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第29話▷Brother Sun and Sister Moon

また物語が思いもよらぬ方向へと

転がり始めた気がします……。

(作者の意図とはまた別に)

まだ距離はあるがここから倒れている2人を見る限りでは、司祭服に身を包んだ女性と騎士鎧を纏(まと)った男性のように見えた。


どちらの服も鎧もあちらこちらが焼け焦げていて、エネルギーフィールドの火力の高さが改めて伺(うかが)えた。


今すぐ駆けつけたい心境に囚(とら)われたが、こちらもダメージバリアからの自動回復の都合もあり、ゆっくりとした歩みで進まざるを得なかった。


「アリサさま、一刻を争いますわ!

足蹴にする御無礼、お許しをっ、とうっ!!!」

「おうふ」


あと3m、あと3歩でエネルギーフィールドを抜けるか、という距離でスーリアが私の胸を蹴り、転がりながらダメージバリアの先、通常床の地点まで飛び抜け転がりこんだ。そして女性のほうを丁寧に抱き起こしている。


流石の機転に感心しつつ、私もラスト2mで思い切りジャンプして向こう岸(?)に渡る。


「アリサさまっ」

「ああ! 【上級治癒(グレートヒール)】×2」


すぐさま倒れている2人に駆け寄り、今の私が発動出来る最高の治療神聖術を発動させる。


「う、うん…………」「……うううっ」


先刻まで虫の息だった2人とも体力が回復し顔色も良くなってきたからなのか、少しだけ苦しそうにうめき声をあげた。


「何とか間に合ったようだ「ですわね」


スーリアに抱き抱えられていた女性の息も整ってきた。




「………………………………………………え??」




傷跡は癒したが、残った血やす(・)す(・)で汚れている女性の顔を私は見た。


まさか、と思いつつ、深くかぶっていた司祭帽を丁寧にはずす。


「………………!!??

と、いうことは……!!!」


半ば確信に近い思いを抱きながら次に男性の兜をこれまた丁寧にはずす。


やはり私の思った通り、2人の鮮やかなクリスタルブルーの髪がこぼれてきた。


「アリサさま……? お、お知り合い、ですの……??」


スーリアがキョトンと私の顔を覗き込んできた。


「その、なんと言うか、、、

私の、兄上と、姉上だ……………………。

神聖ラスティア帝国第二皇子のエリオネア兄さまと

第一皇女のジュリエス姉さまだ……………………。」


私の言葉を聞いたスーリアは ぽかん とした顔でかぶせる言葉も失ったまま固まっていた。




* * *




エネルギーフィールドを渡りきった中ボス部屋の扉の前は安全地帯に設定されているのか、魔物(モンスター)の気配が皆無だったので私たちはキャンプを張ることにした。


いや、そもそもこの階層には魔物(モンスター)の影はなかったが、致命的ダメージを与えてくるダメージバリアが大部分を占めるフロアではもともと生息が不可能なのかもしれない。


そしてそんな些細(ささい)な事を気にしている場合ではなかった。


遠い祖国、神聖ラスティア帝国にいるはずのエリオネア兄さまとジュリエス姉さまの2人に、こんな離れたルーンネリア王国の王都大聖堂地下の迷宮(ダンジョン)"叡霊聖廟(えいれいせいびょう)"で再会を果たすことになろうとは……!


確かにライル総司教からの捜索依頼対象は "身分が高い方たち" と伺(うかが)ってはいたが、心の底から思い切り驚いてしまった。




「ま、まさか、兄上 姉上とこんなところで

出逢えるとは…………」




スーリアが淹れてくれたグリーンティーに口も付けずに思わず言葉がこぼれた。


そのスーリアも空気を読んでテントの外で収納空間(ストレージ)から取り出した愛蔵書を読んでいるようだ(死霊秘法(ネクロノミコン)でなくて本当に良かった)

兄妹姉妹水入らずの時間を作ってくれていることには素直に感謝だ。


「それ言ったら俺だってびっくりだよ!」

「でも元気そうでわたくし安心したわ…。

それに本当に危ないところをありがとう。

お陰で助かったわ。」

「まったくだ。アリサは俺たちの命の恩人だ!

本当の本当にありがとうな!」


エリオネア兄さまとジュリエス姉さまが私に頭を下げてきた。


「あっ、いやっ!

兄上も姉上も頭を上げてくださいっ!」


慌てて2人の頭を上げさせると、2人ともお日さまのように輝いた笑顔を見せてきた。


幼い頃から慣れ親しんだ兄さまと姉さまのそんな笑顔を見て、気が緩んだのか自然と涙腺がゆるみそうになった。


「しかし、まぁ、あれだ。

お兄ちゃん ずっと心配してたんだが、、、

陛下(ちちうえ)やフロルからは武者修行の旅だって聞いてるけど

どうだ? 剣の腕は。少しは物になったのか?」

「え」


皇宮ではそんな話になっているのか……。

エリオネア兄さまの言葉に少し驚いてしまった。


確かに私は自室に「私だけの運命を探しに行ってきます」と書き置きを残して皇宮を家出同然で飛び出して来たつもりだが、みんなの中では出奔(しゅっぽん)ではなく修行となっているのか。


「いや、その……。

兄上も姉上も、わ、私をラスティアに

連れ戻しに来たとか、そういう訳ではないのですか」


素直な疑問をぶつける。


「え? 連れ戻す? わたくしたちが、アリサを??」

「自分探しの修行みたいなもんだろ?

それを邪魔するとかそんな無粋な真似、

するわきゃねーだろ。な?ジュリエス?」

「まったくよ! わたくしたちだって今

似たようなことしてるわけだし。

皇宮の外の世界も新鮮で楽しくて飽きないわ!

ね? エリオネア?」

「ほんとマジでその通りだぜ。

さすがにアリサひとり旅とかじゃ心配だったけどよ

なんだか頼りになりそうな相棒(パートナー)も

ついてるみてぇだし、もともとアリサの剣術の腕は

折り紙付きだったし、そんだったら俺からは

なんも言う事ねーよ。」


兄さまも姉さまも「そんな当たり前のこと訊くなよ」と言わんばかりの顔だった。


「修行と言えばアリサも冒険者やってるんでしょ?

どれくらいのランクかしら!

わたくしとエリオネアも色々あって

冒険者登録したんだけど、2人とも今、

レベル20のCランクゴールドクラスなのよ!」


そして双子の兄姉がキラキラ金色に輝くギルドカードを揃って取り出して見せてきた。


「この"聖廟"にもぐってるってことは

お前も冒険者登録してるってことだろ?

どれ、お前のカードもお兄ちゃんに見せてみ?

ほれほれ見せてみ??」

「ほらっ、お姉ちゃんにも見せて?見せて??」


エリオネア兄さまもジュリエス姉さまも2人揃って右手をわきわきさせて私のギルドカードを見せるように促(うなが)してくる。




「……………………………………わかりました。」




圧力に負けて おずおずと自らのギルドカードを差し出す。


ああ。

出来ることなら内緒にしておきたかったのだが……。




「……は?」

「えっ?えっ??」




純白に光輝く私のギルドカードを目にした2人は5秒くらい固まっていた。




「これ、白金(プラチナ)? お前、プラチナクラスなの??」

「えっちょっと待って? アリサってば

そんなに強かったの???」




秒で兄さま姉さまに囲まれる。


大好きな兄さまと姉さまにいい顔を見せることが出来て嬉しいと思う気持ち半分、尊敬している相手を実力で上回ってしまっている申し訳なさ半分。


私は何とも言えない複雑な思いを抱いていた。


「まぁ、アリサのが旅立ちも早かったし、

そんだけ苦労したって証左(しょうさ)だろ?

現にそのアリサの実力のお陰で俺たち2人は

助かった訳だからな!」

「本当にエリオネアの言う通りよ。

わたくしたちなんてちょっと背伸びして

ここに来たもんだから、この4層まで来るのに

2日もかかってしまったもの!

さすがはわたくし達の大好きなアリサねっ!!」


2人ともそう言いながら私に白金のギルドカードを返してきた。




「……っ」




あぁ。

私も2人のことが大好きだ。


どんな時も私を肯定してくれる。

"私(アリサ)"という人間を尊重してくれている。




「あ、あ、あ、ありが、とう……

兄上、姉上………………。」




駄目だ。

しっかりと伝えようと思ったのに、やはり照れくさくなって顔を伏せてしまった。




「ふふふっ。わたくしたちは

貴女がわたくしたちの妹で本当に誇らしいわ。」

「ジュリエスの言う通りだ。

頼もしいことこの上ない! 然(しか)るべき時が

やがて訪れた暁(あかつき)には、俺たち2人の

力に是非なってもらいたいものだ!」




ちょっと途中から何を言ってるのか良く解らなかったが、2人のいつもの調子が健在な様子で少し懐かしい反面、こそばゆい気持ちでいっぱいになってしまう。




…………しかし、それはそうと、、、


「それにしても兄上も姉上も、

どうしてまた聖廟(こんなところ)に?

ラスティアとルーンネリアの距離もそうですが、

2人だけで共も連れずに探索(クエスト)、、

それも試練系の探索(クエスト)なんて……………。」


照れ隠しに話題を変えたかったということもあったが、私はずっと気になっていたことを切り出してみた。


「…………あ~~~~~~、、、」


私の言葉を聞いたエリオネア兄さまは、ばつが悪そうに右手で美しいクリスタルブルーの頭をぼりぼりとかいた。


「…………??」


何となく、兄さまの次の言葉を待つ。

しかし言葉を続けたのは横のジュリエス姉さまだった。


「まだ正式ではないのだけれど、エリオネアが

アルクスフォン兄さまに代わって

皇太子になるからよ「え」


思わず声が出た。


「だから俺も勇者(ブレイバー)とは行かないまでも、

英雄(ヒーロー)あたりの職業(クラス)について

泊(はく)を付けないとって話になってな「は?」


「ついでにわたくしも聖女を目指せって陛下(おとうさま)が

言い出してしまって、そんなわけで2人して

アリサじゃないけどわたくしたち2人も武者修行の旅に

出ることになったのよ「えええ?」


兄さまも姉さまも私の戸惑う反応も何処(どこ)吹く風で簡単な経緯(いきさつ)を語り始める。




待ってくれ。

いやほんと待って欲しい。




エリオネア兄さまやジュリエス姉さまとお話する上で、可能な限りアルクスフォン兄さまの話題にならないように気を付けていたつもりなのだが、、、

(いや、限界があるのは承知しているが、

自分からは絶対に切り出さない心づもりだった)




私の"運命の人"探しの旅に頭ごなしに反対し、私を力づくで連れ帰ろうとしたアルクスフォン兄さま。


私との勝負に敗北し、なお卑怯な手段に身を堕とし女神(ノネミア)さまからの怒りを買ったアルクスフォン兄さま。


心配していないと言えばさすがに嘘にはなるが、まさか皇太子を廃されるとは……。




「……えっと、アルクスフォン兄さまに、

いったい、なにが………………」


声が震えないように精一杯気をつけながら、兄さま姉さまに言葉を返す。


「…………あ~、

俺もさ、いまだに信じらんないんだけどさ、、、」

「よりにもよって、陛下(おとうさま)に剣を向けたのよ。」




―――――え?




あの父上に?

神聖ラスティア帝国歴代最高の名君と称される、大帝カルマインに???


ここまで聞いて流石に頭が理解を拒否し始めたので、私はグリーンティーを一気に飲み干し、兄さま姉さまが「実は嘘でした!」と言い出すのを待つことしか出来なかった。

上の兄姉が双子って、なんか良くないすか?

最初に出てきただけじゃ勿体ないなって思って

この聖廟編に出してみたんですけど、

なんだか一気に話が膨らみ始めてしまって

たぶんプロットより長くなりますね(確実に)


ていうかほんと不思議なんですけど、

本家「セカスイ」ではダブル主人公の世知と聖夜を差し置いて

ありちゃんの家族親族の描写が一番細かくなったんですけど、

まさかスピンオフのこの「セカダン」でも

ありちゃんの家族の描写がこんなに深くなるとはマジで思いませんでした!!!!(やけくそ)


あらタイトルは特に深い意味はなくて

映画だか曲だかの有名なやつから

拝借させていただきました~( * ॑꒳ ॑*)


(2026/09/30)

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