第十四話 焔乃宮冬夜襲来
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翌日、俺とましろは午後一番に会議室に呼ばれた。
凪隊長、久遠副隊長、そして俺たちのいつもの四人に加え、隊長の横にどこか見覚えのある青年が立っていた。
「紹介しよう。今日からこの部隊に派遣された、焔乃宮君だ」
隊長はどこか投げやり気味に紹介してくれた。
隊長の横に立つ青年は、背筋はしっかり伸びている。
しかし、その表情はどこか暗い。
「第一航空戦術部隊・竜騎戦術課所属の焔乃宮冬夜と申します。……よろしくお願いします」
竜騎戦術課――通称、竜騎士。
そんな部隊からの派遣……となると、どう考えても昨日の件の影響だよな。
見覚えがあると思ったのも当たり前か。白竜に乗っていた、あのイケメンだ。
すると、俺の横から声が聞こえてきた。
「よろしくおねがいします! ましろです! 6才です!」
この挨拶、気に入ってるみたいだな。
だけど、焔乃宮がましろを見る視線は妙に鋭く感じられる。
軍から何か言われているのだろうか。
警戒はしといた方がいいな。
しかし、隊長は特に気にした様子はない。
「彼は“ましろチャンネル“を監視するために派遣された。
僕たちがまたやらかすとでも思っているんだろうね」
俺的には否定はできない。
むしろ絶対やらかすと思っている。
「監視とは面倒じゃな。
……チャンネル以外のことまで、口を出す気ではあるまいな?」
「あくまでも対象は“ましろチャンネル”だけさ。
それ以外で知り得た情報については、報告も発言も禁止してある」
「それならいいんじゃが。
ちなみに、冬夜よ。お主は何をするんじゃ?」
「はい。皆様にお願いしたいことは主に四点です」
淡々と告げられた要点は四つ。
・動画の概要を事前に申請すること
・チャンネルのアカウントを共有すること
・投稿前に軍のチェックを受けること
・ライブ配信の際は、焔乃宮を同席させること
「他にも細かな点はありますが……その辺りは後ほど資料で提示させて頂きます」
これは監視というよりは管理なのでは……。
「うーん、エンノミヤは“なかま“なの?」
確かに、立場がわかりにくい。
ましろの問いかけは真意をついているかもしれない。
「ましろちゃんは難しいことを聞いてくるね……」
隊長は苦笑しながら、だけど、鋭い目つきで焔乃宮を見ながら言った。
「君は僕たちの仲間なのかな?」
……怖っ。
これで仲間じゃないなんて言えるのか?
焔乃宮の方はというと、直立不動のまま、唾を飲み込んでいた。
「……仲間にしていただけると、嬉しいです」
「いいよ! いっしょに配信もしよっ!」
「……上司に確認させてもらっても、よろしいでしょうか?」
「うん!」
「冬夜よ。ちゃんと“我から勧められた”とも言うんじゃぞ」
「……了解いたしました」
これは出演確定だよな……。
なんかちょっと焔乃宮が可哀想に見えてきた。
――まあ、少なくとも今のところ、悪い人ではないのかもしれない。
あの視線だけは気になったけど……。
「よし、それじゃあ次の動画の話をしよう!
と言っても、やる事は決まってるんだけどね」
謝罪動画だな。
三回目の動画で謝罪ってどうなのよ。
その後、会議をし、動画撮影も行なった。
その結果、
「いやー、焔乃宮君が来てくれてよかったよ!
次の動画はバッチリだね」
「ありがとうございます。
こちらで編集させて頂きます。それが出来次第、最終チェックの方をお願い致します」
「ああ、任せたまえ!」
焔乃宮は優秀だった。いや、超優秀だった。
本日の業務はこれにて終了。
あとは自室に帰るだけとなった。
「そういえば、エンノミヤもここに住むの?」
「はい。そのように命令を受けています」
「守秘義務のためさ。これだけは譲れない」
「じゃあ、ましろがあんないしてあげる!」
え? 場所を知っているのか?
俺は知らないぞ?
隊長の方をチラッと見てみると、小さく笑みを浮かべ教えてくれた。
「君たちの隣の部屋だよ」
「おとなりさん!」
まじで?
警戒対象はすぐ近くに置いた方がいいかもしれない……けど、何かあっても俺たちじゃ太刀打ちできないぞ?
それとも、隊長たちは焔乃宮のことを信用しているということか?
うーむ。わからん。
「行こっ!」
「お願いします」
そう言って、ましろ特に気にする事はなく焔乃宮を連れて部屋を出ていく。
俺もその後に続く。……が、やはり彼の表情だけが気になる。
ましろ相手だと、ちょっと顔が強張るんだよな。
こうなったら直接聞いてみるしかないか。
「なあ、焔乃宮」
焔乃宮が俺の方を振り向く。
「なんでしょうか?」
「どうして、ましろを見るときだけ顔が強張るんだ?」
「え?」
目を見開いて固まっている。
「ソーマ、どうしたの?」
焔乃宮の後ろから声が聞こえるが、今は無視。
そのまま焔乃宮を睨み続ける。
「す、すみません。勘違いさせてしまったようです」
焦ったように、早口で答えた。
「その……ましろさんが、あまりにも可愛くて……。
任務中ですので笑顔にならないように気をつけていたら、顔が強張ってしまっていたようです……」
まじで?
焔乃宮は照れたように顔を赤くして、目を逸らしている。
その姿は嘘を言っているようには見えない。
「ましろはかわいい!」
ましろが腰に手を当て、胸を張りながら自信満々にそう言う。
確かに、猫だった時からみんなにそう言われてきたからな。本人が当たり前だと思っても仕方ないのかもしれない。
それに、
「ああ、ましろは可愛い。それなら仕方ない」
可愛いと思っているのは、俺が一番。
焔乃宮の肩を叩き、頷いてやる。
こいつとは気が合うかもしれない。
まだ、完全に気を許しているわけではないけど。
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