第28話▷Just like a Princess
ド〇クエで言えば
トラマナあたりでもあれば良かったんでしょうね笑
見渡すと遥か遠くまでバチバチと火花を上げながら床一面が光っている。
「………………っ」
第4層へと到着した私たちの目に映ったのは、言葉を失うほどに衝撃的な光景だった。
話に聞いた事はあったのだが、迷宮には踏んだだけで物理的にダメージを受けるダメージ床というものが存在しているらしいが、これは恐らくそれで間違いないだろう。
目を凝らすとはるか先、米粒ほどの大きさにしか見えない扉があるゴール地点まで、ダメージバリアであるエネルギーフィールドが隙間なく敷き詰められていたのだ。
「こ、この先に進むと、床を踏むたびに
ダメージを受ける、、、
と、いうことです、わよね…………?」
「そうだな。なんにも考えずに進めば
数歩歩いただけでも命が危ないだろうな……。」
スーリアもギラギラ輝くダメージ床を、目を細めながら見ていた。
本当にこれはどうしたものか……。
私もスーリアもしばらくぼう然とダメージバリアを前に立ち尽くしていた。
「……あっ」
「?」
ふとスーリアが声を上げて、収納空間に手を入れて何かを取り出した。
(スケルトンの、骨……?)
彼女が手にしていたのは、第1層で3桁は狩ったスケルトンがドロップした最下級の素材"汚れた骨"だった。
まったく使い道が無さそうな素材に見えて、細かく砕いて畑に撒くと作物がよく育つ肥料になるらしいが、ギルドでの買取価格は最低クラスだ。
そんなゴミ同然の素材を使って何をするのかと見ていると、スーリアはその骨をダメージ床に向かって放り投げた。
バチィィ!!!
するとスケルトンの骨はダメージ床に触れるやいなや大きな音を立てて弾けて真っ黒に燃えて消えた。
「………………………………………………やばいな。」
「……………………………………やばい、ですわね。」
思わずスーリアと顔を見合わす。
恐らく彼女はこのエネルギーフィールドの威力を確かめる為にゴミ同然の骨を投げ込んだのだろう。
「……以前ここにいらした方々は、どのようにして
先に進んだのかしら。」
スーリアがあごに手を当てて考え込んだ。
―――確かに。
ダメージバリアの派手なエフェクトと威力に気を取られていたが、何かしらの手はあるはずだ。
第1層の低級 不死系対策に【浄化】
第2層の攻撃魔法対策に【沈黙】
第3層の暗闇通路対策に【明光】
今まで訪れた階層は必ず何かしらの神聖術の行使が突破の鍵となっていた。
ならばこの暴力的に輝くエネルギーフィールドフロアの突破にも神聖術が必要になっているはずだ。
しかし今回は"明確"な"回答"が思い当たらない。
ダメージバリアを無効にしてしまうような便利な神聖術など存在しない。
厳密には【絶対領域】という鉄壁のシールドを張る神聖術が存在するが、私の神聖術レベルでは発動出来ない。
そもそも攻略推奨ランクではそのような高位神聖術は取得出来ていない者が大半であろう。
であれば、手持ちの神聖術で打開出来る手立てがあるはずなのだが。
……いや、待てよ。
もしかしたら、"回答"はひとつとは限らないのではないだろうか…………。
「…………アリサさま?」
しばらく考え込んでいた私にスーリアが声を掛けてきた。
その声を受けて私はスーリアに向き直る。
「スーリア、私に考えがある。私を信じて
見守っていてくれるか「もちろんですわ!
でも危ない真似はしないでくださいませ!!
充分十二分にお気を付けくださいませ!!!」
いつもの食い気味の勢いで、彼女が必死な表情を見せつつ返事を返してくる。
よし。覚悟は決まった。
私はマジックバッグからマジックポーションを数本取り出し服用した。
これで私の魔力は全回復したはずだ。
そして聖騎士の大盾と聖剣をマジックバッグに収納する。
そして軽く深呼吸。
「【防護壁】【防魔壁】【自動回復】」
現時点で私が発動出来る神聖術3種を自らに詠唱し自身を強化する。
「……これならば、、、」
試しに一歩エネルギーフィールドに踏み出してみる。
バチン!
「っっ!」
「アリサさま何をっ!!?」
背中からスーリアが私の身を案じる声が聞こえた。
実際、それなりの衝撃と共にダメージを受けた。
しかし防御力抜群の聖騎士鎧に身を包みパッシブスキル【鉄壁】を常時発動している私が【防護壁】と【防魔壁】で耐久力の底上げを図っているのだ。
思っていたよりも自身が受けたダメージはそれほどではなかった。
加えて、同時に発動している【自動回復】のお陰でその傷もあっという間に癒えている。
「あっ、アリサさまっ!!?
だっだだっ、大丈夫、ですの……?」
振り向くとスーリアが泣きそうな顔で私を心配していた。
「ふふっ。大丈夫だ。この程度ならば
強化した私には何の問題もない。」
私は笑顔を返し、右手を差し出す。
「それではスーリアナ嬢。私を信じて
その身を私に預けてくれるか……?
さ、お手を「ふふっ!アリサさまってば!」
平然としている私を見て安心したのか、スーリアに笑顔が戻った。
差し出し返されたスーリアの手を取り、そのまま彼女を抱える。
「まぁ! これが"お姫様抱っこ"ですの!!??///」
照れてしまったのかスーリアは私の胸の中で真っ赤になった顔を両手で隠した。
「ふふふふっ。ちゃんと掴まってるんだぞ。
もし下に落ちたらただじゃ済まな「ひっ!!」
私の言葉にスーリアは慌てて両腕で私の首筋に掴まってきた。
うん。これだけしっかり掴んでくれてれば、万が一も起きないだろう。
姿勢が安定したことを確認して、2歩目を踏み出す。
バチィ!
ひと呼吸置いたあと、3歩目を踏み出す。
バチィ!
このペースなら【自動回復】での回復が追いつかないことはないな。
それでもちょっと累積ダメージがきつくなってきたら【治癒】も唱えればいい。
「あああアリサ、さま?」
「うん?」
ゆっくりゆっくり歩みを進めながらスーリアに答える。
「ほ、本当に大丈夫なんですの? 痛くないんですの?
きつくありませんの?? わたくし、アリサさまに
なにかありましたら一生後悔しま「ははっ」
思わず私のほうからスーリアの言葉を笑い声でさえぎってしまった。
「私は頑強にして比類なき鉄壁を誇る聖騎士だからな。
受けるダメージは最小限だし、
それも受けたそばから自動回復している。
スーリアはなにも心配せずに安心して
私に抱かれていればいい「もう……っ」
スーリアは私の言葉にまた照れたのか、それっきり黙ってしまった。
まぁ、じゃれている場合ではないか。
確実に かつ安全に前進して行かなければ。
しかし、やはりこの第4層攻略も神聖術の行使がカギだったようだ。
それも単純にただ単独の術の発動ではなく、複数の神聖術の発動が必要な総合力が求められていたのだろう。
本当につくづくよく出来た試練だと思う。
この聖廟を攻略出来た神職ならば相当の神聖術の使い手として成長していることだろう。
しかも自身の成長だけでなく、神職にとって価値のあるなにかが最奥にて手に入るとあらば、王国外からも試練を望む者が訪れるというのも頷ける。
総司教からの依頼にあった、他国の高貴な身分の神職もまだ出会えていないが、このフロアを突破出来たということなのだろうか。
入口の第1層からずっとほぼ一本道であったし、すれ違うということは考えにくい。
願わくば、無事でいて欲しい。
そんな思いを胸に私はスーリアを大事に抱えながら、確実にそして着実にエネルギーフィールドの海を渡っていった。
* * *
距離的にはそこまで長くなかったということもあり、30分ほど進んだところでダメージバリアの終焉が見えてきた。
全長およそ500mといったところだろう。
途中2度ほど【治癒】を詠唱したり、自身の強化をかけ直したりした程度で、あとは魔物が現れるでもなく何の問題もなかった。
ただし問題ないというのは、私とスーリアに関しての話であって、別の問題はしっかりと発生していた。
「あっ、アリサさまっ! あれっ!」
「ああ。相当無理をしたのだろうな…………。
今行くから待ってて欲しいものだ。」
ライル総司教からの依頼にあった保護対象であろう。
私とスーリアの視界の先には、ダメージバリアが途切れた中ボス部屋の前で2人の人影が、ボロボロになって倒れ伏していたのが見えていた。
聖廟編も佳境に差し掛かってきました。
年内に2章が終わればいいな~笑
和訳「まるでお姫さまのように」
(2026/09/25)




