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第二十五話 初めての騎竜

翌日。


今日ももちろん竜舎に向かう。

だけど竜舎へ向かう足取りは軽い。

なんならスキップして行ってもいいぐらい。


おっと、こんな気持ちじゃダメだな。

顔を叩き、気合を入れる。でも、勝手にニヤけちゃうんだよなー。


……昨日、触れたんだもんな。


ふと横を見ると、ましろと目が合った。

うんうんと頷いている。


は、恥ずかしい。


めちゃくちゃ浮かれているのがバレたかもしれない。


顔が火照る。


「きょ、今日の撮影は楽しみだな」


「うん! やっと飛べるね!」


澄ました感じで言ってみたけど、誤魔化せたかな?


************


竜舎に着くと、いつも通り焔乃宮は先に待っていた。


「昨日、触れたらしいですね」


「まあな」


さっきのましろのことを思い出し、そっけなく返す。


「思ったよりも冷静で安心しました。

昨日の電話のテンションだったら、どうしようかと思っていましたので」


……何も言い返せない。

でも、仕方ないよな?


「それでは、本当に触れるか確認させてください」


「任せろ!」


油断はするな。紅蓮にはバレるからな。


ちゃんと集中しろ。


紅蓮を見上げ、目を合わす。


「触るぞ」


やけに心臓の音が聞こえる。

もし触らせてくれなかったら……そんな今までとは違う緊張感がある。


しかし、要らぬ不安だった。

普通に触らせてくれた。


大きく息を吐く。

良かった。ちゃんと今日も触らせてくれた。


ありがとな。紅蓮。


「問題ありませんね。良く諦めずに頑張りました」


焔乃宮の優しい言葉にグッとくる。


彼には何度も相談に乗ってもらったし、何度も愚痴を聞いてもらった。


あー、色々思い出してきた。

やばい、泣きそう。


咄嗟に上を見る。


……危なかった。


「それでは次の訓練に移りましょうか」


焔乃宮が俺の方を見ながら苦笑している。

これは待ってくれてたな。ちょっと恥ずかしいな。


「次は、いよいよ騎竜となります。

 ――ですが、まずは鞍の装着と竜に乗るところまで行ってみましょう。

 紅蓮と紅麗も今日はまだ飛ばないようにお願いします」


「はーい!」「了解!」

「クワッ!」「……」


おい、紅蓮よ、返事をしてくれ……。

ちょっと不安になるじゃないか。


ひとまず、自分の鞍を取りに行く。


紅蓮に付けたことはない……けど、模型で何度も練習はしている。

装着方法も簡単だし、大丈夫のはず。


そもそも、一番の問題は紅蓮が俺を乗せてくれるかどうかだよな。

昨日まで触ることすらできていなかったのに。


ましろの方は、


あ、はい。わかってました。

もう乗ってます。


これはやるしかない。


「紅蓮、背中に――」


ギロリと睨まれた。


「乗せて下さい」


しまった。つい、敬語が出てしまった。

これでは完全に主導権が……って、そもそも俺が握れるわけないよな。


紅蓮は鼻息を吐いて勝ち誇った顔をしているし。

まあ、紅蓮が気持ちいいようにさせた方がいいか。


紅蓮は体を屈め、俺が背中に乗りやすいようにしてくれた。


「……ありがとな」


まあ、背中には乗せてくれそうだ。

一応、感謝はしておく。一応だけどな。


思った以上に簡単に背中には乗れた。

っと、まずは鞍を付けないとな。


持ち手のある方を前にして――紅蓮の背に当てる。


まあ、それでも緊張はする。

紅蓮に装着するのは初めてだからな。

気持ち悪がって暴れたりするなよ。


震えそうになる指で、ボタンを押す。


……カチッ。


手応えと同時に、鞍がぴたりと固定された。


紅蓮の様子は……よし、大丈夫そうだ。

特に気にしている様子はない。


鞍に座り、鎧に足を通す。

この辺は馬とほとんど同じだ。


違いがあるとすれば、手綱がないことぐらいか。

竜には言葉が通じるんだからな。


「うおっ!」


紅蓮が急に立ち上がり出した。


身体が後ろに持っていかれる。

慌てて持ち手を掴む。


心臓が、バクバクとうるさい。


こいつ、いきなり立つなよな。


――って、怖っ!


高い。

それに、不安定すぎる。

足場もぐらつく。


でも、乗れたんだな。竜に!

怖いのに――口元が緩む。


「ソーマー!」


ましろが手を振りながら、俺たちの方に近寄ってきた。


もう、紅麗を歩かせているのか。

それなら、俺もやってみよう。


「紅蓮、俺たちも行こう」


紅蓮の背を軽く叩いてお願いしてみる。


「……グワッ」


よし、返事してくれた。


……あれ?


どういうことだ?

歩くだけなのに、体勢が低すぎじゃないか?


「紅蓮、待って下さい! まだ飛ばないでください!」


焔乃宮が大声で叫ぶ。


飛ぶ?


紅蓮が羽を広げる。


「ちょ、ちょっと待て! 紅蓮!?」


紅蓮が飛び上がった。


一瞬、身体が浮く。


気づけば、地面が遠ざかっていた。


ましろたちの姿が、みるみる小さくなっていく。


だけど、なんだこの感じは?

本当に飛んでいるのか?


体勢も安定してて、全然揺れない。

なんと言えばいいのだろう。エレベータに乗っている、あの感じが近い。


もっと重力を感じて、怖いと思っていたのに。


「……凄い」


ポロッと声が漏れた。


だけど、その余裕も一瞬だけだった。


ニヤリ。その表現が正しいと確信できるぐらい、紅蓮が嫌らしい表情をした。


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