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第4話▷始まる前から終わっていた話

4話目に入って

少しずつ、ホント少しずーつ

物語が進み始めてきた気がしますw

ルーンネリア王国―――


この大陸において、北部に覇を称えるラスティア(わが国)に比肩する、南部に位置する大国である。


ラスティアとルーンネリアの間にはエルフたちが住まうという大森林が緩衝地帯の役割を果たし、直接国境が隣接している訳ではないが、互いの軍事的影響力からして、共に無視出来ない歴史的背景がある。


とは言え、現実的に干渉しうる距離ではないため、特段敵対関係ではなく、相互不可侵という名の無関心に近い関係だったように思える。




「る、ルーンネリアの、、、


せ、セシル……王子………………?」




思わずその名を口に出していた。


正直な話、そのような遠方の国など私はまったく興味を持っておらず、ましてや王族の名前など知ろうと思いもしなかった。


当然、私はその名を知る(よし)もなかった。


今しがた皇后陛下(ははうえ)(おっしゃ)った話によると、類を見ない美しさでこの上なく聡明だという事であるが、、、


私からすれば、まったく興味がない。


いくら美しかろうと賢かろうと、そのような何処の誰とも判らぬ男性の元に何故嫁がねばならないのか。


ましてや大陸南部など遠方も遠方。

美しく強大な帝国(ラスティア)を遠く離れて僻地(へきち)へと(おもむ)くなど、(はなは)御免被(ごめんこうむ)りたい。


乱暴な言い方になるが、有り得ない。


いや、そもそもの話、私には、


本気でまったく興味がない。




―――――しかし、、、




しかし、何故なのだ。


何故、その名を耳にしただけで、


このように、

かようなほど、


この身は震えるのだろうか……!!!!




「……? どうしたの?アリサ。

あなた、顔が真っ赤よ?」


「―――!!??」


ジュリエス姉さまが私の顔を(はす)向かいの席から覗き込んだ。


「……い、いえ。な、なんでもありませ…………ん。」


そう。

なんでもない。

まったく(もっ)て、なんでもない。


しかし、

しかしながら、何故なのだ。


まったく知りもしない男性の名前を聞いただけで、


何故、私の胸は、

こんなにも高鳴っているのだろうか…………!!




「確かに、我が国ラスティアとルーンネリアに

強い結びつきが実現すれば、この大陸において、

ひいては我が帝国においてもこの上ない

恩恵と安寧そして秩序が形成されそうですな!」


「…………!!!???」


今度は向かいの席のエリオネア兄さまが、頬を紅潮させながら熱く語り出した。


だからどうして兄さまも姉さまも当人の意向を(ないがし)ろにするのだ?


今しがた、かような話を聞いた私はもとより、そのルーンネリアの王子殿下にとってもいい迷惑ではないだろうか。


その殿下のように聡明で美しい殿方であれば、なにも私のような髪も瞳も真っ黒な魔族のごとき風貌(ふうぼう)の女なぞ(めと)らずも良さそうなものだが………………。




「……いや! 僕は反対だ!!

まったく母上もエリオネアも

さっきからいったい何を言ってるのだ!!

アリサに縁談はまだ早い!!!

いや、早いというより必要ない!!!!

我がラスティアには、アリサが必要なのだ!

アリサの美貌を、アリサの武勇を、

我が国の現人女神(あらびとがみ)として(たてまつ)り美と力の象徴として、

神聖ラスティア帝国はまとまっていくべきなのだ!」


「…………………………。」


私の左隣のアルクスフォン兄さまが立ち上がり、猛烈な剣幕で力説した。


発言している内容はまったくもって理解出来ないが、一先(ひとま)ず私の縁談に待ったをかけてくれるのは正直助かる…………。




「…………アルクスフォン、座れ。」




皇帝陛下(ちちうえ)の低く穏やかな、それでいて威厳に満ち圧のかかったひと声が、天覧の間に響いた。




「―――~~~。申し訳御座いません。」


アルクスフォン兄さまは、はっと我に返り(こうべ)を垂れると腰を下ろした。




しん、と部屋の空気が引き締まった気がした。




「………………ルーンネリアのセシル王子か。

余の耳にも届いておる。

国王が(へいみん)に産ませた、

言うならば妾腹の子ながら、

有史を(かえり)みても(まれ)に見る傑物(けつぶつ)だとな。」


……流石は皇帝直属の諜報員なのだろう。

陛下(ちちうえ)はきっとこの場の誰よりもその王子殿下の情報に詳しいであろうことを確信した。


「なんでも、男子ながら美の女神エルフィナをも

彷彿(ほうふつ)とさせる(うるわ)しい容貌で、

誰も解き得なかった魔術書を解読し、

数千年前の古代魔術を会得しているとか。

その力で天候をも変えうる能力を身に秘めておる、

と、余は聞いておる。

また相当な人格者で思慮遠望を備え、

余が見るに、王位継承順位をものともせず、

セシル王子が次期国王となるのが、

自然かつ必然であった、であろうな。」




―――――――――は?




一体それは、人間なのか?

神か何かの間違いではないのか??


その様な人物がこの世に存在するとは到底思えない。


しかしながら、陛下(ちちうえ)の情報収集能力を(かんが)みるに、恐らくそれは事実なのであろう……。


いや。待って欲しい。


そこまでの傑物ならば、私ごときを(めと)るのはどう考えても釣り合いが取れないのではないだろうか……!!


そもそも私自身、大した風貌も愛想もないつまらぬ女だと思ってはいるが、それでも帝国第二皇女という肩書きが多少なりとも自身の価値を高めているのかもしれない、が……、、、


それを踏まえた上でも、いくら考えても私ごときがセシル王子のお相手とは(おそ)れ多いという気持ちしか湧いてこない。


そう頭では否定ばかり浮かんでいながら、

何故だろう。

自分でもまったく理解(わか)らない、が…………、


私はまだ見ぬセシル王子に、

想いを()せ始めていた―――――




「………………だからこそ、惜しむらくは、、、」




かなり間を置いた後ではあったが、

陛下(ちちうえ)が言葉を繋げた。




「そこまでの逸材、王国にとっては、

不世出の傑物、セシル王子が、

つい先日、身罷(みまか)られた、というのは

まったくもって耐え難い悲劇であった、としか

言い様がない。

同じ父親として、ルーンネリア国王には

心底同情せざるを得ん…………。」




―――――――――――は?




身罷(みまか)られた……?


と、いう事は、、、


せ、セシル王子は、、、、


もう既に、この世から旅立ってしまっている、、、


と、いう事だろうか―――――………………。




「……! アリサ? あなた、顔が真っ青よ?」


(はす)向かいのジュリエス姉さまが私の異変に気付いたようだ。


しかし私は気遣ってくれた姉さまに言葉を返す余裕はなく、静かに席を立った。




「……父上、母上、並びに兄上姉上……

申し訳ありません。

少々気分がすぐれないもので、

失礼させて頂きます。」




私を愛してくれている皇族(かぞく)が色々と声をかけてくれていたようだったが、それがまったく耳に入らなかった私は覚束(おぼつか)ない足取りでフロルに身を預けながら、天覧の間を退出した。

最初のプロットではこの2章は

なんの見せ場も盛り上がりもない

つまらない展開なはずだったんですけど、

さすがはありちゃん!

のっけから作者も制御し切れないくらい

好き勝手に暴れてくれてます笑


この先どうなるのか実は

作者本人も楽しみだったりします(わりとガチで)


(2026/05/19)

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