第32話▷Headless Knight
おかしい。
話がどんどん膨らんでいく……。
これたぶん
2章は年内には完結出来ず
1章よりも長くなること確定しましたね。
(ラストのほう大幅にプロット追加しましたし)
扉を開け放ち、先頭に立って中ボス部屋に足を踏み入れた私の前方に、部屋の奥で待ち構えていた存在が騎馬にまたがり武器を構えている姿が見えた。
明らかにこちらを既に認識して臨戦態勢をとっているようだ。
その存在は漆黒の鎧に身を包み、右手に通常の人間ならば両手でなければ満足に扱えそうにない真っ黒な大剣を手にしていた。
そして左手には、本来首の上にあるはずの自らの頭部らしきものを大事そうに胸に抱え込んでいる。
そう。この闇夜のように真っ黒な騎士には、本来あるべき場所に頭がなかったのだ。
この首なし騎士が身を預けている漆黒の騎馬も同様に頭部が存在していない。
「皆さま! 【看破】致しましたわ!
会敵したこの存在は【首なし騎士】ですわ!!!」
―――首なし騎士!!!!
不死系魔物の中でもかなり高位な存在だ。
脅威度で言えばB+クラスに相当するだろう。
他の不死系とは一線を画し、攻撃・防御ともに徹底的に物理に特化した難敵である。
まったく持ってCランクダンジョンには似つかわしくない存在だ。
もしかしたらこの"叡霊聖廟"というダンジョンの難易度格付けも今後上方修正されるかもしれない――――
「11時の方向来るぞ! アリサ防げ!!」
「ッッ!」
兄さまの声で はっ と我に返る。
同時に反射的に聖剣を全力で顔前に振り抜く。
―――【パリィ】ッッ!!!
ガッキィイィイィィィン……
私の聖剣とデュラハンの漆黒大剣が火花を散らして交差した。
「……っクッ!」
その衝撃もさることながら、あっという間に私の眼前に肉薄した機動力に舌を巻いた。
姉さまからの【防護壁】と、この聖騎士鎧があっても無防備に直撃していたらタダでは済まなかっただろう。
兄さまからのお声がけに助けられた。
「んなろッッ」
ギャギャキィン……
デュラハンの【強撃】が私の【パリィ】で止められて生まれた僅かな隙を狙って、兄さまが不死系特攻剣技スキル【十字強斬り】をクリーンヒットで浴びせかけた。
「…………!」
おまけに兄さまが握る長剣には、対象の防御力を無効化する「貫通」のアビリティが付与されている。
多少の効果は期待出来るはずだ。
しかしデュラハンにはそれほどダメージにはなってないようだ。
漆黒の大剣で範囲斬撃【なぎ払い】を私と兄さまに放ってきた。
「ッッ」
「うわあっ!?」
私自身は大盾でその斬撃を防いだが、兄さまはまともに食らって後方に吹っ飛ばされた。
単独攻撃なら可能だが範囲攻撃は私個人ですべてを受け切るのは物理的に不可能なタイミングだった。
「エリオネアッッ!大丈夫?
いま癒 すからねっ!! 【上級治癒】!」
「さ、サンキュ、ジュリエス……。」
即座に姉さまが兄さまを回復する。
「FIREァァ!!」
スーリアも不知火と紫電で聖属性弾丸をデュラハンに放つ。
キン! キン!!
「なんと」
「マジかよ……」
しかしデュラハンは大剣版【パリィ】とも言うべき大剣スキル【ディフレクト】で、スーリアが放った弾丸を弾き落としたのだ。
「……くっ!」
「待てアリサ! お前は動くな!」
体勢を立て直したエリオネア兄さまが、敵に突撃しようとした私を制した。
……確かに。
最前線の壁となるべき私が前進してしまっては陣形が縦に間延びしてしまって、隙が大きくなるところだった。
そしてデュラハンは首なし馬の機動力であっという間に私の攻撃範囲から離脱している。
大剣と己の頭部で両手が塞がり、手綱も用いずにこの動き、正に人馬一体とはこの事なのだろう。
「【聖槍光】!!」
遠距離ならと、ジュリエス姉さまが攻撃神聖術を放つも、余裕を持って回避される。
「……!! さっきからちょこまか鬱陶しいっ!
じっとしてなさいよ!【聖束縛】!!」
姉さまが今度は対象の動きを封じる神聖術を放った。
しかし、、、
「ダメか……」
【沈黙】のように対象を状態異常に陥らせる魔術は、レベル差が開いた格下ならばほぼ確実に通るが、レベル差が拮抗あるいは格上が対象だと相当な近距離で発動させないと魔力が分散されてしまうのか中々成功率が上がらない。
だが多少距離があいていたとは言え神聖術効果上昇の職業特性を持つジュリエス姉さまの神聖術にも容易く耐久してしまえるとは、、、
このデュラハンは、強い。
総合的に強い。
この第4層では神聖術の総合力が試されたが、やはり中ボスの存在も小細工なしの総合的実力が求められているのだろう。
「来るか!」
再びデュラハンが私目掛けて突進してくる。
しかし今度は大剣による攻撃ではなく、体当たりによる特攻のようだ。
剣士のように剣技に特化している訳ではないが、私にも【剣術マスタリー】のスキルがある。
剣技スキルにはカウンターとなるであろうスキルは存在しないが、それに似た剣戟をマスタリースキルを駆使して脳内で用意する。
―――が、、、
首なし馬の両前足の蹄が私目掛けて襲いかかってくる。
これは、剣では受け止められない!
「【シールドバッシュ】っ!!」
慌てて盾術スキルを発動し、大盾を前方にかざす。
ガィン……
「なんだと!?」
デュラハンが駆る首なし馬の両前足が私の聖騎士大盾をかけ登る。
瞬く間にその後ろ足も盾を足蹴にし、踏み台にして高く高く跳躍する。
【シールドバッシュ】が生み出した前方への推進力をそのまま自身の跳躍力へと利用してしまうとは……!
デュラハンが左の小脇に抱える自らの首が「にたぁ」と笑った。
「しまったっ!!!」
高々と「私」という壁を飛び越えたデュラハンが、後列の姉さまとスーリアに襲いかかろうとしていた。
ズシャァァア!!
「あうっ!」
「っく!!」
振り向いてなんとか着地しようとするタイミングを狙いデュラハンの背中に【セイクリッド・インパクト】をお見舞いするも、デュラハン自身も【なぎ払い】を後列広範囲に放っていた。
ガィィン
派手なエフェクトが入ったことから、デュラハンに有効属性の攻撃が急所攻撃判定になったようだが、デュラハン自身はよろめきはしたものの、私たちの間を駆け抜け再び近距離 範囲から離脱している。
「姉上! スーリア! 大丈夫か!!」
デュラハンを視界に捉えながら最大限に警戒しつつ2人に声を掛ける。
「アリサさま! ジュリエスさまの神聖術のお陰で
なんとか持ちこたえられましたわ!」
「一気に体力60%はごっそり持ってかれたけどね…。」
姉さまは【範囲治癒】で自身とスーリアを回復しつつ、口元の血を拭っていた。
「馬だ! 馬を狙うぞ!!!
ジュリエスは神聖術で、スーリアナ嬢は魔銃で
首なし馬を徹底的に狙え!!
奴を床に引きずり下ろさなきゃ勝てねぇ!
あとアリサはとにかく持ちこたえろ!!!
後ろの2人に攻撃を通すなっ!!!」
兄さまが戦略を告げる。
「……簡単に言ってくれるわね……
【慈悲の雨】!!」
姉さまが範囲攻撃神聖術を展開する。
なるほど。
単体攻撃なら簡単に回避されてしまうが、広範囲に効果がある範囲魔法ならば多少威力は落ちるものの命中率は格段に上昇する!
天からの柔らかな光が幾つもデュラハンと首なし馬に突き刺さる。
「………………!!」
「【跳弾】×2!!」
折からのダメージに戸惑ったデュラハンが乗馬する首なし馬に、スーリアが放った2発の聖属性弾丸がデュラハンの思いもよらぬ方向から命中した。
防戦一方では分が悪いと判断したのか、デュラハンが再びこちら目掛けて突進してくる。
またこちらの【シールドバッシュ】の推進力をバネに空中へ駆け上がるつもりであろう。
―――しかし、、、
「同じ手は喰わない。」
私はそう吐き捨て、縮地ステップを前方へ発動する。
「!!??」
私のこの動きは想定外だったか。
首なし馬もまだ両足を構えていないものな!
「【剣閃】」
戸惑っているデュラハンと首なし馬に、私の所持している剣技スキルで最大のスピードを発揮する剣技スキルを発動する。
シュピン…
首なし馬に急所攻撃が入った。
しかしそれと同時に勢いが死んでいない騎馬の全体重がかかった突進が私を襲う。
(……くっ)
それでも私の身体を張った自爆に、デュラハンの勢いはほぼ止まりつつある。
「そこかよっ」
ジャキジャキンンン……
間髪入れずにエリオネア兄さまの【十字強斬り】が首なし馬にコンボで入る。
「今だジュリエス! 今度こそ行けるだろ!
こいつを止めろ!!」
「わかったわエリオネア! この距離ならばっ……!!」
姉さまが自身の杖を両手で水平に構える。
「【聖束縛】!!!!」
「……………………!!!??」
姉さまの杖から生まれた白く輝く無数の糸がデュラハンと首なし馬に絡みつく。
"毒"や"麻痺"などの状態異常ならば不死系にはほぼ確実に無効化されるが、神聖術【聖束縛】は聖属性の魔力で対象を"束縛"状態にする効果がある。
そしてそれは不死系モンスターにも適用される。
それがデュラハンの至近距離で発動したのだ。
散らす時間も耐久する準備も整わない距離で。
「通った!!! スーリアナ嬢!!!!」
兄さまの指示が今度はスーリアに飛ぶ。
「お任せ下さいませ!!」
見るとスーリアが構える魔銃は、先程手にしていた紫電と不知火の片手銃ではなく、散弾式両手銃の無月散水に持ち替えられていた。
「蜂の巣にして差し上げますわっ!!!
FIREァァァァァアアアア!!!!!!」
スーリアが両手で抱える細長い魔銃が何百発もの魔弾を無造作に吐き出す。
ドババババババババババババババババ……
一発一発の威力は軽いが、それが何百もの数になると話は別だ。
デュラハン本体はまだ漆黒の重鎧を身に着けているからだろうか、多少なりとも持ちこたえているように見えた。
しかし、生身であろう首なし馬は、【聖束縛】で自慢の機動力を封じ込められ立ち尽くしたまま全身におびただしい数の魔弾を受けて、やがて黒い霧となって霧散した。
「やった!」
「まだ早い! アリサ来るぞ!」
歓喜の声を上げた私に兄さまが叱責する。
私に肉薄してきたデュラハンに向き直る。
兄さまの言葉通り、束縛が解けたデュラハンが自慢の大剣を振りかぶっていた。
「なんだ。隙だらけではないか。」
私はカウンター気味に【セイクリッド・インパクト】をデュラハンのがら空きになった胸部に撃ち込む。
ドガァァン!!!
デュラハンは急所攻撃となった私の斬撃を受けて後方へ吹っ飛ばされる。
「これは狙いやすいわね。
今度は回避出来ないでしょ!
天国に送ってあげるわっ!!
ハァァッッ!!!」
ガカッ
私に吹っ飛ばされて宙を舞うその首なし騎士が地面に着こうかという時に、姉さまが放った【聖槍光】がデュラハンの上半身を吹き飛ばした。
下半身だけ残されたデュラハンは、そのまま身軽になった身体を床に着地させるとガックリと両膝を付き、倒れながら黒い霧となって消えた。
「……終わった、のか……?」
「あぁ。上出来だな。みんな良くやってくれた。」
「ふう……。まぁこんなものかしらねっ!」
「やりましたわ! 素晴らしいですわっっ!!!」
勝利の余韻にひたる私たち4人の前に、次の階層へ繋がる女神像が姿を現した。
―――まだ先があるのか…………。
私は軽くため息をつくと、聖剣を左腰の鞘に納めて、勝利に安堵するみんなの笑顔に振り返った。
久しぶりのガチバトル回でした。
(しかもまだ中ボスという……)
動かすキャラが一気に2倍になったので
中々思い通りに書けなかった感じでした。
(1章とか最大7人動かしてたのに)
もしよろしければ☆評価もお願いしたいです……。
タイトル和訳「首なし騎士」
(2026/10/19)




