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ひねくれ少女ネトゲに入り浸る~強いってだけじゃ駄目なんですか?~  作者: せいゆ


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 目的地のセレンへとたどり着き、倉庫の立ち並ぶ地区へとやって来る。

 初心者達に交じり、護衛達が謝罪と言わんばかりに、荷物の運び方を手伝っていた。


「凄かったっすね」


 ミナモは来る時同様、倉庫にある壁にもたれかかり、搬入作業を眺めていると、そこにアイゾーがやって来る。


「やらんの?」


「サボりっす」


 アイゾーが横に腰を下ろし、同じように作業を眺め始めた。


「ねえ」


「なんっすか?」


「レベルの偽装とか見た目も変えれたりするのってどうやるの?」


 アイゾーの表情が凍り付いた。

 少しの無言の後、ぎこちなく笑みを浮かべ。


「バレてましたか」


 言葉の語尾に「っす」を付けることなく、丁寧な口調に変る。


「何処で気が付きましたか?」


「馬車に乗って時俯いて口をパクパクしてた時」


 出発時に顔を隠すように俯き、一言二言口をパクパクと動かすのを確認した。

 内容は分からないが、その時誰かとフレンドチャットで会話していることに気が付き、何食わぬ顔をしていたのが決めてであった。


「……随分前ですね」


「あの後盗賊も来たし、それに、えっと、男の子を止めた時に力が強かったからね。

 答え合わせは必要なかったよ」


「私もまだまだっすねぇ」


 顔を両手で覆い、コシコシとこすり付けてため息一つ吐く。その表情は崩れ疲れた様子だ。


「偽装も変装も教えてあげられないっすよ」


「じゃあいいや、探すのもゲームの醍醐味だし」


「……私を倒さないんですか?」


「ぶっちゃけ、三日前まで宇宙海賊として、ヒャッハーとかやってた身だし、危害が無いから別に倒す必要もないし。

 恨みがあるとするならば、レベルが上っちゃった事くらいかな」


「とんでもない理由で生かされてるっす、しかもどんな恨みっすか。

 はぁ、本当に、後輩クランの成長を促すはずが、まさか自分達の不甲斐なさを見詰め直す事になるとは」


「ご苦労様です」


 元凶に言われて恨めそうに視線を送るが意ともしなかった。


「……あのクランメンバーが騒いでるっす」


「なんて?」


「何をされたのか分からないまま、煽られて死んで悔しいそうです。

 うんさん、なんとかって言ってますけど、どういう事ですか?」


「塵散手雲散霧消之太刀、違うゲームのスキルなんだけどね」


「そんなスキルがあるんですね、いえ、アーツですか」


「それが何故か登録できちゃったんだよ。

 著作権って大丈夫なのかな?」


「あー、それ、多分運営が色々事前に許可取ってると思うっすよ」


「ええ?」


「あまり信じてもらえないんですけど、前に別なゲームでのスキルを真似したら、アーツとして登録された時があったんですよね。

 運営に連絡したら、事前に許可が取れたと連絡が来たんです」


「あー、なるほど、ふむ、そういう事か、なるほどなぁ」


 ヴァルアクの件もそうなのだが、どうやら様々なゲームが関係していそうだ。

 いくらなんでも手広く許可を取っていることに疑問を感じるが、それよりもある疑問が浮かんでくる。


「なんでその話が広まってないんだろ?

 リアフレが知らないみたいだったけど」


「広まらないんですよ。

 昔のゲームで映像が残ってなかったり、同じ名前の技だったり、そういうのがあったって言っても信じてもらえず。

 似てるだけとか、『よくある』で済まされてしまうんっすよねぇ」


「そうなるかぁ」


 数多のゲームがあるということは、ネタなどが被るということでもある。

 業界内部でも暗黙のルールとしていて、一定のラインを越えなければ咎めることはない。


「ところで、先程納得していましたけど、何がどういう意味なんですか?」


「他ゲームの要素があっただけ。

 それ以上の情報は内緒」


 唇に手を当てる仕草を見て、これ以上の情報を得られないと察し、別な事を尋ねる。


「駄目元で、もう一ついいですか?」


「ん?」


「先ほどのチリヂリテウンサンムショウノタチというのは、どうやって使ったんですか?」


「どうって、普通に」


「言葉を言えば発動する?」


「いいや。

 言葉を言うのはセットアップなだけだよ、自分にこの技を使うから心の準備をしろって命令するの、深呼吸みたいなものだね」


「変わった方法ですね、後は?」


「後は力技、高速で駆け抜けて、相手を塵になるまで斬りつけるだけ。

 バフを付けると限界行動範囲が増えるから、以外とやれるもんだ」


「はい?」


 冗談を言っているのか理解できず、同時に頭が理解するのを拒む。

 聞いてしまえば後戻りできない、そんな気がしてならなかった。だが好奇心はその深淵を覗けと訴えかけている。


「あ、あの」


「おい」


 そんな時、セブラがやってきて、アイゾーの腕を掴んだ。


「サボるな」


「ちょ、ちょっと待ってほしいっす。

 し、知りたいっす」


「ならサボるな、後で聞け」


「強くなる方法っす」


 強くなる、それを聞くとセブラも黙ってはいられず、ミナモに視線を向けた。

 自分の腕を一瞬にして断つ、その恨みはあるが、強さだけは知りたく、無言で訴えかける。


「……アウトセンス、それを調べて自分たちで頑張れ、としか言えんよ」


 その答えに応じ、2人の背中を見送る。

 ミナモは吹き抜ける風と共に、ふらりと倉庫群から去っていった。


 ☆☆


 街の中を歩き、そっと裏路地に入る。

 そこで壁に寄りかかり待っていると、後ろからやって来た人物に声をかけられた。


「やあ」


「どうも」


 ミナモに平然と話しかけてくる男性のエルフ、その男性は近くの壁にもたれ掛かり親し気に話を始めた。

 胡散臭そうな細眼、おまけにスーツまで来ていて、周りの雰囲気からは浮いている。


「どうだい? 面白いゲームだろ?」


「面白いかなぁ?」


「そうだろうそうだろう、なんとも言えない微妙な感覚だろう」


「そうっすね」


 対してミナモは少しだけ警戒を露にして、距離感を保つ。

 相手が何者か分からない状態で親しげにも話せない。

 何より警戒する理由が一つだけあった。


「けどそれよりも」


「なんだい?」


「ストーカーはどうかと、途中から離れた位置で見てたでしょ?」


「うん、すまないね。

 その事については謝るよ」


 彼は途中からじっと馬車の方を眺めていた。

 2キロほど離れた森の中を、じっと馬車だけを見詰めていたのだ。

 つまり彼はアウトセンスを使うプレイヤーであった。


「けど君もこのゲームを体験して分かっただろう? 人気なのは分かるが、なってない」


 なってない、その言葉の理由をミナモは理解していた。

 色んな物に捕らわれている、その事を指しているのではないかと推測する。


「……別に良いじゃないですか、その人が自由に遊ぶ為のものなんですから」


「うむ、その通り。

 しかしそれは私達も同じではないか?」


「まあ、そうっすね」


 楽しむ権利は誰にでもある。

 それはミナモも同じで、そして目の前の男もまた同じであった。


「私は退屈だった、右を見ても左を見てもアウトセンスを使えない者ばかり」


「昔クソゲ対戦がありましたよ、サ終しましたけど」


「無論私もやっていたよ」


「何位っすか?」


「これでも一桁だったんだ」


「マジっすか、私はそこまで到達できなかったっすよ。

 今やりません?」


「嗚呼、それも楽しいだろうね」


 かつての事を思い出し、男も乗る気であったのだが。


「けど駄目だ、ここじゃ被害が多いし、なによりもっと面白い事がある」


 彼は首を振って、そして不敵に微笑む。

 ミナモはその面白い事に興味が出てきて、やっと首を男の方へと向けた。


「なんっすか?」


「まあ、その話をする前に、ちょっとした意識調査と愚痴を吐かせてほしい」


「はぁ、まあ、どうぞ」


「私はね、このゲームに色々と潰されたんだ、やっと見つけた癒しを」


 表情は固く何を思っているのかミナモには分からない。

 しかしこのゲームが存在している事で、他のゲームが衰えている事は確かだ。


「それは、災難っすね」


「君もまた同じだろ? この時期だと、あのスペコンからじゃないか? しかも無敗で暴れ回ってた人だろ?」


「……ストーカー?」


「違う違う。

 普通に考えれば分かる事だよ」


 ミナモの装備は一部が初心者用、開始間もない事は間違いなく、サービスが終わった最近のゲームは一件しかない。そこに腕のいい者となると限られてくる。


「私もあのゲームをやってみたが、どうも体を動かす様に操作が出来なくてね、君に成すすべなくボコボコにされてしまった」


「馴れないと難しいですからね」


 過去を思い出すが、そこまで上手い人がいなかった。男性と相対した時を絶対に思い出す事はないだろう。


「話を戻すが、私はあの癒しを求めてやっていたのだが、……このゲームに顧客を奪われ、過疎で散って行ってしまった。

 確かにこちらのテイマーも魅力だが、あのゲームにしかない癒しがあったんだ」


 悔しそうに、同時に哀愁が何処か漂っていた。


「これからもまた同じ様に潰されていく」


「まさか、俺がやられて嫌だったから、お前にもその悲しみを味合わせる系っすか?」


 彼から感じる雰囲気は恨みに近いものだ。

 しかし彼は首を振った。


「それもあるかもしれない。

 だからこそ、乗らないか?」


「何に?」


「このゲームの革命だよ、救うための、そして終わらせる為の革命」


 胡散臭いこの上ない誘いであった。

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