第45話◆太陽と月が重なるとき
ボス戦でも大活躍だったアイちゃん視点です。
1章ももうすぐ終わると思います。
残りわずかではありますが
雑に書き急がずにじっくりと執筆して行きたいと思ってます。
てなわけで、
佳境に入ってきてチョイと長いです。
いてて……
たぶんアタシも骨が何本か逝ってると思う。
殲滅形態に移行して超攻撃的になった権天使の拳を正面からまともにくらっちゃったもんな。
それでぶっ飛ばされて身体ごと壁に激突したっぽいけど、もうそん時は意識なかったもんな。
ナーシュの介抱がなかったらホントどうなってたかわかんないや。
「【完全治癒】」
いちばん後回しにしていた自分自身への回復魔法をほどこす。
「……やっぱりね」
体力が完全に回復したことで、アタシが使えるスキルは通常のスキルレベルのものだけに戻っていた。
回復魔法は【上級治癒】が上限だし、防御魔法も【防護壁】くらいまでしか唱えられない。
土壇場でみんなを救った【絶対領域】とか【完全治癒】はもう使用可能スキル一覧には見当たらなかった。
「……ねぇ、アイちゃん。
やっぱりお日さまの髪どめのおかげだよね?」
「うん。アタシもそう思うわ。」
アタシの左前髪を留めている、お日さまみたいな髪飾りに優しく触れながら、ユミィが話しかけてきた。
この髪留めに秘められた特別な力は、アタシが瀕死(たぶん体力残り20%くらい?)状態でピンチになった時に発動して、アタシやパーティーのみんなの使用可能スキルが何レベルか上のものまで使うことが出来るようになるんじゃないかって仮説を立てていた。
ほんで実際死にかけて、ナーシュのおかげで意識を取り戻した時にその力が発動した。
そのスペシャルパワーの恩恵でアタシは【完全治癒】や【絶対領域】のような高位の神聖術を使うことが出来たし、ユミィたちも【コメティックシュート】【ミリオンスラスト・ブースト】【地擦り斬月】とかの高威力の技を放つ事が出来た。
一発逆転を狙うならこれ以上ない力だけど、一歩間違ったらダメージをもらいすぎて発動前に死んでしまうかもしれない。
そしてパーティーのヒーラーであるアタシの脱落は、そのままパーティー全員の破滅も意味する。
「うーーん」
結果オーライだったけど、そうホイホイと狙って発動は出来ないよねぇ―――
―――なーんて考えてた、その時、、、
1匹のコウモリがヨロヨロと飛んできて、ユミィの右肩にとまった。
「わっ」
ユミィが一瞬びっくりした声を上げたけど、すぐにめっちゃ笑顔になった。
「いやあ、お前らすごいな。
下級1位とは言え、権天使に
勝てるとはな!!」
「クリストフさん! よかった!! 生きてた!!!」
「なぁに、不覚を取ってしまったが、
あの程度の神聖術では私を仕留めるまでには
至らぬよ。」
あご下をユミィなでられながらクリストフさんが「えへん!」とコウモリ姿の胸を張った。
あ、そうだ。
アタシは立ち上がって女王の間の玉座を見た。
「やっぱり……」
ボスの権天使はしっかりと宝箱をドロップしていた。
「お宝! お宝! 何が入ってるかしら!!」
「依頼の護符が入ってるといいのですが…」
レイトもナーシュも期待に目を輝かせてた。
「よし。疲れてるとこ悪いがユミィ、
解錠頼めるか?」
「ん。りょ。まかせてっ!」
申し訳なさそうなセイヤの言葉にユミィが笑顔で頷いた。
そんなユミィの横にレイトがついていく。
「ユミィ、無理しちゃダメよ? 慎重にね?」
「ふふっ。もう大丈夫だからっ♪」
前にテレポーターで飛ばされたこともあるから心配なんだろうな。
それにあんな激戦のあとだし、少しほっと油断しちゃう気持ちとかアタシだったらあるかもしんないし、あんなふうに適度な緊張を持つのは大事なんだろうな―――「ん。あいた。」
って思ってる間に難なくユミィが宝箱の罠を解除してた。
「はやっ!」
「なんか毒ガスが出てくる罠だったっぽいけど、
わりと単純な仕掛けだったし。んと、それより
リーダー、中身検分よろっ☆」
ぴょん!とユミィが飛び退いてセイヤに道をゆずった。
「ん。サンキュ。さすがだなユミィ。」
「えへへ♪」
セイヤがユミィの頭をなでながら(うらやましい!)、宝箱を覗き込んだ。
「……と、まずは……
ポーションかこれ。中身黒いな。」
「それは!!!!」
セイヤが最初に取り出した、中身が真っ黒な液体のポーションを見て、コウモリ姿のクリストフさんが真っ先に反応した。
「ブラッドポーションではないか!!
そいつは闇属性の回復薬でな! それがあれば
私も全快することが出来る!!!」
言いながらちこちことコウモリがセイヤのまわりを飛び回ったw
「なるほどな。普通の人間にゃ意味なさそうだし、
これはクリストフさん使ってくれ。」
「感謝する!!!」
瓶が持てないコウモリ姿のクリストフさんの代わりにユミィがそれを受け取っていた。
「―――次は…………
お! これじゃねぇか? 依頼の護符!!」
セイヤが取り出したそれは―――
「あ、ちょっとアタシに見せて「あ、おう…」
セイヤから受け取ったその護符―――
「うん。間違いない。」
真ん中に大きく描かれた六芒星。
その下に書いてあるウェローク語。
『刃には刃を。炎には炎を。』
経典にも載ってる、報復の真言。
まぎれもなくこれは、今回の探索の目的のものだ。
「話に聞いてた通りちゃんとボスがドロップしたね。
これがボルさんからの依頼の品、
【呪い返しの護符】だよ!」
アタシの言葉にみんなの顔が ぱぁっ と明るくなった。
「やった!ちくしょう! 苦労した甲斐があったぜ!」
「うんうん!! よかった! ほんとによかった!!」
「これ結構高難度クエストだったわよね!?
私たちまで混ぜてもらえて本当に感謝だわ!」
「なかなか生きた心地がしなかったけど、
取り敢えず成功に終わりそうだね。」
「フハハッ! お前らにしては頑張ったんじゃないか?」
うん。アタシも含めてみんな心の底からほっとした顔しながら顔を明るくしていた。
だよねだよね!
あんなめちゃ強なボス天使とかもっかい戦えって言われたら「ごめんなさい」って言いたくなるもん。
もしかしたら確定ドロップだったのかもしんないけど、ゲット出来たという事実は素直に「ラッキー!」って感じするよねっ☆
その他は普通のポーションとか消費アイテムとか金貨とか銀貨とか(けっこうあった)を【黒曜の剣】と【明光の夜】で山分けした。
人数的にクリストフさんは【明光の夜】に頭数だけ入ってもらって、向こうでさらに3分の1を受け取る計算で普通に納得してくれてた。
そして―――――
「やっぱりあった「私のメダリオンね!!!」
宝箱の底からセイヤが最後に丁寧に取り出したそれをレイトが強引に奪ったw
「あっははっ!! これでナーシュとお揃いねっ♪」
そう言いながら満面の笑顔でレイトは黄金に輝くメダリオンを首にかけた。
白銀のメダリオンの時とは違って、今度はバチン!とはじかれずに、ストンとレイトの首元におさまった。
最初から、そこにあるのが当たり前みたいな感じで。
「装備出来たね! 良かったねっ♪」
「ふふふふふっ!! ありがとうユミィ!!!」
レイトがユミィのお祝いの言葉にうなずいた。
黄金色に輝くゴールドメダリオンを胸元にキラキラさせながら。
「やはり、それはメンバーにレイトがいたから
確定ドロップしたのだろうな。
フム。懐かしい……。レインもかつて
そのメダルを首から下げて、そこの王座に
ふんぞり返っておったな………………。」
ブラッドポーションでコウモリ姿から回復したクリストフさんが紳士の装いで懐かしそうに王座を見ていた。
「ねぇねぇ! 1000年前の女王サマと大神官サマは
どんな風にそこにいたの??
レイトとナーシュもそんな感じで立ってみてよ!」
なんかアタシも興奮しちゃって、クリストフさんやレイトたちに聞いてみる。
「―――フム。そうだな……。
女王が王座にまっすぐ座り、大神官が向かって
右後ろに控えて右手を女王の左肩に置いて―――」
「えっとえっと!こうかしら!?」
「レイトはもっと背筋を伸ばせ!
ナーシュも胸を張りつつ顎を引け!」
「フフッ、なんか照れるね……。」
それは。
その2人の姿はまるで。
1000年前の女王と大神官が、
そのままそこによみがえったかのような。
豪華で神聖な絵画のような。
誰にも侵せないとしか思えない
凛としたたたずまいで。
神々しく、ただそこに2人は並んでいた。
1000年の時を超えて。
初めからそれが当たり前のように―――
「なんだろ。なんか、感動しちゃう。」
「そうだな。言葉が出てこねぇや。」
ユミィもセイヤもただただ2人に見とれていた。
「うん。上手く言えないけどさ、素敵すぎ。」
アタシもまるで歴史の生き証人になったかのような、ふわふわした興奮に包まれていた。
クリストフさんなんて、声を出さずに泣いてるし。
そんなアタシたちを見て、レイトとナーシュはとても楽しそうに、穏やかなんだけどとても楽しそうに笑ってた。微笑んでた。
「……ナーシュ」
「…………レイト」
そして2人はどちらからともなく見つめ合うと、息をするように自然にお互いのメダリオンを手に取って重ね合わせた。
2人の思いつきかアドリブかもしんないけど、それがとても自然で当たり前な感じだった。
カチン
金色のメダリオンと、銀色のメダリオンが重なって
妙に澄んだ金属音が"女王の間"に響いた。
「……!!!??」
「まっ、まぶしっ!!」
「なっなにこれ!」
「むおっ!!??」
そして次の瞬間、重なったメダリオンからとんでもなくまばゆい光があふれだし、あっという間にこの空間を「白」で埋め尽くす。
……。
…………。
………………。
……………………。
どんくらい時間がたったかわかんない。
数秒だった、と言われたらそんな気もするし、
1時間もたっていた、と言われたらそんな気もする。
はっ と我に返ると、目も開けてらんないくらいのすんごい光はとっくにおさまっていて、レイトもナーシュもさっきと同じように王座とその後ろにたたずんでいた。
「……ねぇ、見て!」
けれどすぐに異変に気づいたユミィが声をあげる。
レイトが持つ金のメダリオンと
ナーシュが持つ銀のメダリオンが重なったまま
一点に向かって光を放っている。
「これは、、、、」
王座の2mくらい前の床に、
真っ白な光線で照らされていたそこに、
魔法陣が出現していた。
「マジか。こいつは、、、
この魔法陣は、帰還用とは別だろうな。」
「そうみたい。王座の後ろにちゃんと
外に出れる用の移動魔法陣がもう出てるもんね。」
セイヤとユミィも椅子の後ろとか確認してた。
いやでも、こんな急に出てきたよくわかんない魔法陣にさ、入る勇気とかなかなか出ないよね……。
確かに女王の黄金のメダリオンと、大神官の白銀のメダリオンの力で出てきたもんだからさ、きっと古代サルアーフ王国のすごいお宝とかの場所につながってるのかもしんないけどさぁ……。
ってーなことをきっとみんな思ってたんじゃないかな。
数秒の間だけど、みんな ぽかん とした顔を見合わせて様子を見てたんだよね。
そしたら―――――
「うわ―――――ッッッ!!!??」
その魔法陣が突然とんでもなく びかっ! って光って、アタシたちはその信じられないくらいまぶしい光にあっと今に飲み込まれた。
そして、おそるおそる目を開けると、、、、
「…………こ、ここ、は……?」
アタシたち6人全員、真っ白な空間に輪になって立っていた。
ほんと周りも辺りも真っ白のしろしろで、どうやってここに立ってるのかわかんないくらい、なんにもない空間だった。
ただ、アタシたちの中心にあるものをのぞいて―――
「…………綺麗。。。」
思わず言葉がもれた。
アタシたちの中心に、真っ白な球体が、あわい光を放ちながら、ふわふわと浮いていた。
「―――――レイン、ナルシュタイン…………。
これが、、、お前たちの言っていた――――」
クリストフさんがただでさえ白い顔をさらに真っ青にしながら、わなわなと震えていた。
「……んと? これ、お宝、だよね…………?
やっぱ、サルアーフ王国の?」
「………………うむ。」
ユミィの問いに子爵サマがこたえる。
「や、やっぱり、これって、私たちのご先祖さま、
女王様とか大神官とか関係してるのよね?」
「どうしよう。このお宝見てると、
なんかすごく懐かしい気持ちになる…………。」
レイトとナーシュも震えていた。
「………………いや。
お宝なんて、生易しいものじゃない。」
凛としたクリストフさんの声が、このなんにもない空間に響いた。
「これは、恐らく、いや間違いなく、、、
【聖宝珠ユグドラシル】だ。
この宝珠に世界樹の力がこめられている。」
は?
クリストフさん、いまなんて言ったの?
「……せ、世界樹って、あの枯れ果てて
砂塵の塔に姿を変えちまった、アレ、だよな?」
セイヤが驚きつつもわりと冷静に疑問をクリストフさんにぶつけてくれた。
「あぁ。あれはもう抜け殻だからな。
二度と世界樹として機能はしないだろう。
だが、この宝珠が世界樹としての権能を
宿している。これがあれば、また別のかたちで
世界樹はよみがえるのだ。」
そして、クリストフさんはレイトとナーシュに向き直った。
「さぁ、2人でこの宝珠を手に取れ。
女王と、大神官を継承したお前らしか
きっと触れることは出来ぬはずだ。」
「…………うん」
「――わかったわ」
ちょっとの戸惑いの時間のあとに、向かい合ってうなずきあったふたりが、その宝珠に手を伸ばした。
「――――――!?」
すると、さっきみたいな強烈な光がまた宝珠から広がって、一瞬でアタシたちを包み込む。
そして、気付くとアタシたちは、"女王の間"に戻っていた。
6人全員で。
レイトが大切そうに抱えた、光の珠にナーシュが両手を添えていた。
ふたりとも笑顔で。
「―――――ハハッ。
領主んとこの息子さん助けるために引き受けた
クエストだったけどよ、なんかとんでもないのが
待ってたよな……。」
「うん。むしろ、
こっちのがメインって感じだよねっ!!」
セイヤとユミィが口を開く。
「ホントそれ! てゆっか、レイトとナーシュで
サルアーフ王国を復興させちゃえるんじゃない??」
「えっ!いやっ!」「それはちょっと……!」
まだ覚悟が固まってないのかな?
アタシの提案も悪くないと思うんだけど、レイトもナーシュもなんかとまどってた。
「でもさ、アレだよね。
これはレイトたちの故郷に見返すどころの
騒ぎじゃないよねw」
「ホントだよね~☆
古代エルフ王国の女王と大神官になっちゃって
聖宝珠まで持って帰ってきちゃうんだもん!」
「……もう。見返すとか、もう忘れてっ!」
アタシとユミィの軽口に、レイトは顔を赤くしてうつむいた。
ほんで、はっ と顔をあげると、クリストフさんに笑顔を向けた。
「ねぇっ! クリストフ! 私たちが帰る時、
あなたも着いてきてよ! 私たちの村に!!
それで、昔の王国の話とか、長老たちにも
お話して欲しいのよ!!
きっとおばあ様たちも喜ぶわ!!!」
レイトは、はじけんばかりの笑顔だった。
アタシは、クリストフさんを見た。
なんて返すのかな? とか、
アタシはそんなことを思ってた。
でも、クリストフさんは、
目を血走らせて、わなわなとふるえていた。
かと思ったら、大声で叫びだした。
「レイトッ! ナーシュ!! 逃げろ!!!
ユミィもアイもセイヤもここから
今すぐにげごはぁッッッ」
でも、言い終わる前に、
クリストフさんは、頭から全身が真っ二つに裂けた。
「くっ、、クリストフさんっっっっ!!!???」
アタシも含めて、
みんながあっけに取られてぼう然としてるなか、
ユミィの絶叫が女王の間に響いた。
左右に泣き別れして倒れる、
クリストフさんの半身と半身。
その真ん中、彼の内部に潜んでいたのか、
黒いもやみたいなかたまり?が、
ぐずぐずとうごめいて宙に浮いていた。
「―――――【聖槍光】ッッッ!!!」
聖職者としてのカンなのか、本能なのか、
その黒い何かに耐えきれないくらいの
憎悪に満ちた悪意を感じたアタシは、
直感で反射的に神聖術を放っていた。
―――ジュン…
しかしそれは、
そいつに届く前に、煙になって消えた。
「……ぐふっふふふふふ…………
ワシには『反聖属性魔法術式』が刻まれとるでなァ」
人のかたちをとりだした、その黒いもやが、
聞き覚えのある下品な笑い声をあげる。
「……まっ、まさかッッッ!!?」
「さ、サンドリアス…………!!??」
「―――倒したはずじゃ………………」
「……ヌッフッフ、、、
ずっと探していた聖宝珠ユグドラシルが
まさか遂に手に入るとはなぁぁぁぁ~~~
褒めてやろう。褒めてやるぞ!
女王に大神官………………!!!」
「おっまぇぇぇぇぇええええええええ!!!!」
「ざっけんなマジ許さねぇ!!!!」
「……女王として、あなただけは絶対に倒すわ。
今度こそ!!!!」
クリストフさんをやられたユミィ、セイヤ、レイトが武器をかまえた。
「………………アンタ、、、
アンタはアタシが女神さまの名のもとに
地獄に送ってあげるからねっっっっっ!!!!」
こんなのガマンできないでしょ!
アタシも頭がどうにかなっちゃいそうな怒りを必死に押し殺して、このサンドリアスに拳をかまえた。
普段なら2回に区切る内容でしたけどね、
なんとなく一気にアイちゃんに駆け抜けてもらいました~
(2026/04/15)




