第19話▷A duel
なんか、ありちゃんは
対人戦ばっかりやってる気がする笑
いったいどうしてこの様な状況になったのか。
頭では認識していても、今ひとつ理解が追いついて来てないかもしれない。
まぁ、私と相対する敵は例外なくねじ伏せるつもりではいるが。
それにしてもラスティア皇宮のものほどではないが、流石は公爵家か。
私たちがいま立っているこの練兵場も、個人邸宅にしては破格の規模に見えた。
「では、これより
サロジョー=ブレア=ミルディアス公爵が代理人
トキタダと、
スーリアナ=ブロム=ミルディアス嬢が代理人
アリサの決闘を執り行う。」
立会人が右手を高く挙げながら声を上げた。
それを受けて私は聖剣を握る右手と、聖騎士大盾を握る左手に力を込めた。
30メートルほど先にいる私の対戦相手も斜に構えて、腰に差している刀の柄に手を掛ける。
見たところ、職業は【侍】だろう。
なかなかお目にかかれない珍しい職業ではあるが、聞くところによると【縮地】と【居合】の技スキルがなかなか厄介だと聞く。
「アリサさまーーっ!
頑張って下さいませーーーっ!!」
公爵家の室内練兵場の壁際からスーリアが私を激励してくれた。
「ふふっ。大丈夫だ。
頑張るまでもなく、何の問題もない。」
私は淡々と彼女に、微笑まじりに返答する。
別に意図してのものではないのだが、私の態度が澄ましてるように見えたのだろう。
ミルディアス公爵が声を荒あげてきた。
「ハッ! 例え聖騎士と言えども、
若輩者の小娘ごときが如何程のものか!!
小金目当てのお前のような凡者に
大事な娘の命を預けられるか!
身の程を思い知らせてやるからな!!!」
まぁ、、、
若輩者も小娘も正解ではあるのだが。
何故か妙に冷静な私は、スーリアの父君であるミルディアス公爵の気持ちも解らなくはないと考える余裕すらあった。
私がスーリアからの依頼を受諾したのちに、私たちがいた客間に乗り込んできたミルディアス公爵の言い分としては、「自分が信頼のおける実力者を娘に付けて探索へ向かわせたい」という至極真っ当なものだった。
しかし親の心子知らずと言っていいものかは解りかねるが、既に私の能力を【看破】しているスーリアは、同行者は私以外考えられないと、猛然と父親に食ってかかったのだ。
『そこまで言うのならば、当然 私の子飼いの護衛より
その小娘のほうが腕が立つのだろうな!!
どちらがより実力者かを
決闘ではっきりさせようではないか!!』
『受けて立ちますわっ!!!!
わたくしが選んだアリサさまのほうが
お父さまの護衛よりも遥かに遥かにはーるーかーに
お強いところをお見せして差し上げますわっ!!!』
その時のやり取りを思い出すに、この親子は似たもの同士なのだな、と ふと思った。
そして先ほどの公爵の罵声に、予想通りスーリアが噛み付いてきた。
「お父さまっ!! わたくしはアリサさまの実力を
しっかりと把握しておりますわ!!!
その上で、わたくしが命を預けて共に探索に
赴くお相手はアリサさま以外にないと
わたくしは確信しておりますわ!!」
「スーリア! お前は幼少の頃から長年
我が公爵家に仕えてきたトキタダよりも
この小娘のほうが優れていると申すか!!
お前もトキタダの実力を知っておるだろう!!」
今のやり取りでひとつ解った事がある。
スーリアは自分の父君にも【看破】スキルの存在を明かしていないのだろう。
もしスーリアが私の実力を【看破】しているという事をミルディアス公爵も認識しているならば、きっと私自身の能力にもここまで懐疑的ではない筈だ。
恐らくスーリアは父親にスキルの存在を明かすことにより、それを家の為に利用されることを是としていないのであろう。
彼女のスキルは有用すぎる。
しようと思えばいくらでも悪用出来るであろうし、公爵家にとっても際限がない程に利用出来ることだろう。
なかなかどうして。
自らを政治利用されることを由としないその心意気は好感が持てる。
そして彼女の事だ。
既に私の対戦相手の実力を看破した上で、私の勝利を確信しているのだろう。
そんな私の視線を受けて、対戦相手のトキタダとかいう男が口を開いてきた。
「クククッ、守備をガチガチに固めた
カウンター狙いしか能がない聖騎士か。
俺の斬撃を防げた者など誰も居なかったが、
少しは楽しませてくれよ?」
正直、気色悪かったので返答せず無視を決め込んだ。
恐らく防御姿勢の私に対して、脚部などへの斬撃から切り崩し、生じた隙に乗じて有効な斬撃を放つつもりであろう。
何もしなくても私には解ってしまうのだ。
私のスキル【剣術マスタリー】の前では、底も程度も浅い戦略も思惑も妄想も何もかもすべてが、丸裸同然なのだ。
これもある意味、【看破】に近いのかもしれないな。
「双方、構え!」
立会人の声で私も少しばかり気を引き締め、聖剣と大盾を握り直した。
「アリサさまっ!!
わたくし信じておりますっ!!!」
「トキタダやってしまえっ!!!!」
似た者親子が壁際から我々に声援を送る。
「クヒヒッ! お任せください旦那さま。
この愛刀"関之兼定"に
斬れぬ物などございませぬ故。」
トキタダの口元が下卑た歪みを見せた。
「―――――始めっ!!!」
立会人の右手が振り下ろされ、私とトキタダの決闘の幕が切って落とされた。
(……やはり)
トキタダは私の見立て通り【縮地】スキルで間合いを一気に詰めてきた。
しかしながら私もスキルなどではなく、実際に身に付けている縮地ステップでトキタダに向かって前進する。
「なんだと?」
聖騎士と言えば大概、敏捷性を犠牲に装備で防御を固めた前衛職だ。
相手の攻撃を受け入れ受け止める事が前提なのが常識だろう。
まさか、聖騎士が想定外の速度で能動的に攻撃を仕掛けてくるなどとは思いもしなかったであろうな。
「クッ!!」
ほう。
歴戦の猛者と言うのは嘘ではなかったようだな。
トキタダは即座にこの状況に対応し、縮地による前進が止まると同時に、既に手を掛けていた腰の刀を抜刀するつもりのようだ。
「【居合】っっ!!」
納刀していることで溜めていた己の気力と高めた集中力で、抜刀と同時に通常攻撃よりも何倍もの速度と攻撃力で放つ侍の代名詞とも言われる超攻撃的技スキルだと認識している。
―――――が、
「【シールドバッシュ】っ」
「むォっ!?」
私自身も縮地ステップの推進力が弱まったところで、聖騎士大盾を眼前に強く押し出し、盾術スキル【シールドバッシュ】で居合スキルを受け止めつつ弾き返す。
ガキィィィィィンン……
激しい金属音と共に、私の盾とトキタダの刀が交差した瞬間、トキタダが刀もろとも後方に吹っ飛ばされた。
彼の【居合】よりも私の【シールドバッシュ】のほうが攻撃判定も威力も上だったということか。
―――ほう。
流石は銘刀"関之兼定"だな。
そこら辺の盗賊の剣のように呆気なく折れたりはしてないようだ。
しかしその持ち主はその刀を使いこなすのに今ひとつ技能が足りていないように思えた。
多少なりともこちらにもダメージが入った気がするが、私が事前に発動していた神聖術【防護壁】で強化されていた聖騎士大盾には傷ひとつ付いていない。
「ヒュッ」
更に間髪入れず、再び縮地ステップを前方へ展開し、追撃を試みる。
トキタダが壁に激突しようかというところで、追いつきつつあった私は締めのスキルを発動させた。
「【セイクリッド・インパクト】」
以前、アルクスフォン兄さま戦で使用した私独自の連携は最後に剣術スキルの【強撃】で締めていたが、あれから場数を踏んで自らのレベル上昇により新たなスキルを取得している私は、それを更に発展向上させている。
聖剣術バージョンの【強撃】とも言うべき、【セイクリッド・インパクト】。
【強撃】とほぼ同様の突進系攻撃スキルだが、その剣戟には【聖属性】が付与されている。
不死系や魔族のように【聖属性】を弱点とする種族には急所攻撃が確定している強力な聖剣術スキルで、魔界ではいつもお世話になっている。
とは言え、【聖属性】は人間種には効果が半減するので対人戦では使い勝手の良い手加減スキルにもなっていたりする。
いずれにせよ、勇者であった兄さまにも初見とは言え通用したこの連携は、私自身とても重宝しており、護るべき対象もいない単騎活動中心の私にとっては先手必勝の特攻策や囲みを突破する戦術などこれ一本でプラチナランクまでのし上がったと言っても過言ではない。
ドガッ
聖属性特有のまばゆいエフェクトと共に私の聖剣がトキタダの胴鎧にヒットし、大きく べこん とへこんだ。
同時に、トキタダは白目を剥き口から泡を吹きながら ぱたり と練兵場の床に崩れ落ちた。
私は聖剣を鞘に納め、ちらり と立会人に視線を向けた。
それを受けた立会人は慌てて右手を高く上げながら叫んだ。
「―――勝者、聖騎士アリサッッッ!!」
やっと客間を出てお話が動き出して来た気がしますね笑
いよいよありちゃんとサブヒロインのスーリアふたりの
冒険が始まり(そうな気がして)ますねwww
ちな、魔銃士のスーリアさんは
FFX-2のユウナさんみたいな感じを想像してもらえると……
(髪型は赤毛ドリルだけど)
タイトル和訳「決闘」
(2026/08/16)




