第十五話 謝罪動画
更新は毎週火・金予定です。
翌朝、会議室には凪隊長、久遠副隊長、焔乃宮、そして俺たちの五名が揃っていた。
今から、昨日の謝罪動画の最終チェックを皆で行うことになった。
「それでは、再生します」
スクリーンに映像が映し出された。
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『皆様、ましろチャンネルをご視聴いただき、誠にありがとうございます。
僕は、このましろチャンネルの責任者、凪。そして、この部隊の隊長です』
凪隊長が矢面に立つ。
『まず始めに、天竜山で起きた光の柱の件について、謝罪と説明をさせて頂きます』
『この度は皆様にご迷惑をおかけし――』
『誠に申し訳ございませんでした』『ごめんなさいでした!』
隊長だけでなく、全員が同時に頭を下げる。タイミングはバッチリ。
――ましろだけはセリフが間違っているけど。
しかし、焔乃宮も面白いことをする。
実際、ここはましろがちゃんと言えるまで何度も撮り直した。
それなのに、敢えてこっちを使うあたり……わかっている!
チラッと焔乃宮の方を見ると、なぜか言い訳をしてくる。
「こちらの方が、謝るタイミングが綺麗に揃っていましたので……」
隊長や副隊長もニヤけながらその言い訳を聞いている。
「――コホン、次にいきましょう」
『光の柱は、久遠の純粋な魔力によるものです。
そのため、天竜山周辺の魔素濃度が、少しの間、高くなります』
この辺りの情報は、軍から情報を得たと焔乃宮が言っていた。
というより、彼は俺たちが謝罪すると予想していて、資料も台本も用意してくれていた。
『これにより、魔物の発生が従来より多くなると想定されます……が、対応はこちらで全て行います』
魔素濃度が高くなると魔物が発生してしまう。
本来ならば一個人が放出した魔力程度では、影響は起こらない。
裏を返せば、それだけの魔力を副隊長は放出できてしまうということ……。
『この山の竜たちに魔物を間引いてもらいます』
副隊長曰く、竜たちが勝手に間引くとのこと。
自分たちの縄張りを荒らされるのは嫌なのだろう。
『じゃあ。ましろたちは、何もわるいことしてないってこと?』
ここで、ましろが首をこてんと傾げ、質問を投げかける。
完全なるアドリブ。
もしこれが演技だとしたら、大女優待ったなしだろう。
だけど、この純粋な質問は、隊長や副隊長――魔人たちの本心を教えてくれることになる。
『いや、それは違う。
僕たちは怖がらせてしまった。
……僕たちの目的は覚えているかい?』
『……あっ! ましろたちのことを、みんなにもっと知ってもらいたい!』
『そうだ。
僕たちは、皆に怖いだけの魔人だと思われたいわけじゃない。
湊原君。君は最初の動画でなんと言った?』
『魔人が“危険”や“怖い”だけの存在ではないと証明していきたいと……』
『そうだ。ここで謝らないと、ただの危険な魔人と思われてしまう。僕たちは、ちゃんと話の通じる魔人だ。
――そうだろ? 久遠』
『うむ。そうじゃ。ましろを思ってのこととはいえ、少し張り切り過ぎじゃったな。我も、反省はしておる』
副隊長が焔乃宮の方を睨む。
焔乃宮は気づかないふりをしているけど……。
だけど、ここはこれで正解だ。
この後、『我が謝るなんて滅多にない。誇るが良い、人間共』って言ってたからな……。
見る人によっては反省していないように見られてしまう。
そして、繋ぎも完璧だ。
『ましろもソーマに怒られたら、いつもごめんなさいしてる!』
ここで子供ながらも魔人の視点がちゃんと入っている。
まあ、言いたいことがあるとすれば、俺は別に怒っているわけではない。注意しているだけ。
だけど、こればっかりは仕方ない。人になったばかりだからな。
ただ、ゲームのやり過ぎだけは何回注意してもダメだけど……。
そして、動画は終盤へ。
『最後に、今回の件を受けて、僕たちは考えました。
同じことを二度と起こさないために、どうすればいいのかを』
どうせ、また問題を起こすと思っている人もいるだろう。
俺もその一人だ。
……でも、その時に笑って許してくれるような、そんな関係にはしていきたい。
『その結論の一つとして、ましろチャンネルに、
一人、力を貸してくれる仲間を迎えることにしました。
軍との調整や確認を、僕たちだけの判断で行わないためです』
『第一航空戦術部隊・竜騎戦術課所属の焔乃宮冬夜です。
今回の件を受け、ましろチャンネルの運営を補佐するよう命じられました。
至らぬ点も多いかと思いますが、皆様に安心して見ていただけるよう、努めます』
新しい仲間も得た。
ましろを怖がらず、可愛いと思えるそんな人物だ。
『エンノミヤ、よろしくね!』
『……よろしくお願いします』
その後、締めの挨拶やらをして、動画が終了した。
「……どうでしょうか?」
焔乃宮が自信なさげに問いかけてくる。
結果はもちろん――
「いやー、良い出来だったよ! これで、行こうじゃないか!」
「うん! ましろも良いと思う!」
「俺も問題ないです。とても良いと思います」
俺たち三人は満足いく動画だった。
しかし、空気を読まない人物が一人……。
「……我の威厳は大丈夫かの?
頭が低すぎと思われるのではないか?」
「……謝罪動画なんだし、あれぐらいが普通さ」
即座に隊長がフォローする。
「クオンはあやってるのに、なんかキレイでよかったよ?」
「そうか、それならば良いか……」
ナイスフォロー!
焔乃宮と目を合わせ頷き合う。
「では、この内容で投稿致します」
さて、視聴者たちは、どう反応してくるのか……。
否定的な意見はもちろんあるだろう。
でも、少しでも俺たちのことを信じてもらえたら……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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