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第三十話 かっこいい動画撮影

翌日、竜舎に三人が集まった。


今日も騎竜訓練という名目だが、撮影がメイン。

それもましろをカッコ良く映すという超難題。


昨日色々と話し合ったが、俺は気づいてしまった。どうせ無理だと。

正直、何やっても可愛く見えると思う。親バカ補正のせいかもしれないけどな。


とはいえ、あまり派手なこともできない。

不安勢からしたら竜に乗ること自体がもうダメっぽいし。


最終的には、ましろの好きなようにやらせることに決まった。


「ましろ、カッコいい?」


「……ええ」


少し間があったな。

ましろは笑顔で頷いて、全く気づいていないようだけど。


ということで、今日のましろだが、いつもの軍服じゃない。

ねだられて買ってしまった、魔法少女風のフリフリな衣装。

一応、その上に軍服は羽織っている。


正直なところ、いつもの軍服の方がカッコいいと思うんだけどな。

まあ、本人が納得しているならいいか。


「それで、これからどうするんだ?」


「これまで通りの訓練を予定しています」


「俺たちは普段通りでいいと?」


「ええ。常にカメラだけは回しておいて、良さそうなシーンを抜粋しようかと」


まあ、それでいいか。

俺も特に案があるわけじゃないしな。


「ましろ、やりたいことあります!」


しかし、ましろからの何か提案があるようだ。

ビシッと手を挙げて、自信満々の顔をしている。


「えっと、何でしょうか?」


「ましろ、ジコショウカイしたいです!」


「自己紹介ですか? いつもの配信用の“みゃみゃ“ですか?」


「ううん」


そう言うと、左手は腰に、右手は敬礼をするポーズをとりながら、


「今のましろはましろじゃない――ましろホワイト!」


「おお、ヒーローみたいじゃないか。名前はそのまんまだけど……」


「リュウさんと一緒にワルモノをたおします!」


ましろがビシッと決めてはいるが、多分それはダメだ。

コメント欄がまた荒れそうである。


焔乃宮も同じ判断だったのだろう。


「その発言は、少し誤解を招くかと」


「えー!? ましろ、ヒーローなのに!」


「“悪者を倒す”ではなく、“皆さんを守る”の方が格好良くありませんか?」


「ほんと? ソーマもそう思う?」


ましろがこちらを振り向く。


「焔乃宮の方がちょっと上かな。ヒーローってのは、市民を守るもんだろ」


まあ、ましろの案も悪くはない。

ただ、視聴者に余計な誤解を与えないに越したことはない。


「わかった! じゃあ、そっちにする!」


こうして、自己紹介の撮り直しが何度も続いた。


角度が悪いだの、表情が硬いだのと、ましろは妙なところにこだわる。

最終的に本人からようやくOKが出たので、ひとまず撮影は完了だ。


……俺的には、やっぱりどう見ても可愛いままだったけど。


その後は訓練風景を撮りながら、使えそうな場面を拾う方針に切り替えた。


「よし、ましろホワイト。昨日やった飛行訓練に移るぞ」


「はいっ!」


ましろは元気よく返事をし、紅麗の背に飛び乗る。


その瞬間だけは、少しだけ、ほんの少しだけ凛々しく見えた。


まあ、次の瞬間には満面の笑みだったけど。


紅麗が翼を広げ、大きく空へ舞い上がる。


それに続いて俺たちも飛び立った。


空は澄み渡り、風も穏やかだ。

訓練にはちょうどいい。


ましろは相変わらずノリノリで、紅麗の背の上から何度も決めポーズを披露している。

ただ、どう見てもカッコいいというよりは可愛い。


まあ、本人が満足そうだから、それでいいか。


今日の訓練は基本中の基本を繰り返す。ただそれだけ。


まっすぐ飛ぶ。

ゆっくり旋回する。

高度を少しずつ変える。


まだ二回目だ。

まずは、竜の動きにしっかり慣れないとな。


撮影としては悪くない出来だ。

このまま何事もなく終われそうだと思った、その時だった。


視界の端を、黒い何かが横切る。


「……っ!?」


あまりにも速い。


一瞬、影が走ったようにしか見えなかった。


紅蓮も紅麗も、驚いたように目を見開いている。


「今の、見えたか?」


「ええ……ですが、あれほど速い竜は見たことがありません」


黒い影は、そのまま一直線に基地の方角へ消えていった。


あの速度で帰投したとなると、何かあったのだろうか。


そう考えた、その時だった。


「グルルル……!」


紅蓮が唸り、そして全身から魔力が膨れ上がった。


おい、まさか――


「紅蓮、落ち着け。張り合う気じゃ――」


言い終わるより早く、紅蓮が翼を大きく打ち下ろした。


「うわああああっ!?」


凄まじい加速。


「ちょっ、おま――!」


「グルァァッ!」


こいつ、今日はおとなしいと思っていたのに!


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