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ひねくれ少女ネトゲに入り浸る~強いってだけじゃ駄目なんですか?~  作者: せいゆ


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 ミナモ達が向かったのは商店街裏にある倉庫群だ。

 その一角に複数の馬車があり、積荷の詰め込む作業をしていた。

 作業はプレイヤーも混じりっている。そのプレイヤーの殆どが頼りない見た目の装備ばかりで、低レベル帯の者達と一目でわかる。


「初心者も居るの?」


「護衛を初心者には任せられないから、あっちが護衛の人達」


 積み込み作業をしている者達から離れた場所で、強そうな装備を着込むプレイヤー達が居た。

 護衛の打ち合わせで移動計画を再確認しているところだ。


「初心者は搬入作業ね。

 後はそのまま乗って積荷を降ろす仕事もしなくちゃいけないの」


「帰り大変そう」


「大変でも冒険にはなるから楽しいものよ。

 ギルドの信用も手に入るしね」


 転移装置の使用許可が何よりも必要な様であった。


「それじゃ私は少しお話してくるから」


 依頼について話がある様で、近くに居た商人に連れられて別な場所へと向かって行った。

 残されたミナモは気怠そうにする初心者達を眺める。


「サボってないで手伝えよ」


 その積荷を片付けている少年がぶっきら棒に話しかけて来る。


「私依頼受けてないよ」


「は?」


「街まで相乗りするだけ」


「んだよ……」


 男は苛立ちながら再び積み込み作業を始める。


(一緒に仕事でもするなら今後の為にも手伝ってたけど)


 近くで見るのも心苦しく、少し離れた場所で作業を眺める。

 エルニカが戻ってきて、同じように壁にもたれかかり話しかける。


「どう、みんなこうやって立派になっていくのよ」


「立派ねぇ」


 嫌々とやっている姿を見て、本当に楽しくゲームをしているのか疑問に感じた。

 ゲームにでも嫌な事はあるが、彼等の作業姿は嫌悪に近い行動にしか見えない。


「好きなこと以外の嫌な事もあるけど、楽しむための下準備よ」


「個人的には苦労の中に楽しむ要素が欲しいけど。

 この際街から出て、徐々にギルドの信頼を得ていくってプレイスタイルでも良いとは思う」


「人間、そんな柔軟に物事をできないのよ。

 それにね」


「それに?」


「この街、プレイヤーの拠点でもあるから、できる限り離れたくはないのよ。

 露店も多いし、人も多い。至れり尽くせりな場所から遠ざかって、1人地方で生き延びるのは大変よ」


「まあ、確かに」


 エルニカの言っていることは間違いない。

 MMOという性質上、他者との助け合いが不可欠、プレイヤーにとってこの街は楽園の様な場所だ。

 人の少ない地域での活動には不便が出る。


「ところで」


「はい」


「ミナモちゃんは何が不満だったの?」


 今が尋ねるタイミングだとエルニカは思い立ち、出会った時ミナモが抱えていた不満を尋ねた。


「不満? ……ああ。

 なんと例えればいいのか、……簡単に言ってしまえば過去からの侵略者と言うか、楽しむのを阻害するために生まれた存在というか」


「よ、よく分からないわね。

 人間関係?」


「ゲームの仕様ですかね。

 あれがなければ素直にこのゲームを楽しめてたはずなんですけどねぇ。はぁ、後一日遅く始めてたら知るのはもっと先になってただろうに」


 自分には解決できない悩みという事が分かり、これ以上は解決に動けそうにない。


「他のゲームをしてたのね、前まで何をしてたの?」


「これの前はスペコン。

 スペースコンバットシム系です、宇宙船でバンバンと撃ち合う」


「全く違うジャンルなのね、ファンタジー系は初めてってわけじゃないわよね?」


「そうですね。

 ファンタジー系はここ二年はやってませんねぇ」


「結構前ね、じゃあ一応ネットゲームの先輩さんなのね。

 私はこれの前に一年くらいしかしてないから、まだ合計で二年もしていないの」


「それでも結構長くしてるね。

 人居ない所だとすぐにサービス終わってしまうのに」


「私がやっていたのはまだ続いてるわ、けどもう人が居ないみたいだけど……」


「このゲームに人が集中してるからねぇ、量産型じゃ太刀打ちできないよね」


「量産型?」


「目新しい要素がない、手垢の付いた王道な作りの作品。

 そういうのを総じて量産型って言われてるの」


 レベルがあり、敵を倒して強くなり、モンスターからアイテムを手に入れたり、そんな当たり前の王道作品、それが世に溢れている。

 目新しさや売りがあればまた違うのだが、多く長くゲームをしているプレイヤー層から見れば、変わり映えのしない味の無いガムだ。


「だから少し王道から外れたこのゲームが上手く人を呼び込めたんだろうけど」


「自由を売りにしてるって公式が言ってるものね。

 確かに前やってたのより比べ物にならないわ」


 自由という言葉に聊か疑問を抱かずにはいられなかった。


「自由ねぇ、まあ自由の中の秩序という事で、……あんな事なってるんだろうけど」


 やろうと思えば本当に自由だ、けどプレイヤーの作り上げたルールに縛られ苦労しているだけに見えた。

 何処か現実と同じ光景に複雑な思いを二人は抱えた。


「秩序があるから面白いってのもあるんだけれどね、量産型にはそれがある。

 独特なルールとかそういう仕様、あれはあれで掘り当てられたなら楽しい」


 王道は王道だからこそ素晴らしいものでもある。一部は味の無いガムではなく、噛めば噛むほど旨味がでるスルメであることは間違いない。


「まあ、人も居なくて結局味が出る前に辞める事になるけど」


 前にやっていたゲームも同じであった。


「……ミナモちゃんはこのゲームを、どう思ってるの?」


「え? ……う~ん、二日目だしどうとは言えないかな」


 ミナモ自身もこのゲームの面白さという要素を全くつかめていない。


「オリジナルの技とか作れたり、いろいろ自由ってのも何となく分かるけど。

 分かるってだけで、今の所他のファンタジー系と変わりはしないかな、むしろ横に広がった分途方も無くなってる感じ」


 自由だからこそ、何をして良いのか、その明確な目標が存在していなかった。


「ストーリーもないし、プレイヤーに明確な目的を開示もしてない。

 私みたいな目標もなしに飛び込んでくると、ある意味苦労するだろうね」


 面白さを感じさせ要素を見つけられない事が、今の憂鬱とした状況に拍車をかけていた。


「エルニカさんは何を目的で始めたの? どうやって面白い物を見つけたの?」


「私? 私は……」


 楽しい話のはずが、エルニカの顔が曇っていた。


「お姉さんに誘われて、それで、気が付いたらハマってた」


 新しいゲームに右往左往していたら、いつの間にか気になるのもを見つけてのめり込んでいた、ただそれだけであった。


「うん、そう、……面白かった」


(ん? 何かあるのかなこの人も)


 何処か憂いを帯びた雰囲気に違和感を覚える。

 丁度その時詰め込み作業と点検を終え、商人が声を上げる。


「冒険者の皆さん、こちらは準備が終わりました。

 速やかにそちらの準備を済ませてください」


 若干消化不良感が否めないが、これで話を区切り、2人は指定された馬車へと乗り込む事にした。

 乗り込んだ馬車には荷物が多く積まれているが、開いてる場所もあり、そこにプレイヤーが5名ほど座っていた。

 馬車は布で覆われた荷車で、前方の座席側と後方が開いてる。


(おや、さっきのクソガキ系が居る)


 ミナモに話しかけて来た不愛想な者が居る為、雰囲気的にも窮屈感があった。


「こんにちは」


 そんな中でも女子三人は笑みを向けて挨拶し、釣られてもう一人の男子も挨拶をする。ぶっきら棒なもう一人の男子は視線を送るだけで挨拶をする事は無かった。


「よろしくね、何かあったら私に何でも聞いてね」


「よろしく~、私は昨日始めたばかりだから初心者だよ」


「という事は私が先輩だ! 初めての後輩、燃えてきた!」


 1人の少女が意気込み始める。その隣に居た相方らしき少女は苦笑し何か言いたげにしていた。


「あたしはトリシャ、こっちはピーファちゃん」


 トリシャは槍を持った、サイドテールの活発そうな赤髪エルフの少女。

 隣に居るのはヒューマンの大人しい雰囲気の緑髪のツインテール少女であった。


「ピーファだ、よろしく頼む」


「アイゾーっすよろしくっす」


 アイゾーは短髪のトリシャ同様活発な印象を受ける黒髪のヒューマン。

 男子二人は自己紹介はしないが、ぶっきら棒な二枚目な見た目がセブラ、糸目の男子がニュートと言う名前であった。


「よーし、お姉ちゃんがアーツの事を教えちゃうぞ」


「わーい」


 初心者だという事を真に受け、トリシャが楽しそうに話し始めた。

 ミナモは素直にそれに合わせると、一変する雰囲気にエルニカが内心驚いていた。


「まずはバフのアーツ、これ大事」


(知ってる)


 バフとは、強化効果の事だ。ステータスを強化したり、有利に働く効果全般をバフと言われ、逆に不利に働く効果をデバフと言われていた。


「神聖魔法とかにバフのアーツが一杯あるよ。

 あ、バフって言うのはね強くなるんだよ」


「力強くなるんですか?」


「うん、動きが速くなったりするんだよ。

 ミナモちゃんは何の魔法をセットしてるの?」


「精霊魔法です」


「精霊魔法? 聞いたことない」


 トリシャは初心者の様で、使えないと評判の精霊魔法を知らなかった。

 助け舟を求めてピーファに視線を送るが首を振った。


「精霊魔法って言うのは、精霊を使った魔法の事っす」


「アイゾーちゃん! 流石ね」


「そんなことないっす」


「それでアイゾーちゃん、どんなことできるの?」


「え? い、いやー、それは」


 アイゾーは評判の悪さを知っている、だから言い淀んでしどろもどろしていた。

 代わりいセブラが徐に口を開いた。


「雑魚だよ雑魚、今じゃ一番使えないスキルだよ」


 包みなく一般的な意見を投げた。

 しかし包みが無いからこそトリシャには反感を買い。


「感じ悪っ」


「ケッ」


 互いにそっぽ向き場の空気が悪くなる。

 距離的に真ん中に居た細目のニュートは苦笑いをして心配し始める。


「さっ、女子は女子で楽しく話しましょ」


「あ、あらあら」


 エルニカは何も言えず、板挟みにあい居辛そうにするニュートの肩を叩いた。そして自分は女子の輪に入っていった。


(初心者が多いから性格も難点な人が居るのは確かか。

 確かにこれは長旅疲れるわ)


 先行きが不安だ、道中何事もない事を祈るのだが、事が上手くいく事は無かった。

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