第20話▷The first catalyst
ありちゃんとスーリア嬢、
なかなかいいコンビかもしれませんね笑
セシル王子の魂を一時的に現世へと喚び戻すために行う儀式に必要な触媒の種類と量は相当な数にのぼったが、大半は市場に出回っているものであったり、その辺で大した手間もなく入手出来るものであった。
しかし肝心な主力の触媒と呼べるものが3種ほどあり、どれもおいそれと簡単にはお目にかかれない非常に希少な素材ではあった。
「まず手始めに、"煉獄鳥の羽根。
こちらから参りましょう。」
王都からそう遠くない南部の地方都市シドニアの冒険者ギルド内に併設された酒場で、向かい合って座っているスーリアが死霊秘法をパラパラとめくりながら声を上げた。
「ほ、ほう……。」
私は緑茶を口に運びながら返答する。
いまだにあの魔導書を目にすると身がすくんでしまうので、つい奥歯になにか挟まったみたいな返事になってしまうのも仕方ない。
「……煉獄鳥、なんてわたくし、
耳にしたことないのですけれども、
アリサさまはなにかご存知で
いらっしゃいますか?」
魔導書を ぱたん と閉じて収納空間に格納したスーリアが尋ねてきた。
「私の知識に間違いなければ、
きっと"ファイヤーバード"のことだろう。
何羽か仕留めたことはあったが、
そのような素材は目にしたことはないから
きっと希少素材「えっ!ご存知ですの!?」
スーリアが身を乗り出して私の話に食いついてきた。
あの決闘から何日間かの準備期間を経て、私はスーリアとふたりで王都グランネリアから旅立ち、今日で1週間ほどになる。
いきなりの本格的 探索の前にまずは互いの連携の精度向上と鍛錬 (おもにスーリアの)のために近隣の脅威度の低いモンスターを狩ったりしていた。
そしてスーリア自身の冒険者ランクもシルバークラスのDランクになったところで、希少素材の中でも比較的簡単そうなものから挑戦してみようという話になったのだ。
しかし、スーリアと行動を共にするようになって半月ほど経過した訳だが、いまだに彼女の会話のテンポを掴みかねている。
「どうしてスーリアはいつも私の話の腰を
折るの「いやですわ!そんなつもりございません!」
言ったそばからこれか……。
まぁ、埒が明かないので、話を進めるとしよう。
「確かに他の2つと比べたらファイヤーバードは
まだ手を出しやすい標的だろうな。
とは言っても普通は相当な奥地の魔境にでも
行かない限り遭遇は難し「それは困りましたわ!」
「しかし私が遭遇したのは
王都の南東にある「まぁ!そんな近くに!!?」
「カプロット火山の「今すぐ参りましょう!!」
「…………………………………………………………。」
テンポが途切れ、テーブルを沈黙が包んだ。
確かに王都へ向かう道中、それも到着目前というところで立ち寄った村で、作物が焼かれて困っているという村人の声を聞いて、山を降りて来たファイヤーバードを何羽か討伐したが、恐らく生息地である火山で殖えすぎてしまったのだろうな。
その村の長老に言わせると、本来なら山頂の火口付近に生息するべきファイヤーバードが麓までエサを求めて降りてくることは中々に珍しいらしい。
そして私が懸念しているのは、殖えすぎて本来の生息地からあぶれてしまった個体は、軒並み私が討伐してしまったので、今またファイヤーバードを討伐するにはカプロット火山を山頂付近まで登らなければならないということだ……。
―――ま、何とかなるだろう。
また麓まで降りて来るかもしれないし。
あ、そうだ。
やっと思い出せた。
私は緑茶を口に含んだあとに、いつも聞こうとしていつも失念していた前から気になっていたことをスーリアに切り出してみた。
「……そう言えば、あのトキタダとか言ったか。
あの護衛の侍はこの探索には、
連れてこなくて良かっ「いりませんわ!!」
「い、いや、勝った私が言うのも何だが、
そこそこ腕が立つような…………。」
おや?
言葉がかぶせられて来なかった。
そのスーリアは何杯目かの赤ワインのグラスを飲み干したあとに、溜めていたのかゆっくり口を開いた。
それにしても本当に良く飲むな……。
「わたくしは少数精鋭至上主義ですの。
しかもわたくしのパートナーになって下さった
アリサさまは、ひとりで、
攻撃手・前衛盾・治癒士と3役を
熟して下さるのですよ?
加えてわたくしが長距離攻撃、
それも各種属性弾を撃てますのよ?
素早いだけの紙装甲の攻撃手なんて、
わたくしたちにはリスクでしかありませんわ。」
う――――ん。
侍 職業界隈を敵に回しかねない発言だが、大丈夫だろうか。
そもそもここは冒険者達が集う冒険者ギルドなのだが。
ま、いいか。
この国の公爵令嬢に逆らえる者など、ルーンネリア王国内にはそうおるまい。
「まぁ、最初の目的地は決まったな。
シドニアからならカプロットは
そう遠くない。馬車で1日と「かしこまりましたわ!」
またまた私の言葉にかぶせてきたスーリアはすっくと立ち上がり、先ほど追加で運ばれてきていた赤ワインをまたまたグラスごと飲み干した。
それを見ていた周りの冒険者たちが拍手喝采を彼女に送っていたが、それを見ながら私は(今から他人のフリをしてももう手遅れなのだろうな)とかそんな事を考えていた。
やっっっと、探索が始まります笑
他のお話の時間軸とかもあるので
あんまりのんびりと(作中の)時間はかけられないので
しっかり考えながら書いていかないと、
とは思ってます(たぶん)
2節冒頭でだらだらしてしまった分、
お話のテンポとギアを上げていきたいと思ってますので
よろしくお願いします。
タイトル和訳「最初の素材」
(2026/08/18)




