第13話▷Nostalgia that doesn't make sense
こちらでもありちゃんの、
「思い込み激しいモノローグ」が書けて満足ですw
この子も結構こじらせてるんですよね……。
向こうでもこちらでもw
時間にして僅か1秒にも満たない程の時間であっただろう。
そんな一瞬でも頭が真っ白になり硬直してしまった私はなんとか我に返り、軽く会釈をして3人から離れる。
それを受けて3人も私に軽く頭を下げた。
厳ついマスクの大男は申し訳なさそうに。
明るい髪色の法衣を着た活発そうな少女は、ニコニコと朗らかに。
(―――――!?)
しかし残りのひとり、赤毛の小柄な少女だけは私に対して警戒するような、そして値踏みするような意味深な視線を投げながらの会釈だった。
一瞬 気圧されたが、私はすぐに視線を切ってギルド内のいちばん隅っこの席に移動して腰を下ろした。
このまま宿に戻っても良かったのだが、自分でも説明の付かない懐かしさを感じてしまった3人が気になっていたのかもしれない。
「アリサさん、何飲む?」
「えっと、あ、じゃあ、グリーンティーを……。」
「オッケ。いつものね。」
私が席に着く頃合いを見ていたのだろう。
クララが注文を聞きに来てくれたので、いつものオーダーを伝える。
「今日はミュアちゃんいなかったけどよ、
もうグレイウルフくらいなら
魔術師なしでも全然余裕で何とかなるもんだな!」
「そそそそ! 魔法がないのちょっとしんどいけど、
それでもユミィの射撃がもともとウチらの戦術の
メインだもんねっ! ユミィさまさまだねー♪」
「いやいや。アイちゃんの【祝福】の
おかげだからねっ。 とりまこの調子でD級昇格
目指してこっ☆」
「……いや、オレは?」
先程の3人も素材の売却を済ませたのだろう。
カウンターを離れて、なんと私の席の隣の丸テーブルを囲んで腰をかけて雑談を始めた……。
いや、特に盗み聞きをするつもりなどないのだが、会話の内容が私の耳に入ってくる。
まだ駆け出しの初心者だったのか。
D級昇格を目指しているという事は、今はまだE級のブロンズクラスという事か。
「アリサさんお待たせ。はいどうぞ。
ゆっくりしてってね。」
「あ、その、ありがとう。」
私がオーダーしたグリーンティーを、運んできてくれたクララから受け取り礼を告げる。
そしてひと口 喉へと運ぶ。
(……うう、美味い…………。)
もともと祖国ラスティアにいる頃から茶葉を煎じた緑茶が好物だったが、このルーンネリアで採れるであろう茶葉のお茶の味は格別だった。
気候や風土によって様々に味や特色を変えるものだとは思っていたが、ここまで私の好みにストライクなグリーンティーに出逢えた事は、正に僥倖だったと言えるであろう。
格別美味しいお茶に舌鼓を打ちつつも、思考は再び"不可解な懐かしさ"に戻ってくる。
――それにしても、
この感覚はいったいなんなのだろう。
あの3人とは今日初めて会う。
それなのに、はるか昔から気心の知れている仲と久しぶりに対面したような懐かしさ。
これも、最近は見なくなった"目覚めると忘れている夢"と関係があるのだろうか。
ということは、考えても答えが出ないのだろう。
また、懐かしさを感じると言ったが、セシル王子の名前を聞いた時に流星のように私を襲った"高揚感"や"渇望感"とは明らかに違う。
勝手に一方的に思い込んでの事だが、セシル王子は私の"運命の人"だったのだ。
しかしながら今の私の心境的には、あの3人は私の運命とは大きく絡んでいない気がするのだ。
もともと、兄姉以外は同世代と接した機会がなかった私は、初めて同じ年代との対面に少々面食らって若干ながら混乱したのかもしれない。
戸惑っている自分の感情が、"懐かしさ"に勝手に置き換わっているのかもしれない。
きっと無意識に同世代との関わりを素直に喜んでいるのかもしれない。
きっとそうだ。
そう考えると納得が行く気がする。
とは言っても、私から彼らに再び話しかけて会話をしようという勇気は出てこなかった。
いや、どう考えても無理だろう!
第一声になんと話を切り出して行けばいいかがわからないし、そもそも向こうが私に友好的とは絶対に限らない。
表面上はそれなりに気を遣って話を合わせてくれるかもしれないが、内心では「なにこの女…」などと思われたら光の速さで逃げ出したくなる。
決めた。
話すのをやめよう。
もし、万が一、いや億が一、話しかけて少しだけ仲良くなったとしよう。
だが私は近いうちにキャスティアの街を離れて王都へ向かうと決めたのだ。
それならば変に彼らと仲良くなっても無駄に終わってしまう。
そうだ。そうだそうだ。
無理なだけでなく無駄なのだ。
だから私は声を掛けないのだ。
私は彼らに話しかけられないのではなく、
話しかけない、だけなのだ。
うむ。決まった。
心が決まった。
私の中で方針が決まると、何だかとても心が楽になってきた。
「……ふう」
軽く息を吐いて、お茶をひと口、口に含む。
―――美味しい。
さっきより美味しく感じる。
心が平静になった私は、再び彼らに横目で視線を向けた。
なかなか接する機会のなかった同世代。
これからも他にそういった者と接する機会が増えるのだろうから、これを機に同世代というものをこっそり観察することにしよう。
そんな思いでそれとなくチラチラと私は彼ら3人を見ることにしたのだ。
まず、最初に私とぶつかった粗野な口調の礼儀正しい大男。
それなりに厚さのある革鎧を身につけているという事は前衛か。
先程 推測した"Eランク"という冒険者ランクから察するに恐らく職業は基本職の戦士なのであろう。
私も女子としてはそれなりに上背がある方だと思ってはいたが、彼はそんな私より更に頭半分以上は身長があった。
それだけでなく体格も相当鍛えられているのか筋骨隆々な筋肉が簡易な造りの革鎧の下から見え隠れしている。
かく言う私とてBランクに昇格したとはいえまだまだ駆け出しの身だが、きっと彼も冒険者として伸びていくことだろう。
それにしても私ほどの黒さではないが、私以外に限りなく黒に近い髪色を初めて見たかもしれない。
祖国ラスティアはもちろん、ここルーンネリアでも滅多に見かけないし、彼のダークグレーの髪色はこの大陸ではきっと珍しいのだろう。
短く整えられてツンと上に立てている髪型も清潔感を感じる。
顔面のつくりの凶悪さに最初は驚いてしまったが、彫りの深さと目つきのシャープな鋭さも見慣れてしまえばもしかしたら愛嬌を感じるかもしれない。
とは言ってもここから見ても迫力と威圧感は伝わってくるので、いざ対峙しても負ける気は全くしないのだが出来るなら関わり合いたくない印象を申し訳ないが持っている………。
次にそんな彼と無邪気な満面の笑顔で談笑している明るい髪の少女に目が移る。
ラスティアでも良く見かけたライトブロンド色の長髪が、ゆったりと余裕を持って後ろで束ねられているが、その髪色が彼女の明るさを余計際立たせている印象を受ける。
彼女の身を包んでいる法衣を見るに、彼女の職業は神職なのだろう。女神官か修道女といったところか。確かに言われて見れば明るく朗らかさの中にも神職特有の揺るぎないしっかりとした芯の強さを何となく感じる。
また透き通った空色の瞳が女の私からでも魅力的に見える。ジュリエス姉さまも相当な美人だったが、この少女もそれに負けない美しさを備えている。
それにしても表情がころころと良く変わるので、見ていて飽きない。彼女と一緒にいるときっと飽きることのない楽しい時間が続くのだろう。
とは言っても実際彼女の横にいたら、私は俯いて彼女を真面に見ることが出来ないであろうことも解ってはいるのだが。
先程からバンバンと他の2人に対して彼女なりの親愛のスキンシップなのか肩を何度も叩いていたりしているが、そこまで気心の知れた仲だからこその彼女の表情なのだろう。例えるなら太陽のような明るい笑顔だ。しかしきっと私相手では会話が続かず沈黙に支配されて、その眩しい表情を曇らせてしまうに決まっている……。
もし、私が彼女ととても親密になれている世界線があったとするならば、それはきっとこの上なく幸運で幸せなのだろうと思う。
そして、そんな2人相手とこれまた楽しそうに話している赤毛の少女。相槌を打ちつつも要所要所できっと的確であろう発言をしているように見受けられる。
恐らく大男の彼があの3人パーティーのリーダーなのだろうが、実際はあの赤毛の少女が陰ながら彼を支えつつも全体を引き締めているのだろうということが何となく想像つく。
肩に付くくらいの長さで揃えられた赤栗色の髪色が、落ち着いた雰囲気を醸し出しつつも小動物のように愛らしさに良く合っている。
身なり的には左胸を護る胸当と背負った矢筒からして狩人といったところか。頭の羽根帽子もそれらしくもあり、彼女に似合った可愛らしさを演出している。
上機嫌に はしゃぎつつもどこか冷静さを失くさない立ち振る舞いからして、きっと天性の狩人なのだろう。第一印象通り慎重さと用心深さを兼ね備えた警戒心から、私の事も最初に警戒しての接し方だったのだろう。
私は誰かと共にパーティーを組んだ経験はないが、身に付けた帝王学の一環で彼女の立ち位置に対して大きく理解出来る点が多い。私も複数メンバーで何かに取り組む機会がもしあるとするならば、彼女のような人材をきっと求めるだろうと思う。
しかしその冷静な警戒心が必要だとしても、実際には私と人間的に合う合わないは恐らく別問題なのだろうとも思う。先程 威嚇されて私としても初めて実感したが、私は多分彼女のことはあまり得意ではないだろう。正直、円滑な信頼関係を築く自信があまりない。いや、確実にない……。
それでもそれとは全く違う観点から見たとしたら彼女自身の優秀さと重要性は非常に―――――――
(―――ヒッ)
横目でチラチラと盗み見しながら値踏みしていたのがばれてしまったのか、赤毛の少女が鋭い目つきで私を睨みつけてきた。
「――――――――っ」
なんとも言えない後ろめたさと恥ずかしさで居心地が悪くなり、私は思わず席を立った。
「あら、アリサさん、もうお帰りですか?」
「えっと、うん。お茶、ご馳走さま、だった。」
私は懐から銅貨5枚を出してテーブルに置くと、クララに引きつった笑顔を向けつつそそくさと逃げるようにギルドを後にした。
上手く本文に組み込めませんでしたが、
ありちゃんが学んだ帝王学の中で
こんなふうな人間観察・考察も習得しています。
適切に人材を把握して適正に人材を運用するためなのでしょう(たぶん/てきとう)
原典「セカスイ」で言うとまだ第1章の由美ちゃんと仲が悪かった頃のありちゃんみたいな感じですね。
あの時期はきっとこんなこと考えてたんでしょうね笑
タイトルを和文にすると「良くわからない懐かしさ」でした




