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第二十九話 次の動画の話し合い

久遠副隊長に解放されて、やっと自室まで戻って来れた。


紅蓮に仕返しするつもりで向かったのに、さらに追い討ちを喰らうとは。


流石に今日は疲れた……。

カードキーを取り出し、ドアを開ける。


すると、


「むーー! もう一回!」


ましろの怒りのこもった声が聞こえた。


足元を見ると、焔乃宮の靴が綺麗に揃えられて置かれている。

今日もゲームをしに来ているらしい。あの日以降、たびたび部屋にやってくるようになった。


俺が叱られているのに、二人はゲームか。

焔乃宮が一言教えてくれていれば、あんな目には遭わなかったのに……!


沸々と怒りが湧き上がってくる。


「焔乃宮!」


「あ、ソーマ、おかえり!」

「湊原さん、今日もお邪魔しています」


「ただいま……ってそうじゃない!

 焔乃宮、副隊長の機嫌が悪いことを知っていたなら教えとけよな!」


「感謝を伝えに行くとお聞きしましたので。

 もしかしたら、それで久遠副隊長の機嫌も良くなるかもしれないと思いまして」


「思いましてって……」


「クオン、優しかったよ?」


「“ましろが帰るまでは“な」


はぁ……まあ俺が悪いか。納得はできないけど。


「そうだ、焔乃宮。明後日、副隊長とゲームすることに決まったから、お前もちゃんと時間空けとけよ」


「……出来れば遠慮したいのですが」


「ダメ! エンノミヤもいっしょに遊ぶの!」


「わかりました」


なんだかんだ、ましろに誘われたら嬉しそうなんだよな。

笑みも隠せていないし。


「よし、次から俺も入るぞ」


その後、三人でゲームを楽しんだ。


一区切りついたところで、ましろが大きく伸びをした。


「つかれたー!」


「だから言っただろ。少し休めって」


コントローラーを置いたましろの横で、焔乃宮が静かにスマホを取り出す。


画面を覗き込むその表情は、どこか真剣だった。


「何見てるんだ?」


「少し、私たちの動画のコメントを」


ああ、そういえば最近は全然見れてなかったな。

騎竜の方にかかりきりだったし――いや、言い訳だな。


あまり見たくなかっただけだ。

あいつら、俺への悪口ばかりだからな。


「次の動画早くしろとか、そんな感じだろ? 待たせて悪かったな」


なんとか紅蓮に乗れるようになったからな。

そろそろ動画も出せるはずだ。


「それもありますが、今は別のことを調べています」


「別?」


「ええ」


そう言ってましろの方をチラリと見た。


ああ、なるほど。

それで気づけないほど俺も馬鹿じゃない。


「また厄介な層でも増えているのか?」


竜を楽しんでいる人が多いと思っていたんだけどな。

少し甘く見すぎていたかもしれない。


「増えてはいません。しかし、依然として恐怖や警戒は根強いですね」


「まあ、そうだよな」


俺もスマホを取り出し、コメントを確認する。


:竜を使って俺たちに攻撃するつもりじゃないのか?

:本当に制御できてるのか?

:暴走とかしないよね?


確かに不安そうにしている意見も結構目に入る。


「……簡単には変わらないか」


「続けるしかありません。そんなことは湊原さんもわかっているでしょ?」


「むー?」


いつの間にか、ましろが俺たちの間からスマホを覗き込んでいた。


「なに見てるの?」


暗くなるのはダメだな。


「ましろ」


「なーに?」


「まだ怖いって思ってるやつもいるみたいだぞ」


「えーー!? りゅうさんに乗ってカッコよくなったのに!」


「……むしろ可愛く撮れているのですが」


ボソリと焔乃宮が突っ込んだ。


「え?」


ましろが俺の方を見てくる。


「カッコいいより、可愛いって言われてることの方が多いな」


「むーーーー」


頬を膨らませたまま、ましろが何かを思いついたように顔を上げた。


「そうだ!」


ましろは勢いよく焔乃宮の方を見る。


「次のドウガは、ましろをカッコよく見えるようにして!」


完全に焔乃宮へ丸投げである。


「え、えっと……」


助けを求めるようにこちらを見てくる。


「こっちを見るな。次の動画は俺がやっと紅蓮に乗れた映像だぞ」


「そうですよね……」


「だけど、それだけじゃ動画としては弱いよな」


俺が目立っても仕方ないしな。


「よし、何かカッコよく見える方法考えるか!」


その後、夜遅くまで動画の話し合いは続いた。

結局、ましろの思う「カッコいい」に決まったんだけどな。

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