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第二十六話 初飛行

あの表情はやばい。


「紅蓮、飛んでくれてありがとな。

 でも……そろそろ降りてくれないか?」


飛ぶための装備なんて、今日は何も持ってきてないんだからな。


冷静に……声が上擦らないことを意識しながら言った。

もし俺がビビっていると気付かれたら、こいつは絶対に調子に乗る。


「フンッ」


だけど、ダメだった。

鼻で笑われました。


グッと体が後ろに引っ張られる。


体が持っていかれる!


持ち手を力一杯握り、なんとか耐える。


は、速い。


息が詰まる。目も開けられない。


身体が押し潰されそうになる。


こんなの――無理だろ!


まずい。このままじゃ本当に落ちる!


うっすら目を開ける。

紅蓮を見ると、いつもと何か違う。


魔力を纏っている?


こ、こいつ、魔力で保護してやがる!


「お前!」


急いで自分の魔力を纏う。……が、状態は変わらない。


まずい、このままだとまじで落ちる!


よく考えろ。


空気抵抗を減らせ。


高速魔道列車みたいに――滑らかに!


魔力を全開に。


風の逃げ道を作れ!



……いけたか?


さっきまでの息苦しさはだいぶマシになった。


助かった……。


こんなに死を近くに感じたのは初めてかもしれない。


安堵のせいか、急に冷静になってきた。


いや、そもそもなんでこんな死にそうになってたんだ?

これはやりすぎだろ!


「紅蓮! お前、ふざけやがって! マジで落ちるかと思ったぞ!」


紅蓮は俺をチラッと見て、すぐに目を逸らしやがった。

マジで後で覚えてろよ……。

これは絶対、久遠副隊長にチクってやるからな!


しばらくして、紅蓮がようやく速度を落とした。


正直、助かった。

魔力が枯渇するところだった。


「はぁ……はぁ……」


息も上がっている。

深呼吸し、息を整えにいく。


すると、後方から声が聞こえてきた。


「ソーマー!」


え?


振り向くと、紅麗がましろを乗せて近づいて来ていた。

その声には何故か怒気が含まれていたけど。


しかし、凄いな。ましろは余裕そうだ。

俺はこんなにヘロヘロだってのに。


そのまま俺たちの直ぐ側までやって来た。


「先に飛ぶなんて、ずーるーいー!

 ……いっしょに飛ぼうって約束してたのに!」


そうだ。

ましろはずっと俺を待ってくれてたのに。


でも、これは紅蓮が悪いと思うけど……。


いや、違うか。紅蓮だけのせいじゃないな。


「ごめんな……。俺も一人で飛ぶつもりなんてなかったんだけどな」


「楽しみにしてたのに……」


ましろが落ち込んでいる。


どうする……って、紅蓮もさっきから目がキョロキョロ泳いでいる。

こいつ、ましろには弱いんだな……。


「本当にごめん!」


もう一度、しっかり謝る。


「今度はちゃんと一緒に飛ぼう!」

「グワッ!」


紅蓮が、いつになく力強く鳴いた。


ましろは目をぱっちりと開き、そして、こくんと頷いた。


よかった。

ましろの機嫌も直った。


しかし、そう思ったのも束の間、急に寒気が。


「私は、今日は飛ぶなと言いましたよね?」


焔乃宮が自身の竜――銀華に乗ってやって来た。


この後、しこたま叱られました。

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