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第11話▷星に願いを

2話くらいで終わる予定だった旅立ちですが、

遂に今回で第一節終了という形でそれが果たされます!

実際のところ、本気の兄さまと戦っていたらこのような結果にはならなかっただろう。


かたや聖騎士(パラディン)になりたての、レベルも10そこそこの未熟な小娘。


かたや炎神すら単騎で打倒する勇者(ブレイバー)


私を仕留めるのではなく皇宮に連れ帰る為とは言え、流石の兄さまも実の妹相手には相当に手加減していたのだろう。


でなければレベル40超えの勇者に私ごときが勝てる筈がない。


とは言え、勝負は勝負だ。

私は決められた約定(やくじょう)通り、アルクスフォン兄さまに一本撃ち込むことに成功し、なんとか旅の続行を勝ち取ることが出来たのだ。




と、思っていたのだが――――――




ザシュッ!!


「あぐっ!?」




一瞬何が起きたのか理解出来なかった。


ドシャァア


「……行かせないって言ってるだろう!」


「…………!!??」


背後からの不意打ちの斬撃をまともに受けた私は、うつ伏せに地面に倒れ伏す。


必死に首を動かし、地べたに横たわりながら背後を見る。


そこには兄さまが血塗られた神剣を片手に、必死の形相(ぎょうそう)で立っていた。


「アリサは僕と帰るんだ。」


そして倒れた私を兄さまが足蹴(あしげ)にする。


あの血は、私の血か。


神剣ソムレインに(したた)る血液を見てそう思った。


聖騎士鎧すら貫通するとは、この強力な斬撃が兄さまの本気なのだろう。


しかし―――――


「あ、あにう、え…………

やく、そくが、、、違います………………」


兄さまは確かに私と誓約を取り決めて剣を交わした。


そしてその約定通り、兄さまに一撃入れた時点で私は兄さまから解放されねばならないはずだ。


仮にも大国の皇太子で、尚且(なおか)つ【勇者(ブレイバー)】たる選ばれし兄さまが。


人々の上に立ち、人々の希望の灯火(ともしび)になり、人々をあらゆる苦難困難から護るべきアルクスフォン兄さまが!


誓約を(たが)えるなどとは、

私には信じられない………………!!


「一発まぐれが入ったくらいで、

調子に乗らないでもらいたいんだよね。

僕はアリサを連れ戻しに来たんだ。

遊びに来たわけじゃないんだよっ!」


ドガァ!


「―――――~~~ッッ!!」


兄さまが私を思い切り蹴飛ばした。


悔しさで視界が(にじ)んだ。


同時に、私は尊敬していた兄さまを、軽蔑(けいべつ)しなければならない事がとても辛かった。


私との誓約を破っただけではない。


無防備な相手に背後から(だま)()ちで襲いかかるという、人々の畏敬(いけい)崇敬(すうけい)を集めるべき勇者(ブレイバー)としての立場で、本来私たちの心の奥底にしっかりと根付いているべき騎士道精神にも反する、言い逃れの出来ない所業を行ったのだ。


「……っ」


地面に突っ伏したからだろうか。

口の中に土の味がした。


背中の傷が次第に痛みを増す。




―――これが、敗北と屈辱か。




ふと、そんな事を思った、その時だった。


一瞬、左肩に付けている母の形見の白百合のブローチが ぱぱぱっ と、点滅したように光った。気がした。




そして、私は見た。




ピシャァァァン


「ぐわぁっ!!?」




雲ひとつない晴天から一筋の雷光が降り注ぎ、兄さまに命中したその瞬間を。


兄さまは短い叫び声をひとつ上げ、ぱたり と地面に倒れた。




「――――――――――――え?」




余りに突然過ぎる出来事に、私は背中の傷の痛みも忘れて茫然と横たわったまま固まっていた。




―――すると、、、




『―――こちらと(こと)なる世界の大天使ガブリエル、

貴女の声、(しか)とこのノネミアが聞き届けました。』




「ふぇっ??」




突然響き渡る美しい声に思わず驚いた。


この声は現実的に聞こえているのか。

それとも私の頭の中に響いているのか。


気が動転しているからなのか、

私にはまったくわからない。


ただ、声の主が、

「ノネミア」と名乗ったことだけはわかった。


まさか、まさか女神さま?

女神ノネミアさまからの声だというのだろうか。


必死に頭を整理しようとするが、残念ながら私の理解出来るキャパシティを超えてしまっている。


私は思考がシャットダウンしたまま、ただ呼吸しているだけの状態だった。




そして、そんな私の外套(がいとう)を留めている肩のブローチが再び不定期に点滅した。気がした。




『―――はい。貴女の(おっしゃ)る通りです。

私は彼の資質と資格を(かんが)みて、

技能(カスネル)神と共に彼を【勇者(ブレイバー)】に選出しましたが

彼の信念及び思考、行動及び所業、所作、概念など

改めて再精査した結果、彼から勇者(ブレイバー)職業(クラス)

剥奪(はくだつ)する事に決定致しました。

貴女及び貴女の盟主(マスター)におかれましては、

ご迷惑をお掛けした結果になり、心痛の極みです。』




――――――????




駄目だ。

残念ながらもう駄目だ。

一体何が起きて今どうなっているのか、

全くもって理解出来ない。


結局私はここで、考えることを諦めた。


ただ、視界の片隅で、女神さまの言葉を受けて またブローチが点滅していた。気がした。




『そのようなお言葉を戴けて、

この上なく重畳(ちょうじょう)でございます。

それでは貴女もその盟主(マスター)も、

引き続きこの(すばらしい)世界をご堪能下さい。』




脳がパンク寸前だったからだろうか、女神さまの言葉をそこまで聞いて、私の意識は暗転(ブラックアウト)した―――――




* * *




目を醒ますと、見知らぬ場所だった。


日は既に傾いており、東の空は紺碧の彩りに変わりかけていた。


そして近くにアルクスフォン兄さまの姿はなく、私は数秒ほど茫然としていた。


「……えっと、、、」


頭の中を頑張って整理しようにも、本当に解らない事だらけだ。


ただ不思議な事に、背中からばっさり斬られた背中の傷が完全に治っており、フロルから贈られた聖騎士鎧にも傷らしい傷は見当たらなかった。


「…………女神さま、

ありがとうございます………………。」


ただ、これは女神(ノネミア)さまから(たまわ)った奇跡だった、ということはなんとなく理解出来たので、私はブローチに手を当てながら心より感謝の意を口にした。


「…………!」


少し落ち着いたからだろうか、改めて周囲を見回してみると、遠くに街の門らしきものが見えた。


どう見ても帝都どころか、見に覚えのない城郭(じょうかく)である。


日も暮れかかっている。

旅慣れない身に夜の行脚は危険極まりないだろう。


他に選択肢がなかった私は、マジックバッグに手を入れて鎧と胸当てを入れ換えると、その街に入るべく歩み始めた。


ものの十数分で街の入口まで辿り着く。


流石に帝都には及ばないものの、この街はそれなりに栄えていそうな小都市、という印象を受けた。


……とは言うものの、私は帝都以外を知らないが。


「おっ、お姉さん、冒険者かい?

ギルドカードの提示か入街税を頼めるかな?」


気さくそうな衛兵に声を掛けられる。


「すまない……。一応冒険者希望なのだが、

生憎(あいにく)まだ未登録の身なもので、

その、入街税を納めればいいか? 幾らだ?」


一応、フロルからの体験談で冒険者に関する最低限の知識は聞きかじっていたので、流れに乗って返答する。


「銀貨5枚だな。あとここに記帳も頼む。

冒険者未登録だと立ち入り出来ない区画も多いから

可能ならこの街の冒険者ギルドで

冒険者登録しちまったほうがいいぞ。」


「わかった。そうしよう。

丁寧にどうもありがとう。」


母方の姓で記帳しながら衛兵にお礼を伝える。


そして入街簿を確認した衛兵が満面の笑みで締めた。


「よし、これでOKだ。

()()()()()()の街にようこそ! アリサさん!!」




……キャスティア?


うん、聞いた事のない名前だ。


ラスティア国内の都市名なら大体網羅しているのだが、私が知らない名前の都市となると、、、


恐らくここはもう神聖ラスティア帝国外なのであろう。


皇宮を出奔した皇族の身からすると、国外へと脱出出来ていたことは僥倖(ぎょうこう)この上ない。


取り敢えずはどこか手頃な宿を確保して、明朝にでも冒険者ギルドへと(おもむ)いてみるとするか。


「……必ず、"運命"を、この手で…………!」


私は届かないと知りながら、輝き始めた一番星に手を伸ばしそれを(つか)む仕草を取ってみる。


「……ふふっ」


何故だか自分でも全く判らないが、それが妙に可笑(おか)しくて1人笑ってしまった。


「よし。まずは宿探しだな。」




―――こうして、私の旅が始まったのだ。




=========第2章・第1節 了=========


アリサ:聖騎士(パラディン)

種族:人間種(ヒューマン)

レベル 10

筋力 A-

器用度 E-

知力 D+

魔力 D

精神力 A-

体力 A

敏捷性 E

スキル:剣術マスタリー♾・盾術1・神聖術1

聖剣術1・体力上昇2

技スキル:強撃(ラッシュ)1・パリィ1・シールドバッシュ1

装備:聖剣ソウルオブナイト・聖騎士鎧・聖騎士の大盾

白百合のブローチ(ミスリル)

最後はいきなりノネミアさまの力で

ルーンネリア王国のキャスティアの街に飛ばされたありちゃんですが、

皆さんこの街の名前を覚えておいででしょうか?

1章前半の舞台になった、セイヤくんたちが住むユボーラ村に1番近い街です。

ここにありちゃんがたどり着いたのは偶然なのか、それとも必然なのか……!?


て言うか、アルクスフォン兄さまですけど、

最初はこんな嫌な奴になる予定じゃなかったんですよね…………。

なんか、書けば書くほど勝手に動き出して、

遂に勇者を剥奪されちゃいました……w

彼がこれからどうなって行くのか

作者自身も楽しみではありますけどね。

(この先ほんとなんにも考えてない笑)


さて、何日かお休み頂いてから

第2節の執筆に取り掛かろうと思っています。

もしよろしければ、誰でも書ける感想や、アカウントお持ちの方はブックマークとかいただけたらとても励みになります。

それでは、また次回でお会いしましょう。


(2026/06/07)

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