそれ相応の証拠が必要です、化け物に乗っ取られてたという確たる証拠。
証明してもらえれば助けてくれるはずです」
「証拠……」
子供達は家族の為にも必死になり証拠について考えるが、思い浮かぶことは無い。
「あっ」
「何かありましたか?」
「無いから作ればいいんだ」
「え?」
考えても証拠はない、ならば証拠を作り上げるというのがその子供の考えだ。
突飛押しのない発想にメイアは呆然としてしまう。




