第25話▷The Holy Fire
前半は被せ会話連発で
読みづらかったらすみませんw
ちょっとだけ集中して読んで頂ければ……!
それなりの沈黙の時間ののち、ライル総司教がひと口ワインを口に含み、それからゆっくり口を開いた。
「………………聖騎士、でございますか。
それは確かに文句なく本当にご立派な
職業ではございますが、神職・聖職とは少々
一線を画す、と言いますか…………」
総司教もそう思われるか。
事実、私自身もそう思う。
実際 神に忠誠を誓い、神から祝福された聖剣を用いて、神聖術を行使するとは言え、祭祀に関わるでも纏わるでもなく、大分類で言えば「騎士系」職業だと私は認識している、が……。
「しかしライル総司教「アリサ殿。
ギルドカードを拝見してもよろしいですかな?」
慌てて反論しようと口を開いたスーリアの発言に、今度はライル総司教が言葉を被せて私に話しかけてきた。
「…………こちらです。」
ぐぬぬ、と悔しそうに押し黙ったスーリアを横目に私は懐から自身のギルドカードを取り出し、総司教へと手渡した。
そしてそれを目にした総司教の顔色が変わる。
「なんと! アリサさまはプラチナクラス!
でございますか!」
そう言えばまだ伝えてなかった気もする。
「はい。まだまだ若輩者ではありますが、
これでもBランクのプラチナクラスです。」
「それならば話は別でございますな!
Bランク聖騎士であらせられるなら、ぜひ
こちらとしてもこの聖廟内でのお願いしたい依頼が
ございま「お受け致しますわ!!」
私と総司教の会話にスーリアが特攻してきた。
「おっ、おいスーリア?
まだ詳細も内容も聞いてな「いえ! わたくしと
アリサさまならば問題ございませんわ!!
ライル総司教! その依頼、
わたくしたちがお受け致しますわっっ!!」
スーリアは身を乗り出して総司教に返答する。
「…………アリサさまの実力はわかりましたが、
スーリアさま自身の「わたくしもCランクの
ゴールドクラスでございましてよ!!!」
そして総司教に自身の金色に輝くギルドカードを突きつけた。
彼の目と鼻の先まで。接触するかどうかの距離まで。
「………………!!?
しかも魔銃士……!!!?
かような職業、初めて耳にしますな……。
ならば「わたくしとアリサさまならたとえA級
クエストだとしても物の数ではございませんわ!」
「…………………………。」
ダメだな、これは。
話が進まなすぎる。
パーティーメンバーである私相手ならまだしも、総司教さまが相手でも遠慮なく発言を被せて潰してしまうのは流石に看過出来ない。
「【沈黙】」
「…………!!
……………………!? …………!?!?」
神聖術Lv2の【沈黙】。
対象の発言を封じ、魔法詠唱を禁じる効果の術だが、私の意図でスーリアに声を出すことまで禁じさせてもらった。
本来、パーティーメンバーに使う術ではないが、いかんせん収集が付かない状況と判断したため発動に踏み切ったのだ。
「スーリア、少し静かにしてろ。話が進まん。
私が総司教さまと話す。」
ぴしゃりとスーリアに放ち、総司教さまに向き合う。
「~~~!!! ~~~~~!!!!」
スーリアは涙を浮かべながら必死になにかを訴えている。
しかし申し訳ない。本当に申し訳ない。
流石に我慢の限界だったのだ。
許して欲しい。
「…………え、その、え?」
向かいには戸惑うライル総司教。
私は彼に対してとりあえず「何も問題ありません」と言いたげな引きつった笑顔を送ることにした。
* * *
すっかり割り切ったのか、はたまた開き直ったのか落ち着いたスーリアは酒精の抜かれたワインを飲みながら、収納空間から取り出した魔銃 不知火の手入れを始めている。
黙ったままのスーリアというのもまずお目にかかれないので何とも言えぬ違和感を感じてはしまうのだが、先ほどの状況ならやむ無しと言ったところだろう。
とりあえず彼女にはそのまま大人しくしてもらって、その横で私とライル総司教で話を進めていくことにしよう。
「……ちょっと頭を整理させてください。
初め"護衛"と仰っていたアリサ殿が
実はパーティーリーダーであった、と……?」
「その点に関しては誠に申し訳ない。
諸事情があり、それを濁したままのほうが
円滑に事が進むかと判断させてもらっていた。」
まずは私自身の立ち位置の釈明からである。
「なんと申しますか、その凛とした佇まいや
所作の品格からして並の冒険者の身分とは
確かに思えませんでしたが……。」
「総司教さまには重ねがさね本当に申し訳ないが、
私の出自を明かす事は出来ない。
そして私はこの国の者ではない。
だが、私自身ノネミア神の信徒であり、
総司教さまが望むなら聖騎士として
我が聖剣に誓いを立てるつもりだ。」
ごとり。と愛剣を総司教さまの目の前に置く。
「ふふふっ
問題はありませんよ。
拙僧も他国へ足を運ぶ機会も
それなりにはありまして。実は多少なりとも
諸国の紋章など目にする機会もございます。
………………まぁ、それはさて置くとして、
依頼の件の話を進めてもよろしいですかな?」
「……恩に着る。」
依頼契約書へのサイン用に使うつもりで、私が卓上に何気なく置いていた愛用の万年筆に施された、神聖ラスティア皇家の紋章に気づいたのだろう。
私自身 本当の本当に迂闊だったと心底思わなくもないが、総司教はとても腑に落ちたと言わんばかりに納得している。
それもそのはずだろう。
本来ならば王族に匹敵するほどの地位と権力を持ち、王国貴族の筆頭に立つべき公爵家の令嬢に対して、私自身 態度も言葉遣いも不遜で遠慮のない立ち振る舞いなのだ。だからこそ私の出自にある程度推測が立った事に納得が行ったのだろう。
普通の感覚・常識で言えば公爵令嬢に対して【沈黙】で口を封じるなど到底許される所業ではない。
そして総司教は私の隠された身分に気づきつつも、敢えてそれに目をつぶり何事もなかったかのように話を進めてくれることを選んでくれた。
いかに教会が王国などの国家権力から独立した組織とは言え、ここは素直に感謝したいと思っている。
「この大聖堂の地下、ノネミア正教の聖地であります
"叡霊聖廟"は、本来であれば
司祭や司教と言った高位の聖職・神職、
それもCランク以上の冒険者ランクでなければ、
足を踏み入れる、すなわち聖廟の試練を
受ける資格はないのですが―――――」
そこでライル総司教は言い淀んだ。
「………………話を伺おう。」
私は改めてライル総司教に向き直った。
ライル総司教は私の視線を受けて、言葉を続けた。
「このグランネリア大聖堂の地下に広がる
"聖廟"は最奥に到達し制覇することで
神職に就いている者はとある証を
獲得する事が出来ます。
ですので、王国内外問わず高みを目指す聖職者が
こちらに訪れてその証を手に入れるために
"聖廟"へと潜っていきます。
……2日前にも、とある他国の高貴な身分の方が
2名ほど中へ向かわれました。
しかし、、、未だに帰還して来ない状況でして。
ですので、アリサさまたちにその方たちの
捜索をお願いしたいのです。」
「……なるほど。それは確かに厄介だ。」
「国内の上流貴族ならまだしも、他国の、それも
相当に身分のある方たちなので、もし、万一、
何かあれば、例え正教会がどの国にも属さない
中立的存在だとしても、王国内に存在する限り
確実に王国とその国の間に深刻な外交的問題が
発生するのは火を見るより明らかです。
ですのでアリサさまたちがこの大聖堂を
訪れて下さったのは正にノネミアさまの導きとしか
言いようがないのです!
とは言え入場にも規則があるのも事実。
本来ならば例えどんな理由があれど
神職以外の人間のみでの
入場は認めることが出来なかったため、
初めは私も迷いました……。」
ライル総司教の目は必死だ。
いつの間にか私の横のスーリアも手を止めて黙ったまま総司教の声に耳を傾けている。
「しかしアリサさまは聖騎士であらせられる。
ならば、特例として暫定的に聖騎士を聖職と認定して
私の権限で"聖廟"入場を許可して、先行している
その方たちを発見し、保護してもらいたいのです!」
なるほど。
私とスーリアは実はこの上ないタイミングで大聖堂を訪れていたのだな。
総司教の言葉ではないが、正にノネミア神の思し召しとしか言い様がない。
そしてまだ【沈黙】の効果で言葉を発言出来ないスーリアが私の腕を握って強く頷いた。
「了解した。その依頼、
我々が承ろう。」
私の返答と同時に総司教が顔を輝かせ、両手で私の両手を強く握りしめる。
「ありがとうございます!
ありがとうございます!!」
感涙にむせぶ総司教。
それもそうだろう。
そこまで身分のある方の身にもし何かあれば、と気が気ではなかったのだろう。
最悪、戦争に発展する可能性だってあるのだろうしな。
また、"試練"を謳う探索である以上、余程の事態にならない限り教会から救済や仲介など出来るはずもないだろうし。
それならば偶然を装った第三者が助力に入る形の方が都合が良いだろうということも理解出来る。
「なに。私たちに任せてくれ。
何の問題もなく完遂してみせる。」
恐らく依頼達成した際に加算されるクエストポイントもかなり期待出来るであろうし。
「では、依頼契約書をいま
作成しますゆえしばしお待ちを、、、
あ、まだパーティー名をお伺いして
おりませんでした。お聞きしても……?」
そうか。まだ名乗っていなかったか。
私は愛用の万年筆を手に取り、その名を書きながら総司教に答えた。
「―――我々は、、、
我々の名前は【聖なる焔】だ。」
何度かもうクエスト達成してるんで、
パーティー名は決まってるはずなんですが
明記しそびれてしまったのでタイトルにまでして
大袈裟にしてしまいました笑
「聖」騎士のありちゃんの「ᕼOᒪY」と
魔銃士スーリア嬢の掛け声「FIRE!」から来ています。
ていうか、1個目の素材と違って
2個目の素材のお話はなんだか長くなりそうな予感……。
タイトル和訳「聖なる火」
(2026/09/14)




