表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/24

第十六話 謝罪動画の結果やいかに

更新は毎週火・金予定です。

数日後、俺たちは再び会議室に集められた。


テーブルの上には、前回よりも明らかに分厚い資料が置かれていた。


「謝罪動画について、一定期間のデータが揃いましたので、報告します」


焔乃宮はそう言いながら、俺たちに資料を配り始めた。


その資料は視覚的にも分かりやすい。

たぶん、ましろのことを考慮してくれたのだろう。

流石、焔乃宮。


「まず、再生数について。

 現在、およそ千五百万回再生されています」


単純計算で、国民の十分の一は見てくれていることになる。

まあ、そんなに単純なものではないが、それでも改めて考えるとすごい再生数だよな……。


「そのうち、高評価は約二十万。低評価は約一万。

 こちらの想定よりは好意的に受け取ってくれていると思われます」


確かに低評価が想像以上に少ない。

俺の予想では圧倒的に低評価が多いと思っていたからな。


「少なくとも、炎上の兆候はありません。

 トレンドには今も浮上したりしていますが、ネガティブな内容はありません」


これも不思議なんだよな……。

普通は炎上しそうなのに、”久遠副隊長が出した光線がどれだけ凄かった“やら“ましろが可愛い”みたいに、あの動画をエンタメとして楽しんでいる節がある。


まあ、この流れは俺的には有難いんだけどな。

ましろを危険と思われるよりはよっぽどマシだし。


だけど、軍人としてこれでいいのかと聞かれたら、複雑な気持ちにはなる。

危機感が無いというか、なんというか……。


普通は、戦略級魔術がいつ飛んできてもおかしくないと思ったら、恐怖で夜も眠れないはずだ。

まあ、そんなことをしない人たちだと、俺は知っているけど。


「人間は、僕たちに寛容ということかい?」


「いいえ。恐怖や拒絶の声も、確実に存在します」


資料の一部に、赤いマーカーが引かれている。


「“危険すぎる”や“規制すべきだ”と言った意見も一定数あります。それこそ“魔人を排除しろ”みたいな過激な意見も。ただし、主流にはなってはいません」


「あまり楽観はできないってことか……」


「はい。油断はできません。何か一つでも“事故”が起きてしまえば、一気に炎上する恐れがあります。

 例えば――市街地に被害が及んだり、民間人を巻き込むようなことがあれば……」


会議室の空気が、わずかに重くなった。


凪隊長が小さく頷いた。


「わかった。要するに“力は見せても良いけど、脅威に見せるな”ってことだね。

 ――久遠、気をつけてくれよ」


凪隊長がそう言いながら、久遠副隊長の方に視線を向ける。


「むっ。あれは考えた上でやったことじゃぞ。もう、あんなことはせん」


本当だろうか。

ましろのためなら、何かしでかしそうな気がして仕方ないんだけど。


そんなことを考えていると、ましろに腕を引かれた。


「ねーねー、ソーマ。ましろたちのごめんなさいはダメだったの?」


難しい質問がきた。


「んー、ギリギリ許してもらえたってところかな」


「ギリギリ?」


「ああ。まだましろや魔人たちのことを、ちゃんと知らない人が多いからな。今回はギリギリ許してくれたけど、これから次第ではどうなるか分からないって感じかな」


「んみゃー! どういうこと??」


まだ、ちょっと難しかったか。


「まあ、ましろはいつも通りにやれば大丈夫!

 気をつけるのは、俺たち大人の仕事だからな」


「わかった!」


ありのままの姿を見せた方が、視聴者にも届くだろう。

ましろが怖い魔人じゃないってことがさ。


このやりとりのせいなのか、会議室の空気は少しだけ柔らいだ気がする。

まだ、会議は終わっていないけど。


すると、凪隊長がテーブル上の資料を指先で軽く叩いた。


「さて……問題は次の動画だね」


問題と言っても、副隊長たちさえ出さなければ大丈夫だと思うんだけどな。

俺やましろの力じゃ、規格外なことなんて出来ないんだし。


「はいっ! はいっ!」


「ましろちゃん、何か案があるのかい?」


「うん! みんなにりゅうさんを見せたいです!」


竜か。ここ数日、訓練中はずっと世話をしてたが、正直やりたくない。

あいつ、俺の言うこと全然聞かないんだよな……。


「焔乃宮君、竜を見せるのは大丈夫なのかい?」


「見せること自体は問題ありませんが……国防にも大きく関わりますので、申請に時間はかかると思われます」


よしよし。

とりあえずは回避できそうか?

なんとかして、あいつと仲良くならないとな……。


「我が願えば良いのか?」


や、やめてくれー。

横から副隊長がしゃしゃり出ていた。


「……感謝致します。ただし補足を。申請の手続き上、次回には間に合いません。別案で進行するのが現実的かと」


この様子だと、本当にすぐ許可が通ってしまいそうだ。

頑張るしかないな……。


「代わりと言ってはなんですが、資料の九枚目を見て頂けませんでしょうか?

 視聴者からの要望をまとめていますので、そこから次の動画の参考にしてみては如何でしょうか?」


「わかった!」


そう言い、ましろは資料を確認し始めた。


俺も確認する。

そこには、


・ましろちゃんの強さが知りたい

・特務隊って普段どんな訓練してるんですか?

・おじさんの若い頃の話聞きたい

・装備の紹介してほしい


などなど、多くの要望が書かれていた。


「じゃあ、これがいい!」


ましろが指差したのは、“ましろちゃんの強さが知りたい“。


これは良いのを選んでくれた。

ましろが弱いことを世間は知らないし、知ってもらえれば親近感を抱いてくれるかもしれない。


「どうやって強さを見せるんじゃ?」


まあ、そこが問題なんだよな。


そうだ!


「強さの比較が出来れば良いんじゃないですか?

 “竜騎士“の焔乃宮とましろで戦闘訓練ってのはどうです?」


ふふふ。これなら俺は参加しなくて済む。


その……親が子供に負けるのを動画に残すのは、ちょっと嫌じゃないか?

悲しいことに俺はましろより弱いからな……。


「えー、ソーマも一緒がいい!」


そう言ってくれるのは嬉しいけどな。


「焔乃宮君なら、ましろちゃんと湊原君の二人がかりでもいけそうじゃないか?」


「……いえ、私は別に強くありませんので」


むむ。これは俺たちに対する嫌味か?

いや、この表情を見るに、本気でそう思っているらしいな。


それならば、


「よし、俺とましろで焔乃宮を倒そうか!」


「うん!」


視線の端で隊長がニヤッと笑ったのに気づいてしまった。

しまった。乗せられてしまったか?


まあ、ましろと戦わないなら、別にいいか。

それに、二人がかりなら竜騎士相手でも、いい勝負ができるかもしれないしな!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

面白いと思っていただけたら、ブックマークで応援してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ