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第三十五話 勝手に決まる話

翌日、基地の会議室。

会議室には俺とましろ、それに凪隊長、久遠副隊長、焔乃宮の五人が集まっていた。


紅蓮と紅麗は検査のため、別行動。

芙蓉さんも付き添ってくれているので、研究者たちが暴走する心配は……多分ないはずだ。


重苦しい空気の中、凪隊長が口を開く。


「それでは始めようか」


そう言うと、視線が焔乃宮へ向けられる。


焔乃宮は小さく頷き、一枚の資料を机の上に置いた。


「報告したいことがあります」


その表情は久しぶりに硬い。


「紅蓮と紅麗の件です」


そう切り出し、一度資料へ目を落とす。


「昨夜、『二人が魔人へ進化した』と軍へ第一報を入れました」


「早っ」


思わず声が漏れる。


しかし、凪隊長と久遠副隊長は特に驚いた様子もない。


「まあ当然じゃな」


「それが焔乃宮君の仕事だからね」


そういえば、焔乃宮はこの部隊の監視役だったな。

……忘れてたけど。


「その報告を受け、軍上層部から現地確認の要請が来ています」


現地確認?


俺が首を傾げると、焔乃宮が説明を続ける。


「進化の理由も、危険性も、今後の対応も不明な点が多すぎるため、実際に確認したいとのことです」


まあ、そりゃそうか。


俺だって『竜が二体、魔人になりました』なんて報告を受けたら、自分の目で確かめたくなる。


「確認を希望しているのは誰だい?」


凪隊長が尋ねた。


「天風大佐です。査察官と研究員も数名同行するとのことです」


天風大佐か。

魔人に理解があるようだったし、妥当な人選ってことなんだろう。


そんなことを考えていると、腕を引かれた。


「ねえねえ、あまかぜ大佐って、あのゲームの上手かったおじさん?」


ましろにとってはその認識らしい。まあ別に間違ってはいない。

「そうだ」と答えたら、


「また、いっしょにゲームしたいね!」


と言われてしまった。


俺は緊張するから、あんまりしたくないんだけど。

まあ、会ったときにお願いだけはしてみるか……。


俺たちがそんな話をしていると、凪隊長が久遠副隊長の方へ視線を向けた。


「久遠はどう思う?」


「別に構わん」


副隊長はあっさり答えた。


「どうせ近いうちに知られる話じゃ。それに早い方が良いじゃろ」


「だね」


隊長も頷く。


どうやら二人とも反対する気はないらしい。


「それじゃ、受け入れる方向で進めようか」


「ありがとうございます」


焔乃宮はほっとしたように息を吐いた。


しかし、会議はまだ終わっていなかった。副隊長が静かに口を開いた。


「我からも紅蓮と紅麗のことで、一つ良いか?」


「何かあったのかい?」


隊長が真剣な表情で聞き返した。


場に不穏な空気が流れた。

それこそ、ましろですら心配そうに副隊長を見つめていた。


「そんなに緊張せずとも良い。大した話ではない」


副隊長は苦笑しながら手を振る。


どうやら心配するような内容ではないみたいだ。

進化したばかりだから、何かあったのかと思ってしまった。


「紅蓮と紅麗の住居についてじゃ」


「住居?」


「二人は蒼真たちと同居することを希望しておる」


「……は?」


思わず間の抜けた声が漏れた。


「やったーー!」


対照的に、ましろは大喜びである。


いや、ちょっと待ってくれ。


「副隊長が面倒を見るんじゃないんですか?」


同じ竜だったわけだし、その方が自然だと思う。


「もちろん、我も見るぞ」


副隊長はあっさり答えた。


「じゃが、あやつらが蒼真たちと住みたいと言っておる」


「えーー! いいじゃん! ぜったい楽しいよ!」


「ましろ、少し黙っていてくれ」


即座に却下した。

しかし、ましろは納得していないらしく、頬を膨らませている。


「ですが、流石に俺には荷が重いですよ。竜の魔人なんて何も分かりませんし」


「大丈夫じゃ。芙蓉を付ける」


何が大丈夫なんだ。


「それに部屋が足りません」


俺たちの家は広い。

広いのだが、それでも限界はある。


「それも問題ない」


副隊長は当然のように言った。


……嫌な予感しかしない。


「隣は焔乃宮の部屋じゃろ。壁を抜いて一つにすれば良い。改装ぐらいすぐ終わる」


「え?」


焔乃宮が目を瞬かせた。

どうやら、焔乃宮も初耳らしい。


「それだと焔乃宮はどうするんですか?」


「別の部屋に移れば良いじゃろ」


副隊長は本当に何でもないことのように言う。


「えーー! エンノミヤもいっしょに住も!」


ましろが元気よく提案した。だけど、流石嫌だろうな……。


しかし、


「私は別に構いませんが」


焔乃宮が即答した。


「マジ!?」


思わず叫んでしまった。


なんで焔乃宮はこんなに乗り気なんだ。


「最近は自宅を寝るぐらいにしか使っていませんでしたので」


……確かに。言われてみればそうかもしれない。

毎日のようにゲームに誘ってたし。


これを聞いて、副隊長は満足そうに頷く。


「うむ。ではこれで解決じゃな」


ちょっと待ってくれ! 俺は全く納得してないからな!


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