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第二十二話 紅蓮との日々1

更新ペースについてのお知らせです。


クオリティ維持のため、次回より毎週金曜日更新に変更します。

これからも楽しんでいただけたら嬉しいです!

あれから数日……。

相変わらず紅蓮と睨み合いが続いている。


早く乗れるようにならなければ……。


それほどまでに騎竜に挑戦した動画は大盛況だった。


視聴回数は途轍もないし、コメントも確認しきれない量だ。


紅麗と紅蓮のドアップは特に再生数が跳ねた。

竜騎士が人気の我が国だ。改めて竜の人気具合を思い知らされた。


……あとは俺が尻尾で吹き飛ばされるシーンも。

切り抜きでも何度も目に入る。


あれの何が面白いんだ?

こっちは真剣にやってるってのに、人の努力を笑いやがって。


――ドゴッ。


視界がひっくり返る。またいつもの天井。


そりゃ考え事しながらじゃ、こうなるのも仕方ないか。


視界の端で紅蓮の尻尾がゆらゆら揺れている。


……なかなか上手くいかないもんだ。


少し自惚れていたかもしれない。

自分が特別な何かになれたと……。

竜に乗れるほど特別な人間なんだと……。


特別なのはましろ。

俺は普通のおっさん。


それなら――頑張るしかない。


よし、とりあえずヒントになりそうなことを探ろう。


ましろたちはどうしてるかなっと。


……寝てるし。


しかも紅麗に囲まれながら。まるで紅麗がましろを護っているかのような仲良し具合。

これがゲームなら好感度MAX間違いなし。


ましろが言ってたもんな。


「お友達になりたいって思ったら乗れた」


って。


もうお友達どころか大親友じゃないか。


くっそー! 違いがわかんねーー!


俺も仲良くなりたいと思っているんだけどな。

だけど、どう見ても紅蓮が嫌がってるんだよ。近づいただけで尻尾で殴ってくるのに、どうしろって言うんだ。


ダメだ。

また考えがマイナスの方に行ってる。


こうなったら焔乃宮にも聞いてみるか。


「焔乃宮、お前はどうやって竜から信頼されたんだ?」


「……最初に説明した通りです。竜を信じる。それだけです」


それだけって言われてもな……。


「もっと具体的にない?」


「あまり無責任なことは言えません」


「無責任?」


「ええ。竜は人と同じように各々で違います。

 だから……私の成功体験をそのまま説明しても逆効果になるかもしれません」


「そんなに違うのか?」


「はい。全然違います。

 私の竜――銀華と言うんですが、彼女は私に全く興味を持ってくれませんでした。

 だから、根気よく話しかけました。彼女の興味を惹くために。本当に多くのことを彼女と話しました」


「そうなのか……。

 じゃあ、あんなに攻撃してくるやつも珍しいのか?」


「そうですね。私は見たことがありません。

 もしかしたら、紅蓮は理想が高いのかもしれませんね」


理想、ね。

……俺じゃ足りないってことか。


まあ、当然だな。

俺は竜騎士になれるほどの器じゃない。


だけど――


それでも乗る。


ましろの隣に立つと決めたのは――俺だ。


「よし! もう一回行ってくる」


「ええ。湊原さんならできます」


それは、迷いのない声だった。


しかし、上手くいかないのが現実。


――ドゴッ。


距離が一歩も縮まらない。


もう一度だ。


……行ける。さっきも避けられたんだ。


自分に言い聞かせて、もう一歩踏み出す。


今度は焔乃宮のアドバイスも試してみよう。


「紅蓮、俺たちも仲良くしようぜ」


――シュッ。


危なっ!


風圧で前髪が揺れる。

あと一秒でも避けるのが遅かったら……。


大丈夫。

手加減してくれている……はずだ。


それに“仲良くしよう“と言って、触らせてくれるほど簡単なわけないよな。


困った。


「……何を話せばいいんだ?」


紅蓮の尻尾がゆらりと揺れる。


「そうだな……好きなものの話でもしようか」


とりあえず、俺のことを知ってもらうか。


「俺は米が好きかな」


まずは簡単なことから。いきなり身の上話は重いしな。


それにしても、さっきから自分の息がずっと聞こえる。


「それに……唐揚げとかハンバーグも好きだな。

 まあ、あれだ。米に合うってのが重要だ」


ましろは魚系だな。焼きも煮たのも刺身もペロリと食べる。まあ当たり前か。

だけど一緒なものを食べられるようになったのは嬉しい。ちょっと前までキャットフードだったからな。


……っと、尻尾からは目は離すな。


一歩。


来る!


――シュッ。


尻尾が空を切る。


ギリギリ避ける。


「まあ、一番好きなのは“ましろ“だけどな」


転がりながら続ける。


「……ちなみに、お前のことも別に嫌いじゃないぞ」


砂を払って立ち上がる。


「紅蓮は何が好きなんだ?」


重心を下げて、一歩、また一歩と近づく。


あれをまともに受けたら――死ぬ。


紅蓮は俺を試しているだけ。本気で殺すつもりじゃない……はずだ。


少しずつ、少しずつ。踏み出す。


だけど、足が重い。前に進まない。


声かけも忘れない。


それでも、


――シュッ。


また尻尾を振られる。


どうすればいい?


尻尾を受け止めればいいのか?


……でも、あんなの無理だよな?


唾を飲む。


これは訓練。紅蓮もあれで手加減しているらしい。

試すしかないか。


行くぞ……。

歯を食いしばる。


衝撃。


空が回る。


あ……これ無理だ。


そこで意識が途切れた。


************


……熱い。


目を開けると、見慣れない天井だった。


思い出した。

紅蓮にぶっ飛ばされたんだったな。


それにしても腕が重い。

それに熱い……。


これは不味ったかな。折れたのかもしれない。


腕の方に視線を向けると、そこには可愛い寝顔が。


……って、ましろか!


焦った。

骨折だったらマジでやばかった。

俺のせいで待ってもらっているのに、さらに待たせるところだったぜ。


眠くなって、入ってきたんだな。


「ましろ、そろそろ起きてくれ」


「……んみゅ」


目をゴシゴシと擦る。可愛いな。


「……ソーマー!ケガしてない? 大丈夫?」


すごい剣幕で顔を近づけてくる。

心配してくれるのは普通に嬉しいな。


腕や足は……よし、普通に動く。

めちゃくちゃ痛いとこはない。腕がちょっと痛いだけ。


「ああ。大丈夫だ。まだまだいけるぞ」


ましろの頭を撫でる。だけど、顔は曇ったまま。


「……ソーマ、グレンと遊ぶの楽しくない?」


どういう意味だ?

いつもボコボコにされているから楽しくはない。けれど、別に嫌なわけでもない。


だけど、


「楽しくなりたい。今はまだ楽しめてないけどな。

 ――なんでそんなこと聞くんだ?」


「えっとね……。ソーマ、いっつもこわい顔してる。だから、楽しくないのかなって……」


「そんなに怖い顔してる?」


「……うん。マモノタイジしてる時の顔してる」


一瞬、言葉に詰まった。


「ちょっと真剣になりすぎてたかな――」


軽く頭をぽんと叩く。


「でも、真剣にしないと紅蓮にも悪いだろ? あいつに認められないと駄目だからな」


ましろは納得していない顔のまま、じっと見上げてくる。


「……でも、あそぶのに、そんな顔しないもん」


その言葉が頭から離れなかった。


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