第21話▷The fruit of the pomegranate and the firebird
なんかほんと冒険ぽくなってきて作者もびっくり。
以前立ち寄った時は通り過ぎただけだったカプロット火山ふもとの村に立ち寄った私とスーリアは、とても貴重な話を村長から聞くことが出来た。
「なんと……、、、柘榴……。」
「はい。そうなんです。
不思議なことにあの火喰い鳥どもは、
柘榴の実が好物らしく、
それに惹かれて降りて来たのではないかと。
普段は近辺に柘榴の木は生えてないんですが
あの日はせがれがシドニアで購入したものを
たまたま持ち帰って来た日でして……。」
「イメージ的にてっきり肉食だとばかり
思っておりましたわ。。。」
聞くところによると、買い出しに訪れたシドニアの屋台でたまたま柘榴を口にして、その味の良さから村の皆にも味わってもらおうと思った村長の息子さんが、柘榴を相当な量を購入し持ち帰ろうとしたのだが、カプロット火山のふもとに辿り着いた時にファイヤーバードに襲われ、ほうほうのていで村へと逃げ帰ったらしい。
そこにぶちまけた大量の柘榴目当てでファイヤーバードどもが何羽か山を降りてきて、そしてたまたま王都へ向かう旅路の途中だった私が通りかかり(定期馬車ではあったのだが)、残らず私の手によって討伐された、という流れだったようだ。
「成程。そのような経緯であったのか。」
以前に話を伺った長老は状況を正確には把握していなかったということか。
そもそも"村長"と"長老"ではどちらの権限がこの集落では上になるのだろう。
私は顎に右手を添えて、しばし思案した。
「あらアリサさま? いかがなさいました?」
それを見たスーリアが考え込んでいる私の顔を覗き込んできた。
「いや、な。
柘榴を入手する為にまたシドニアに戻るのも
なかなか難儀「あら!心配ございませんわ!」
いつもの様にスーリアが私の発言に被せながら、収納空間を発動させて手を突っ込んだ。
「こちらでございわすわよね?」
そして彼女が引き抜いた手にはトマトのように赤い果実が握られていた。
その果実の表面の一部には割れ目が入っており、隙間からはこれまた赤い鮮やかな粒状の果肉?がいくつも顔を見せていた。
「……それが、柘榴の実、なのか?」
「そう! それです! それが柘榴です!!」
村長がスーリアの持つ果実を指さしながら肯定した。
なんと……、、、
話には聞いた事があったが、実際に柘榴の実を見るのは初めてだ。
どうも、美味そうというよりは、私にとってはいささかグロテスクなようにも見えた…………。
「とりあえずスーリア、すぐそれを仕舞え。
こんな村の中でファイヤーバードを
呼ぶわけにはいかないだ「まぁ! わたくしと
したことが。さようでございますわね。」
私の言葉でスーリアは柘榴の実を収納空間に戻した。
「しかしスーリアは、なんでまた柘榴の実なんかを
タイミングよく持っていたん「あらいやですわ!
柘榴の実も例の秘術の触媒のひとつでしてよ。
ここで減ってしまった分は後日
また補充しておかないとですわね。」
「………………そうか。」
私の素朴な疑問にスーリアは朗らかな笑顔でまたもかぶせ気味に答えてくれた。
* * *
流石に山頂までは行く必要がないだろうということで、とりあえず私たちは三合目あたりの少々拓けた中腹で、柘榴の実を使ってファイヤーバードをおびき寄せることにした。
麓の村からここまで片道1時間半程度の道のりだったので、引き上げる時も容易く、討伐にもそれなりに時間をかけることが出来る訳だ。
「では、出しますわね。」
「ああ。」
スーリアは私に断りを入れたあとに、収納空間から柘榴の実と大きめの果物皿を取り出した。
―――まさか、そんなおあつらえ向きな皿まで用意していたとは……。
スーリアが皿に柘榴を載せるのを見ながら、私も袈裟懸けのマジックバッグに手を入れて、革の胸当てと聖騎士鎧を入れ替える。
―――――キョアアァァァッッッ!!!
「早速来ますわね」
「よし、やるとするか。」
ファイヤーバードのものとおぼしき鳥の鳴き声が周囲に木霊するのを聞いて、私もスーリアも臨戦態勢を取った。
以前に何羽か討伐した時は遠距離攻撃聖剣術スキル【ライトスラッシュ】を片っ端から放ちまくり次々と撃墜させたが、命中率や消費スキルポイントを考慮するとあまりコストパフォーマンスは良くない戦い方だったと思う。
しかも今回は希少素材目当てなのだ。前回の何倍もの数を討伐する必要があるかもしれない。
「アリサさまっ! 防御はおまかせいたしますわ!!
攻撃はわたくしが!!」
「了解した!」
事前の打ち合わせ通り、私はスーリアをかばうように立ちはだかり、聖騎士大盾を正面に構える。
「【防護壁】【自動回復】」
そしていくつかの神聖術を自らに詠唱し、万全の体勢を整えた。
ここまで備えた私という前衛は、そう易々と突破出来ないだろう。
加えて【パリィ】と【シールドバッシュ】のスキル技で次々と襲い来るファイヤーバードの攻撃をすべてはじき返すつもりだ。
「"不知火"に"水属性弾"を充填、
"紫電"に"氷結属性弾"を充填!」
スーリアも次々とカートリッジに魔力を込めて弾丸を充填している。
そうしている間にも、10を越える燃えさかる鳥の群れが一斉に私たち目掛けて飛来しようとしていた。
「―――さぁ、行きますわよ…………っ!!!」
ガチン ガチャン
私の背後でスーリアの押し殺されつつも気合いの入った声、そして魔銃の撃鉄が起こされた音と遊底がスライドされた音が聴こえた。
「FIREッッッ!!!!」
ガァン! ガァァン!!
そして爆発音と空気を切り裂く音が私を追い越していく。
『ギョアッ?』『ギャゲッ!』
瞬く間に2羽のファイヤーバードが撃墜される。
―――何度見ても、魔銃の攻撃速度と威力の凄さには、驚かされる………………。
今でこそ落ち着いて彼女の射撃を見てはいるが、初めて2人で魔物を狩った日には、私は魔銃が見せる攻撃力と殲滅速度にそれはそれは驚いたものだ。
なにしろ音がしたと思ったら、一瞬でグレイウルフに風穴が空いていたのだ。
あれを見て驚かないほうがどうかしていると私は思うのだ。
しかしいつものように「FIRE」と言いつつ、今日は水の弾や氷の弾を撃っているというのもなかなか笑える(いや実際は笑わないが)。
ファイヤーバードの弱点属性なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが。
いや、そもそもファイヤーバードにFIREと叫ぶのもどうなのだろうか。
「どんどん行きますわよッッッ!!!」
スーリアの声が機嫌よく弾んでいる。
魔銃のならし発射は上々のようだ。
単発発射の次はいよいよ射撃スキル技の発動だろう。
「【速射】×2! 【連射】×2!! 」
彼女の2丁の魔銃が続々と火を吹き、次々と炎鳥に吸い込まれて行く。
恐らく職業補正が働いているのだろうが、いくら引き付けて至近距離での射撃だとしてもスーリアの射撃精度は目を見張るものがある。
なにしろ飛行しているファイヤーバードに対して全弾命中させているのだ。
「【跳弾】【跳弾】!」
『グガッ!?』『ギャギィッッッ!』
なんと。
弾丸を岩に反射させ、死角から急所直撃を狙う上級スキル技まで習得したのか。
あれでどうやって命中させるのだろう。
器用度最低限の私には逆立ちしても無理だろうな。
「アリサさまっ! 弾丸切れになりましたわ!
充填致しますわっ!!」
「いや、あとは任せろ。」
スーリアの6発まで充填出来る魔銃が2丁とも弾丸を撃ち尽くしたところで私は一歩前に出た。
「【薙ぎ払い】」
彼女があらかた撃墜してくれたお陰で、ファイヤーバードは残り3羽程度に数を減らしていたので、剣術技スキルの【薙ぎ払い】一発で残りのファイヤーバードを全滅させた。
「さすがアリサさまですわ!」
「いや、スーリアには敵わない。
だが、これで終わりではない……、、
また来る「来ますわっ!!!!」
ファイヤーバードの群れ第二陣がこちらに向かってくるのが見えた。
私はふたたび聖騎士大盾を身構えた。
* * *
あれから群れの第二陣に続いて第三陣まで全滅させ、累計50羽はファイヤーバードを葬ったことだろう。
仕留めた魔物たちはすべて煙となって消え失せ、そこには魔石と素材の山が残されていた。
……のだが、、、
「………………ありませんわね……。
"煉獄鳥の羽根"…………………………。」
ファイヤーバードが落とした素材はほとんどが"炎熱の羽毛"、希少素材と思われるものが"火鳥の嘴"だった。
流石に同胞を何十羽も葬られたからだろう。残りのファイヤーバードもこちらを警戒して降りてこなくなっていた。
「これだけ狩って手に入らないとするならば、
恐らく標的「別の魔物だったということですわね!」
私もその可能性が高いと思い始めていた。
「そもそもアリサさまが"煉獄鳥の羽根"は
ファイヤーバードがドロップするはずだと
申し「いや、私だってまだ冒険者なりたてだ!
知識だって乏しいし、それは推測にしか過ぎないと
スーリアも解って「これからどうなさいますの?
もう日も傾いてきておりますわ!!」
被せ合いの不毛な口論をしたところで状況が変わらないのは私もスーリアも解っている。
そもそも、カラス大の大きさで火をまとった程度の体当たりしか能がない脅威度Cそこそこの火鳥が、"煉獄鳥の羽根"などという大袈裟なネーミングの素材を落とすこと自体、不自然だったのだろうな。
しかしなぜだろう。
自分の判断が間違っていたとは思えない。
何故だか、私の勘がそう告げている。
『ギョガァァァッッッ!!!!』
その時、先程の火鳥程度とは比べ物にもならない大きく響き渡る叫び声が聞こえてきた。
「……あっ、アリサさま……、あれ……!」
スーリアが指さす方向を私は既に見ていた。
ファイヤーバードの5倍もあろうかという肢体を持つ怪鳥が、四方八方に炎を吐き散らかしながら、こちらにゆっくりと飛来してくる。
「……やはり、いるだろうと思っていた。
ファイヤーバードの上位種「きっとこいつが
"煉獄鳥の羽根"の持ち主ですわね!!」
私はスーリアと頷き合う。
「よし、準備はいい「いつでもよろしくてよ!!」
ふたたび私たちは陣形を整え、それぞれ大盾と魔銃を構えた。
タイトル和訳は「柘榴の実と火の鳥」でした。
(2026/08/24)




