第10話▷精一杯の先へ 目一杯の未完成で
2章になって筆が乗ってるのか、
割と更新頻度高めでお送りいたしております。
高級スキルポーションを飲み干し、消費したスキルポイントを完全回復させたアルクスフォン兄さまがふたたび神剣ソムレインを構えた。
「さて、アリサ。
第2ラウンドと行こうか。
手足を折ってでも僕が皇宮に連れて帰るからね。」
愉快そうに笑うアルクスフォン兄さまが、再びソムレインを振りかざし始める。
その姿を私は絶望的な気持ちで見ていた。
―――私は、兄さまの思い通りに
なるしかないのか……。
心が折れそうになる。
「アハハッ! んじゃ行くよアリサっ!!
【ブレイブストライク】ぅぅ!!」
兄さまはそんな私に容赦なく次々と光弾を放ち続ける。
何発かを身体に喰らいながらも、それ以外の幾つかを大盾で逸らし続ける。
絶望の中で、自問自答しながら。
―――もう"勝負"はとっくについているというのに、
私は何を悪足掻きしているのだろう。
そう思いながらも勇者の猛攻を再び凌ぎ続ける。
「クハハハハッッ!!
そろそろ諦めて一緒に帰ろうアリサッッ!!」
何故、まだ私は足掻いているのか。
そんなの、答えは簡単だ。
まだ、私は無意識に
心の奥底では諦めていないからだ。
そして、私の意志や人格を全く無視して私を連れ帰ろうとしている兄さまに我慢ならないからだ!
どうせ勝てないまでも、精一杯足掻いて、足掻いて足掻いて、負けたとしても私は兄さまの思い通りにならないということをここで示さなければならない。
私は私のために、私にとっての"運命"を探しに行きたい。
これは譲れない。絶対に譲れない。
この"誇り"の為なら、
たとえ死んだって構わない!!
私に再び闘志がみなぎってきた。
「――!? なんだアリサ。
その反抗的な目は。もうお前には打つ手も
残されてないというのに。」
兄さまが攻撃の手を止めて、訝しげに尋ねてきた。
「……私は、兄さまに勝てなくても、負けない。
この気持ちだけは負けない。
この気持ちだけは、例え死んだって譲れない!」
虚勢かもしれない。
それでも、私はアルクスフォン兄さまを睨みつけた。
そんな私の言葉を聞いた兄さまは、真顔になって何秒か固まったあとに、また満面の笑みを浮かべ始めた。
「そうか。そうか、そうかそうか。
僕としてもこのまま可愛い可愛い妹を
いたぶり続けるのは本意ではないんだけどね。
でも、何よりその反抗的な態度をしっかりと
是正しなくちゃ、ただ連れ帰っても
意味なんかないよね……。」
予想通り、会話が成立していない。
兄さまの頭の中に、私の気持ちなんてものは存在していない。
「だからこうしよう。
僕は今まで通りアリサを攻め続けるけど、
この僕の手持ちのスキルポーションが尽きるまで
一撃でもこの僕に攻撃を当てることが出来たら、
アリサを皇宮に連れ帰ることを諦めるよ。」
兄さまは譲歩したように私に思わせて、本気で私の心を折るつもりらしい。
今までの展開を見ていれば、そのような事が起こりうるはずがない。
兄さまはそう思ったのだろう。
残念ながら、私だってそうかもしれないと思った。
しかし―――――
「……兄上、言質は取りましたからね。」
私はソウルオブナイトを握る手に力をこめた。
体力ならまだ残っている。鍛え方が違う。
大事なのは。肝心なのは、
折れない心だ!
「…………どうせ無駄だとあとで思い知ることに
なると思うけどね。」
兄さまがまたもソムレインを構え始めた。
再び私の背中を汗が伝った。
今まで防戦一方だったが、
なんとか攻勢に出る。出てみせる。
やる。やるしかない。
やってやるしかない。
まだ兄さまが油断しきっている今が好機だ。
覚悟を決めろアリサ!
未完成でも目一杯のすべてを、
兄さまに叩き込んでやる!!
「ほら、行くよ。」
兄さまが次々と光弾を私に放ち始めた。
もう回避は一切考えない。
(出来る。私なら出来る。自分を信じろ!)
これまでと同じように、縮地のステップを踏む。
しかしそれは
兄さまからの攻撃を避けるためではない。
兄さまに向かっていくためのステップだ。
【ソニックスラッシュ】と違って【ブレイブストライク】は同じ遠距離攻撃でも衝撃波ではない。光弾だ。
つまり、攻撃力はあっても、衝撃はない。
私の前進のベクトルの妨げにはならない!
「なッ? 前に、だと?」
縮地ステップは一瞬で約5mの距離を移動できる。
この時点は私はまだなんのスキルも行使していない。
そして【ブレイブストライク】の光弾が私に直撃しようとしているその時―――――
「【シールドバッシュ】ッッ!!」
盾技スキルレベル1の【シールドバッシュ】。
なんの事はない。単なる盾による打撃技だ。
しかし『盾』という防御に使う装備で『攻撃』出来る技だ。
『攻撃』ということは『攻撃判定』が存在する。
つまりは、同じ攻撃スキルである【ブレイブストライク】の威力を、多少なりとも相殺出来るのである。
「な、なんだと!?」
3発の光弾をシールドバッシュで受け止める。
勿論そのダメージは完全に相殺出来ず、盾にも私自身にもダメージが発生する。
しかしながら【ブレイブストライク】は私の前進のベクトルを妨げない。
そして 【シールドバッシュ】にも縮地ステップと同様に、前方への推進力が発生する。
距離は縮地ステップと同程度。
約5m前後か。
おまけに【シールドバッシュ】は武器を用いない、防具による攻撃だ。
リーチなどほぼないに等しい。
しかしながら、防具での行動だからだろうか。
はたまたリーチ皆無の近接技だからだろうか。
どういう理屈かは解らないが、クールタイムが発生しないのだ。
硬直時間のない私はここで、再び縮地ステップを発動する。
「…………ッッ!!??」
兄さまはまだ【ブレイブストライク】のクールタイムで動けない。
距離を取られていたから為す術がなかっただけで、私はそのスキル技に、3発放つごとにクールタイムが発生するのを既に見抜いている。
更に5m進んだところで私は次のスキルを発動させる。
「…………【強撃】!!!!」
剣術スキル技レベル1の、攻撃力1.5倍ダメージを与える突進技だ。
このスキル技にはクールタイムが発生するものの、発動してしまえば強化された剣撃が前方へ放たれる。
「なんだと? ここで【強撃】だと?」
【強撃】の前方への推進力は約10m強。
しかもしっかりと『攻撃判定』が乗ったままでだ!!
近くて遠かった兄さまとの距離がついにゼロになる!
兄さまも私を軽く見ていたのだろう。
武器こそ、神剣ソムレインを携えては来たが、
防具のほうは多少豪華な程度の軍服しか纏っていなかったのだからな!
ドガァァァン!!
「うぐうっっぅ!!!!」
派手なエフェクトが、私の【強撃】が兄さまに急所攻撃で入ったことを教えてくれた。
ドゴッッ
私の攻撃の直撃を受けた兄さまは吹っ飛ばされ、街道の傍らにあった大岩に激突した。
「……ハァ、ハァ…………」
これが私に今出来る、精一杯の攻撃だ。
「では、約束通り私は旅を続けさせて頂きます。」
私はソウルオブナイトを鞘に収めると、アルクスフォン兄さまにそう告げて彼に背を向けた。
スキルによる理詰めの戦いになりましたが、
元々のポテンシャルの高さに加えて、
日々の弛まぬ鍛錬を続けたありちゃんだからこそ
実現出来た戦術だったと思います。
このバトルの流れを思いついた時は
我ながらちょっと興奮してしまいました(自己満足)
ちなみに
タイトルはシャニマスから来てます(くそわろ)
(2026/06/04)




