第6話▷Fate or Destiny
なんだか王道ヒロイックファンタジー味が
してきた気がします(わいだけ?)
目を醒ますと、見慣れた天井だった。
どうやら知らないうちに眠ってしまっていたようだ。
「……………………。」
窓の外を見ると、日が傾いていた。
私の寝ている間にシーツも交換されており、私自身もしっかりと寝巻きに着替えさせて貰っていた。
フロルが眠っている私が目を覚まさないようにと気を遣ってくれたのだろうとは思うのだが、実際まったくそれに気付かず眠り続けていたようだ。
いったい、フロルのメイドスキルはどれ程の高レベルなのだろうと思わずにはいられなかった。
彼女にはしっかりと感謝を告げねばなるまい。
「…………………………。」
私は再び窓の外を見た。
こうして無作為に1日を過ごしてしまった記憶が今まで無かったため、なんとも形容しがたい罪悪感と喪失感を感じる。
自然と、涙が零れた。
もう、今の私の情緒はめちゃくちゃだ。
冷静に客観的に考えると、実際問題私の周辺は何の変化もしていないのだろう。
しかしながら、換えの効かない、二度と取り戻す事が出来ない大事で大切なものを永遠に失った心境と言わざるを得ない。
そして、
なによりも目覚めた私を打ちのめしたのは―――
午睡とはいえ、まとまった睡眠から目覚めた私は、
いつもの夢を見ていなかった、という事だ。
どんな夢だったかを記憶出来ないので、実際いつもの夢を見たのかどうか、記憶的にはいつもと何も変わらない。
しかし、いつもの幸福に満ちた余韻が欠片もなかった。
私が勝手に"運命の人"と思い込んだセシル王子の生死がそれに関与しているかどうかはまったくわからない。
それでも、私に根本的に欠けているなにかとは無関係ではないのだろう……。
その、私に決定的に欠けていたものとは、セシル王子の存在だった。
だからなのだろう。何故かもうそれで全て説明がいくような気がしてならない。
いやもう、自分でも何が言いたいのか、どうしたいのかまったくもってわからない。
「…………もうどうでもいい。」
日々抱いていた喪失感や焦燥感が、絶望感へと変わった気がして、大袈裟な表現ではなく私はもう生きていく意志がなくなりかけていたのかもしれない。
コンコン
その時、私の自室の扉がノックされた。
恐らくフロルだろう。
色々と面倒と手間と心配をかけてしまったのだ。
詫びとお礼を伝えなければならない。
「入れ。」
慌てて涙を拭い、意識して声を整えて手短に返答する。
「失礼します。」
扉が開かれて入室してきた侍女は、フロルではなかった。
入室してきた侍女、システィナが丁寧に扉を開き、そしてその傍らに畏まった。
そしてそれに続いて、システィナの主人が私の部屋へと入室してきた。
「―――――ち、父上……!」
私の父である、カルマイン皇帝陛下が私の部屋の中に歩みを進めると、ベッドの横にあった椅子に腰を掛けた。
「……どうだ? 気分はまだ芳しくないか?」
いつもの凛とした低く通る声は、私を労る慈愛に満ちているような気がした。
そしてその背後で、システィナが私たちに一礼して退室したのが見えた。
「……えっと、はい。もう、心配、ないです。」
シーツを握る手が、勝手に力んだ。
自分の身体が微かにそして小刻みに震えているのが自分でも解った。
「………………馬鹿者。」
「………………!!??」
父上が私の頭を両腕で胸に抱き寄せた。
「ここにはお前と私しかいない。
皇帝と皇女ではなく今の私たちは父親と娘だ。」
私を抱く父上の手に少しだけ力がこもった。
「…………ふ、ふええぇ。ちちうえぇ……。」
父上の前で情けない姿を見せる訳にはいかない、と、必死に堪えていたものが一気に瓦解していく。
涙が自分の意志から離れ、次から次へとあふれ流れ出てくる。
私も泣きながら父上に抱きついた。
「……お前はサクラの血を引いている。恐らくだが
母の能力を多少なりともお前は受け継いでおる。
故に感じ取ったのだろう?
セシル王子の名に自分の運命を。」
母上にも内容を忘れる夢や、名前を聞いただけで運命を感じたりなど、およそ真面と思えぬ感覚を味わっていたのだろうか。
正直、初耳だった。
「サクラはタカマガの巫女だったからな。
お前に良くわからないものを背負わせたくないと
あやつはお前に黙っておったようだな……。
だが、私はサクラに誓ったのだ。
絶対にお前を、私たちのたった一人の娘、
アリサを幸せにすると。
だから私の話を聞いて欲しいのだ。」
父上の身体が私から優しく、そしてゆっくりと離れた。
「余、、私はな、妻を、シルヴィアーナを
愛しておる。この世で一番だと思っておる。
恥ずかしい話ではあるが、運命だと思っておる。
……しかし、、、」
父上が気恥しそうに、私から目を逸らした。
「……お前の母、サクラも、
私にとっては、運命の人だったのだ。
妻はシルヴィアーナただひとり、
と決めていた私が娶りたいと思ったほどに。」
「ち、父上と、母上が、運命……?」
「あぁ。そうだ。まぁ、むしろサクラのほうが
先に私を"運命の人"と言い出しおってな!
まったくあの時を今思い出しても、、、」
そこで父上は言葉をためて、窓から遠くを懐かしむかのように眺めた。
「サクラはな、、、祖国から落ち延びるときに、
ルーンネリアとラスティア。
選択肢が2つあったと申しておった。
あやつがラスティアを亡命先に選んだのは
皇帝の名を聞いて運命を感じたそうだ。」
「え!母上も名前だけで?」
「うむ。そして実際私を目の当たりにした時に
私との運命を確信したそうだ…………。」
私の、母上も、私と同じように……。
自分の心が じんわり と暖かくなった気がした。
「……それからはとんとん拍子で
話が進んでな……。
私は妻はひとりと決めていたのだが、
皇后になったばかりのシルヴィアーナも
たった1人の皇妃として世継ぎを産まなければ!
という重圧から解放されたかったのだろうな、
私がサクラを第2皇妃として迎えるよう
強く勧めてきおってな……。」
義母上は気さくで人当たりの良い太陽みたいな方だものな。
父上も含めて、私も母上も義母上に救われてきたとしか思えない。
「…………ゴホン!
すまぬ。話が逸れた。」
父上が少し緩んだお顔を引き締め直して、私に向き直った。
「いいか、アリサ。
お前はセシル王子に運命を感じたのだろう。
そしてその運命が成就出来ぬことを悟り、
こうして傷ついておるのだろう。
しかしよく聞け。
私は運命の人、シルヴィアーナと結ばれた。
そして、もう1人の運命の人、
お前の母、サクラとも結ばれたのだ!
運命の人は、1人とは限らないのだ!」
「……!!!!」
私は父上の透き通った瞳を見つめ返した。
父の、優しさと気配り心配りに、ふたたび涙があふれた。
そう簡単に運命の人になぞ、出逢えるとは思えない。
ここまで心を動かされる事が、またあるとは今はとても思えない。
もしかしたら父上も本当は母上と義母上、どちらかにしか運命を感じてなかったのかもしれない。
私にとってはセシル王子以外、運命の人がいないかもしれない。
しかし、そんなことは些末な問題に過ぎなかった。
「…………ちちうえぇ」
私は泣きじゃくりながら父上を抱き締める。
父上も私を抱き締め返して、頭を優しく撫でてくれる。
私にとって唯一血を分けた肉親、神聖ラスティア帝国の大帝カルマインが、
全力の慈愛と親愛で私を慈しんでくれているというこの幸福こそ、
まさに"至高にして最上の運命"と言わざるを得ないのではないだろうか。
「今は、好きなだけ泣け。
しかしな、私はお前を愛しておる。
それを忘れるな。」
凛としてそして暖かい、父上の言葉が耳にすべり込んでくる。
「……はい。
私も、父上を愛しております。
父上の娘として生まれてきて、
アリサは幸せでございます……。」
私が心の底からの本心で父上に返答すると、父上はいつもの凛々しいお顔からは想像も付かないほどに、くしゃっと顔を崩して満面の笑みで私を再び抱き締めてくれた。
3人をローテで回してた1章と違って
2章は主人公はありちゃんのみなので
正直むちゃくちゃ書きやすいですね笑
話が変わるたびの頭切り替えもしなくていいし
(それは読み手の皆さんにも同じこと言えるでしょうね……)
次の話もありちゃんだから、好きなとこでお話を切れるしw
さてさて。
だいぶ旅立ちが近付いて参りました。
頑張って続きを書くので
皆さまこれからもどうか
よろしくお願い致します(∩´﹏`∩)
(2026/05/24)




