第二十一話 騎竜訓練開始!
前の動画を投稿してから三日。
視聴者の反応は、まあまあと言ったところ。
俺には辛辣なコメントが多いけどな。
:蒼真もっと前出ろよ
:ましろに戦わせるの可哀想じゃない?
:槍も見かけ倒しだよな。見た目特化の威力0じゃん
:槍投げ選手w
何が“もっと前出ろよ“だよ。
俺は後衛だっつーの。
素人が戦術語るなよ……と言いたいところだが、
視聴者から見たらそう見えるのかもしれない。
……でも、槍投げ選手はひどいよね?
はぁ、俺のことはいいか。
あくまで目的は“ましろの強さを知ってもらうこと“だったからな。
ましろの評価は悪くない。
:強いけど、普通じゃね?
:子供にしては強いけど……
動画の編集で魔力量とかも表示してたし、強さは理解してもらえたと思いたい。
それにコメントも好印象なものが多かった。
:ましろちゃん可愛すぎ
:雷凄かった!
俺とは全然違うよな……。
まあ、中には、
:どうせ手加減してるんだろ
:情報操作乙
みたいに酷いコメントもあった。けど、それも極一部って感じだな。
まあ、ここまでは想定通り。
だけど、これは許せん。
:冬夜様、かっこいい!!!
:流石竜騎士!
褒め言葉の嵐。なんだこの差は!
もうちょっと俺のことも褒めてくれて良くない?
俺もそこまで顔は悪くないと思うぞ?
はぁ……まあいいか。
なんにせよ、今回は炎上していない。
そういう意味では、成功なんだろう。俺は認めたくないけど。
駄目だ。さっきからため息ばかり出る。
別に動画のコメントのせいじゃない。
次の撮影が憂鬱だからだ。
……こんなことじゃ駄目だな。
とりあえず、竜舎に向かわないと。
今日こそ、紅蓮に触る。
「ましろ、そろそろ行くぞ」
「はーーい!」
タタタタ、と走ってきて、俺の手をぎゅっと握る。
そのまま、ぴょんぴょん跳ねながら竜舎へと引っ張られる。
「クレイ! グレン! クレイ! グレン!」
あいつらの名前をリズムよく口ずさむほど、超ノリノリ。
……羨ましいぜ。
************
竜舎に着くと、すでに焔乃宮の姿があった。
そして、もちろん俺たちの竜も。
今回の動画は“騎竜への挑戦“に決まってしまった。
そう……竜との撮影だ。
あれから数日しか経っていないのに、軍は許可を出した。
本当に大丈夫なのかと聞きたい。
いや、無理か……。軍は久遠副隊長に弱すぎる。
まあ、それでも色々と条件は出された。
落下防止とか、風圧制御とか、主に国防に関係する魔道具を映すなみたいな感じで。
まあ、その辺りは編集でどうにかするらしい。
ちなみに久遠副隊長だけど、今回の撮影には不参加だ。
副隊長が近くにいると、竜たちがソワソワして普通に危ない。
まあ、気持ちはわかる。
近くに王様がいると思ったら、俺もそうなる。
そして凪隊長も不参加。
副隊長に付き合って別件の任務らしい。
……あの二人、なんだかんだ仲が良い。
「そろそろ始めましょうか」
おっと、撮影が始まる。
「「「「んーーみゃみゃ! 」」」
三人で猫のポーズ。
「みなとはら、ましろチャンネル、はっじまーるよー!」
……やっぱり恥ずかしい。
おっさんが猫ポーズだぜ?
だけど、焔乃宮は涼しげな表情。
イケメンはどんなポーズでも絵になるんだよな。
「今回から騎竜訓練の様子を動画にしていきます」
しかも、こうやって司会進行までこなしてくれる。
天は二物を与えないとか言うけど、あれは嘘だな。
まあ、それだけあいつが努力した証拠でもあるんだろうけど。
「では、まずは竜の紹介から入りましょう」
焔乃宮の合図で、ましろが一歩前に出た。
「えっとね! こっちが、ましろの竜さんの“クレイ(紅麗)”!
それで、こっちがソーマの“グレン(紅蓮)”です」
この二体は天竜山でましろと一緒に選んだ竜。
あれから毎日世話をしている。
まあそれは別に苦ではない。
飲み水の交換なんかは、俺の能力的だと楽だし。
だけど、
「グルルッ!」
紅蓮は俺が近づいた瞬間、体をひねり、バシンと尻尾アタックしてくる。
「うおっ!? 危ないからやめてくれ!」
そう……こいつは会うたびにこれをしてくる。
今日もどうにか受け止めることはできたけど、魔力で強化していなければ腕が折れてる。
でも、これでも手加減してくれているらしい。本気なら俺死んでるってさ。
普通に怖いよな?
まじでシャレにならない。
「見ての通り“グレン”はソーマとなかよしです!」
「どこをどう見たらそうなる!?」
「グワッ!」
俺と紅蓮が、同時に否定した。
「やっぱり、なかよしだよね?」
仲良しというのは、ましろたちの方だ。
今も紅麗はましろに顔を擦り寄せているし。
「……それでは、そろそろ騎竜訓練に移りましょうか。
ましろさん、騎竜する上で一番大切なことってなんだと思いますか?」
焔乃宮がましろに問いかける。
これは視聴者向けの質問。
「はい! 竜さんとなかよくなることです!」
「素晴らしい。正解です」
パチパチと手を叩き、褒める焔乃宮。
そして、胸を張りドヤ顔のましろ。
まあ、もう何日も訓練してるから、正解して当然なんだよな。
「騎竜で重要なことは仲良くなること。
つまり、竜から信頼を得ることです。これが出来なければ、竜は背に乗せてくれません。
そして、ここが最難関のポイントです」
竜は賢く、俺たちよりも強い。
そんな俺たちを乗せるんだから、信頼関係が必要なのは当たり前。
「参考までにですが、背に乗せてもらうのにかかる日数は約一ヶ月です。
これは今年の新人竜騎士たちの平均です」
これは俺へのフォローと言った感じかな。
「まずは、竜に触ることが課題となります。
……ましろさんはすでに終わらせていますが」
「うん! おねがいしたら、乗せてもらえたの!」
そう。ましろはもう乗れている。
まだ飛行まではいっていないが。
でも、これは俺を待ってくれているからだ。
紅麗のことだ。お願いしたら簡単に飛んでくれそうだ……。
だけど、この待ってもらっているっては、結構プレッシャーになる。
一ヶ月かかるとはいえ、近づけば殴られる関係だし。
正直、信頼ってなんだよ。
これが本当にわけがわからない。
とりあえず、やってみるしかないよな……。
俺は紅蓮と睨み合う。
いつ尻尾攻撃が来ても良いように……。
ジリジリと間合いを詰めていく。
しかし、シュッと言う風切り音がきて、尻尾が振られる。
咄嗟に腕でガードをするが、めっちゃ痛い。
やっぱり信頼ってなんだ?
殴り合うことじゃないよな……たぶん。




