第二十七話 飛行訓練
今日も竜舎へ向かう。
実はちょっとだけ気が重い。
昨日の焔乃宮はめちゃくちゃ怖かったからな。ちょっとだけ気まずい。
まあ、俺たちを本気で心配してくれていたのは伝わったんだけど。
竜舎に着くと、やはりいつものように焔乃宮は先にいた。
「昨日はすみませんでした」
いきなり頭を下げられた。
なんで焔乃宮が謝るんだ?
横を見ると、ましろも口をポカンと開けている。
「おいおい、急にどうした?」
「昨日のことを軍に報告したのですが……そこで私が悪かったことに気づきまして」
「悪いのはソーマとグレンだよね?」
「……ましろもな」
「ましろは二人を助けに言っただけだもん」
そんなこと言ってると、また叱られるぞ……。
ほら、焔乃宮の目が少しだけ鋭くなった。
しかし、焔乃宮は首を振ってから口を開いた。
「最悪の事態を想定できていなかった、私の落ち度です。
最初から安全具を持たせて臨むべきでした」
ヒヤリハットってやつか。
まあ、こういうのは問題が起こらないとわからないからな。
「今までは歩行訓練じゃ、安全具なんて使ってなかったんだろ?」
俺たちなら、あの程度の高さなら怪我なんてしない。
あくまで魔術が使えれば、の話だけどな。
「ええ。しかし、それは今までの竜が、比較的落ち着いていただけのことです」
紅蓮は、確かに落ち着きはないよな。
自分勝手というか、巫山戯るのが好きというか。
昨日のはちょっと洒落になっていなかったけど。
「まあ、次から気をつけようってことだろ?」
「はい。今後は歩行訓練であっても、安全具を携行するルールとします」
「そこまでするのか? 歩くだけだぞ?」
「命令を無視する個体がいる以上、やらねばなりません」
紅蓮のせいで面倒なルールが増えてしまったというわけか。
まあ、早めに気づけてよかったと思うべきか。
「話はわかった。ましろもそれでいいよな?」
「うん! 次からは気をつけてくださいね!」
ましろ、本当にわかっているか?
……いや、わかってないな。気をつけるのは俺たちだぞ?
焔乃宮も苦笑いしてくれているし、まあいいか。
「ところで、今日は何をするんだ?」
「そうですね……もう飛べるようですし、飛行訓練に移りましょうか」
「やったーー!」
「今日は安全具も用意しました。竜に乗る際は“必ず“着用してくださいね」
「はい!」
渡された安全具――ベルトを腰に巻く。
ましろにはちょっとゴツすぎるけど。まあ似合ってなくはない。
スイッチを押し、魔術を発動させる。
正直、魔術がかかった感覚はない。でも、これで落竜しても助かるらしい。
……かなり高価って話だけどな。
「ましろ、起動したか?」
「うん!」
ランプも緑色になっている。大丈夫のようだ。
それぞれが自分たちの竜に乗る。
乗る時はまだ緊張するけど、今日もすんなり乗せてくれた。
いつか緊張せずに乗れる日が来て欲しいものだ。
「それでは行きますね。私に付いてきてください」
焔乃宮が空に上がっていった。
「よし、俺たちもいくぞ!」
「うん!」
昨日は勝手に飛んでしまったからな。
今日はましろと一緒に。
「クワッ」
紅麗が紅蓮に向かって何か合図をすると、一緒に飛び上がった。
お姉ちゃんだけあって、紅蓮の扱いも完璧だな。
まあ、紅蓮も流石に昨日の今日だし、空気を読んでくれそうだけど。
「ソーマ! いっしょに飛べたね!」
「ああ、飛べたな!」
……昨日は、あんな形だったけど。
こうしてちゃんと飛べたのは、これが初めてだ。
でも、これで俺たちも竜騎士の仲間入りってか。
笑みが隠せないぜ。
おっと、ましろがこちらを怪訝そうに見ている。集中集中。
空に上がり、焔乃宮とも合流。
「二人とも二回目とは思えないほど、上手く乗れていますね」
嬉しいことを言ってくれる。
「それでは、私に続いて飛びましょうか」
もう飛ぶらしい。
「ちょっと待ってくれ。準備するから」
魔力を高めて……。
「……えっと、何の準備ですか?」
「魔力で保護しないと飛ばされるだろ?」
焔乃宮が頭を抱えているんだけど。
俺、別に変なこと言ってないよな?
ましろの方も見てみたけど、ましろも首を傾げている。
どういうことだ?
「ましろ、特に何もしてないよ?」
……。
もしかして……?
「その……普通は竜が……私たちも一緒に保護してくれるんですけど……」
「おい、紅蓮! やりすぎだぞ! まじで昨日は死ぬと思ったんだからな!」
こいつ、目を合わせようとしやがらない。
ふー、落ち着け。
そうだ。俺は乗せて“もらって“いるんだ。
冷静になれ、冷静に。
そう、反撃は後でいい。
後で――絶対久遠副隊長にチクってやるからな! 覚えてろよ!
「今日は本当に頼む。俺も一緒に保護してくれ」
「グワッ」
結局、その後は特に問題もなく、無事に飛行訓練は終わった。
撮影も軽く済ませて、今日はこれで終了らしい。
……昨日とは大違いだな。
「ねえソーマ、楽しかったね!」
「ああ、最高だったな」
だけど、
チラリと紅蓮の方を見る。
大欠伸をしてやがる。
余裕こいているのも今のうちだぞ。
さてと、久遠副隊長に報告しに行かなきゃな。
あー、楽しみだぜ。




