第18話▷Appraisal and magic gun
なんか話がなかなか進まない……
まぁ、説明回です。
設定凝り性なのでどうしても膨らんでしまいます。
ご容赦下さいませ笑
私の問いに、
スーリアは真っ直ぐに私の目を見ながら答えた。
「わたくしが為そうとしている事は
到底許されざること、、、
この世の理に反する、
ということは存じておりますわ。
それでも、セシルさまの事を想うと、
わたくしは自分を止められないのですわ。
セシルさまにお別れを伝えて、、、
いえ、それよりも大事なこと、、、
セシルさまの未練や無念をお伺いして、
吐き出してもらって、セシルさまご自身が
納得出来る流れになるのであれば、
わたくしはあとはどうなっても良いのです。
ただ、願わくば、セシルさまは
その後改めて天国へと向かって頂ければ、、、」
そこまで言うと、スーリアは顔を両手で覆って泣き出してしまった。
彼女自身痛いほど理解しているのであろう。
自分が為そうとしている事の過ち、危うさを。
私は天井を見上げて深呼吸する。
「話は理解した。
殿下の魂を一時的に喚び戻す、という形であれば
そこまで大きな問題ではないと私は思う。
言わば召喚術と一環のようなものだろう。
無事に事が済めばそれでよし。
もし、なにか予想外の事が起こっても
私が出来る限り力を貸そう。
なにしろ私は聖騎士だからな!」
私は自らの拳で自分の胸を軽く叩いた。
恐らく何らかの不測の事態に陥ったとしても、私の行使する神聖術と聖剣術がもしかしたら状況を打破する決め手になるかもしれない。
私が勝手に"運命の人"と血迷ったセシル王子が繋いだ縁だ。
故に、これもきっと運命なのだ。
想像以上に危うい橋であろう。
しかし私はやる。やると決めた。
それならば余計な事など考えずに、自らが選んだ道を真っ直ぐに突き進むだけなのだ。
「ありがとうございます。アリサさま。」
私の言葉を受けたスーリアが、凛とした表情と佇まいで腰を直角に曲げてお礼を告げてきた。
「あっ! いやっ!」
それを見た私は慌ててそれを遮ろうと試みたが、それよりも早くスーリアが私の手を取り言葉を重ねてきた。
「かような、こんなわたくしめに対して、
アリサさま、いえ、アリサ姫殿下が
差し伸べて下さった手、御恩に対しまして
わたくし、それに報いるためにこの命をも
差し出す所存「待て待て待てっ!!!」
物騒な物言いに私は今度こそ思わず彼女の言葉を遮る。
「私の身分は他国の、、、だぞ?
しかも出奔し身分は捨てたも同然だ。
この国の公爵令嬢がそこまで遜る必要は
ないだろう。」
「でも、アリサさまはわたくしにしっかりと
向き合ってくださいました。
アリサさまがその気になれば、いつでも
わたくしごときねじ伏せて逃げることも
出来るというのに。」
「そんなことっ、するわけないし
出来るわけないだろう!?
か弱い婦女子にそんなこと出来るわけないだろう!」
確かに。
正直言えば、ほんの少しだけは、思った。
【ライトスラッシュ】ぶちかまして全力で逃げてしまおうか、などと。
いや、思っただけだ。
チラッと思っただけだ。
選択肢のひとつとして提示されただけだノーカンだ。
今の私の能力ならば、たとえスーリアが冒険者としてそれなりの実力を有していたとしても何とでもなるだろうと思ったりはしたが、それとこれとはきっと全く別問題だ。
「アリサさまの実力は、わたくし
充分すぎるほど、把握しておりますわ。
だからこそ、逃げずにわたくしと向き合って
下さったことがとても嬉しく思います。」
「えっ?」
唐突に放たれたスーリアの言葉に、思わず言葉が詰まった。
把握されている?
私の力が?
今日会ってまだ間もないのに?
私が失踪したラスティアの皇女アリサだと知っている事と関係しているのだろうか。
こんな遠国まで私の勇名は届いているのだろうか。
どう考えても噂話の域を出ないのではないだろうか。
確かに、初対面の折に自らBランクのプラチナクラス冒険者だと明かした。
しかし彼女からすれば私がランクを詐称しているか本当なのかは解らないはずだ。
私の発言を全面的に信用していたとしても、それが「把握」には繋がらないのではないだろうか。
ううう。
またまた訳が解らなくなってきた。
「申し訳ありませんアリサさま。
わたくしがアリサさまの身の上や素性など
勝手に【看破】してしまっている御無礼を
どうかお許し下さい。」
スーリアは謝罪しながら、戸惑っている私に再び頭を下げてきた。
「あっ、あのっ」
いったいスーリアは私に対する何に対して謝罪してきたのだろうか。
更に訳が解らなくなってきた。
そんな私の様子を見ていたスーリアが更に言葉を続けた。
「わたくしたちが出会ったセシルさまの墓地の前で
不遜ながらアリサさまに【看破】のスキルを
使用させて頂きました。
万一セシルさまの墓地に不逞を犯す輩の
可能性を考えていたもので、
どうかご容赦下さいませ。」
そう言って4回目? もう何回目かわからないが、スーリアが私に頭を下げる。
そして私も引き続き当然ながらそれどころではない。
―――【看破】?
そんなスキルは聞いた事がない。
【鑑定】スキルと同じようなものだろうか。
そんな私の疑問を見越したように、彼女はそのスキルについて説明を始めた。
「お恥ずかしながらわたくし、少々珍しい【職業】を
賜りまして。そのスキルもその職業特有の
固有スキルでございますわ。」
「え? 固有スキル?」
「さようでございます。
わたくしが取得している【看破】スキルを
お相手に使用致しますと、お相手の
名前、職業、肩書きなど知ることが出来るのですわ。
言うなれば【司教】の固有スキル【鑑定】と
かなり酷似しているスキルでございますわ。
それでわたくしはアリサさまが聖騎士であり
某国の姫殿下でいらっしゃることを
把握してしまったのですわ。」
……なんと。
そういった、そのような流れであったか。
何となくではあるが、腑に落ちた、と言うかストンと納得出来た。何故か。
しかし、その様な希少なスキルを有するとは、スーリアが就いている職業もきっと希少なのではないだろうか。
単純に好奇心が湧いてきたが、不用意に尋ねて良いものかどうか一瞬 逡巡してしまった。
そんな私の思いをスーリアは見抜いたようだ。
「本来、わたくし自身は他者に職業を
明かす事は意識して控えておるのですが、
わたくしが不躾にアリサさまに【看破】を使用し
素性を探ってしまった償いに、
わたくしの職業もお伝えさせていただきますわ。
一緒に冒険するんですもの。
むしろ把握して頂かないと。」
そう言いながらスーリアは腰の辺りに両手を伸ばし、そこに差してあったであろう得物をふた振り取り出した。
「……す、スーリア、、、そ、それは、
もしや…………!?」
「こちらは不知火。
そしてこちらが紫電。
どちらも最新鋭の魔銃ですわ。」
スーリアは両手それぞれに黒い金属の塊を手にして、両手を交差させてポーズを決めた。
その黒い金属の塊は、握り手の部分に直角で筒状の部位が繋がっており、知識のない者にはそれがいったい何なのかまったく見当も付かないだろう。
しかし、私は、それを知っている。
かつて帝国の兵器開発部で拝見したものと非常に酷似している。
私は少し目を凝らしてその黒い塊を観察した。
やはり……!
皇帝陛下も密かにドワーフに命じて開発を進めていたという魔銃…………。
間違いなかった。
ここルーンネリアでは完成していたというのか。
「銃弾」と呼ばれる金属の塊を、魔力を篭めることで光の速さで発射し、対象に攻撃するまったく新しい、新時代の武器……。
【魔銃】……………………!!
「そ、それを装備出来ている、
ということはスーリア…………、」
「はい。わたくしの職業は
【魔銃士】でございますわ。
ですので、わたくしがアリサさまの
足手まといになる心配はございませんわ!」
そう得意気に言い放ったスーリアが左右それぞれの手で2丁の魔銃を再び腕を交差させて構えた。
それからスーリアは魔銃と魔銃士について、私が尋ねていないにもかかわらず長々と語り出した。
その存在が今の彼女にとっての自尊心でありアイデンティティなのだろう。
私にとっての【聖騎士】と近しいものを何となく感じ取れた。
そして私としても、殆ど耳にしたことがなかった未知の職業に興味津々で、思いのほか彼女の話に引き込まれてしまった。
スーリアが言うには、【魔銃士】は職業として取得する条件はまだ解明されていない部分があるものの、彼女自身成人前の職業修得直前のステータスで特に秀でていたのが器用度Aと魔力Aであったらしく、それがステータス上の条件ではないかという話だった。
更に公爵令嬢としての知見で「魔銃」の存在を知っていたことと、その財力による実弾コストの現実性、あとはステータスには表示されない【アライメント】の値も関係しているかもしれないという事だった。
確かに存在を知らない得物を使用する職業が提示されるというのも不自然であるし、使い捨ての弾丸を都度補填し用意する財力もなければ魔銃士としての活動も立ち行かなくなってしまうので、私は思わず「なるほどな」と納得してしまった。
それにしても初耳なのが【アライメント】という値だ。
何やら聖属性や闇属性のような精神的魂の属性のことらしいが、まだ解明されていない部分が非常に多く、スーリア自身も良く解っていないようだった。
しかしながらミルディアス公爵家の情報力、知識力には舌を巻く。
もしかしたらわたしが単に知識が乏しかっただけの話かもしれないが、そういった知見を率先して自分に取り込むスーリアの貪欲さに尊敬すら憶えた。
「そして、【魔銃士】が取得出来る
非常に有用で貴重なレアスキルが、
さきほどお伝えした【看破】スキルなので
ございますわ。」
話も佳境に入ろうかというところで、スーリアが今まで以上に目を輝かせながら声をあげた。
「それは狩人の【集中】や、
私のような聖騎士の【献身】
【底力】【鉄壁】のようなものだろうか。」
「そのようでございます。
狙撃対象をよく観察するため、ではないかという
話ではございますけれども、
あまり関係ないような気も致しますけれども。」
確かに。
しかし職業によって取得するスキルとはそういうものなのかもしれない。
きっと深く考えたら負けなのだろう。
いずれにせよ、私はスーリアに力を貸すと決めたのだ。
用いる秘術こそ、死霊秘法を介するという、決して真っ当な方法ではないが、セシル王子の魂を一時的に現世へと呼び戻し、お互いに納得の行く【終わり】を迎えたい、というスーリアの気持ちにはとても共感出来た。
更には、私自身も魂だけの存在とは言え、曲りなりにも「運命」を感じたセシル王子と対面することが出来るかもしれないのだ。
なにも"神"への信仰に綻びが生じた訳ではない。
私が進むべき道が、たまたまそういう道だったというだけなのだ。
もし想定の状況を逸脱するような不測の事態が生じた時は、私の全力の神聖力でねじ伏せる覚悟もある。
私は聖騎士だ。
私の身も心も、神と共にある。
私はひとつ大きな深呼吸のあと、目を開けてスーリアを見据えた。
「……スーリアが有している能力はわかった。
私自身がどこまで力になれるかわからないが、
これからよろしく頼む。」
私はスーリアと握手をするために手を伸ばす。
「…………アリサさま。
ありがとうございます。」
スーリアも手を伸ばし、私の手を取ろうとした。
そんな瞬間だった。
バァァァァン!!!!
突然、私が通されていた客間の扉が勢いよく開かれ、高貴そうな身なりの男性が数人の伴を連れて入ってきた。
「スーリア。話は聞いた。
勝手は許さん。」
その男が威厳に満ちた低い声でスーリアを威圧する。
「…………お、お父さま………………。」
は?
この御仁が、ルーンネリア王国三大公爵のひとり、ミルディアス公爵ということか。
さきほどまでこの部屋に満ちていた穏やかで前向きな空気が一気に張り詰めたものに変わったのが、鈍感と良く言われる私でも流石に肌で感じていた。
前回ありちゃんの情緒は
ジェットコースターや山の天気のように
ころころ変わって書いてる自分でも笑いましたけど
今回はスーリア嬢の紹介みたいな感じに
させてもらいました。
冒険の途中で徐々に明らかになるほうが
物語として面白いのかもしれないんですけど
普通は依頼されても能力が良くわからない人と
自分なら一緒に冒険行きたくないなーって思うので、
ありちゃんに対して説明してもらうことにしました。
どうせ壁打ちの自己満足作品なので
やりたいように書くのが1番かなと思ってるので。
タイトル和名「鑑定と魔銃」です。
鑑定と看破は微妙に違う気もしますけどね。
(2026/08/08)




