第44話●聖女っつーよりもう女神だろ
ついに王宮跡のボス
プリンシパリティ戦の決着です。
殲滅形態に移行した権天使の猛攻で、オレたちはまさに全滅寸前だった。
(クッソ……! もう身体が動かねぇ…………っっ!!)
歌声の衝撃波に加えて、強力な羽根の連弾をもろに喰らって床にみっともなく突っ伏してるうちに意識が朦朧としてきやがった。
霞む目を必死に凝らすと、少し離れたところにレイトの足が見えた。
「…………ッッ!!」
レイトが倒れている場所はもっと離れている……。
(……つって、オレも左腕が自分の右側に
落ちてるしな…………。)
ユミィはまだ五体満足そうだったが、この状況じゃみんな似たようなもんだろうな。
ごめん。母ちゃん。
探しに行けんくて、まじでごめん。
オレはガタガタと悪あがきせずに、目を閉じた。
思えば好きに生きてきたけどよ、わりと短い人生だったな。
こんなとこで野垂れ死にとか勘弁って思ったけどよ。
アイやユミィと一緒なら、そこまで悪くはねぇのかもしんねぇな。
諦めとはちと違うけど、悟りに似た心境だったんだろうな。今のオレは。
「―――んぉっ!?」
しかし、閉じて真っ暗になった視界で、自分のまぶたごしに強烈な光がオレの網膜を焼いた。
「……お、奥の手が、、、あるのはっっ
アンタだけなんて、思わないでねっ!!!」
こ、この声は……!!
アイ……!!??
強力にまばゆい光に目を細めながら、恐る恐るまぶたを開ける。
エルフリッチのサンドリアスと戦っていた時と同じように、光があふれていた。
アイの、髪留めから…………!!
「【完全治癒】」
アイの手から放たれた黄金色の光がオレを包み込む。
「……!! 腕が!!」
どういう仕組みかまったくわからねぇが、気付くとオレの左腕が元通りになっていた。
しかもそれだけじゃねぇ。
恐らく内臓も骨も筋組織もボロボロだったであろうオレの身体が、すっかり戦う前の元通りの状態に戻っていた。
「…………あっ、アイちゃん………………!!」
「…………ありがとう。アイ……!」
ユミィとレイトも立ち上がっていた。
オレと同じように2人の身体も回復させてくれたんだろう。
―――クッソ!!!
オレらの聖女、最高かよ!!!!
「サンキュな!アイ!!」
オレも軽くなった身体を起こす。
「……ふ、ふふん。。。
あ、アタシが絶対にみんなを護るんだから……っ。」
よろよろしながらアイがニカッと笑顔を見せた。
『…………脅威復活を確認。再度 殲滅を実行。』
無機質な声と共に、権天使が再び上昇し、翼を広げ始めた。
……クッ!!
やべぇ! いくら回復してもらっても、あの無数の羽根の連弾をまた食らっちまったら、今度こそオレらはヤバいかもしれねぇ……!!
そう、身構えた時だった。
「……い、言ったよね? アタシは絶対に
みんなを護るってさ……。
これ以上はもうみんなにかすり傷すら
付けさせないからっっっっ!!!!
―――【絶対領域】ぉぉっっっ!!!」
凛としたアイの声と共に、オレらは黄金色のバリアに包まれる。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!!!
さっきよりも遥かに激しい羽根の連弾がオレたちを襲った。
しかし、その全ては金色にきらめくバリアに弾かれて、煙になって消えていく。
「みんな!今だよ!! 権天使だって、
もう限界なはずだよっ!!!」
「「「!!!!」」」
アイの声でオレらアタッカーの目と心に光が灯った。
確かに、権天使もやられる寸前までダメージを負って、苦し紛れの殲滅形態を取ったんだろう。
攻撃力や火力こそデタラメな威力だったけどよ、生命力はもう限界なんだろ?
魔力も尽きてるのか、すっかり治療も使えなくなってるもんなぁぁ!!!
「ユミィッッ!! レイトッッ!!!
かますぞ! これで決めるからよ!!!
取っておきのヤツ、出し惜しみなしで
全力で繰り出せッッッッ!!!」
「りょっ! 今使える最高のやつ行くからねっ!!!」
「わかったわセイヤ!! ありったけで行くわ!!!」
既に【集中】を発動しているユミィが、力の限り弓の弦を引き絞り解き放った。
「【コメティックシュート】」
その放たれた矢は【スターライトアロー】のようにバラけた範囲射撃ではなく、力が一極に集中した渾身の彗星だった。
ズガァァァァァァンンン!!!
弓矢の射撃とは思えない衝撃が権天使を襲う。
その強力な一撃が急所攻撃で胸元に入り、天使は墜落し地面に片膝を付く。
そんな天使の前にレイトが立ちはだかった。
彼女が右手に握る白銀のレイピアは、一瞬にして目にも止まらない高速のベクトルを絶え間なく描き始めた。
「【ミリオンスラスト・ブースト】」
その技名のごとく、万に届くのかと思わせる超高速の刺突がすべて権天使に吸い込まれていく。
シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ
何発かに1発はド派手なエフェクトが入ることから、結構な頻度で急所攻撃も出ているんだろう。
その無限とも思える刺突がおさまりつつあるその時。
オレは既に身の丈ほどもある両手剣を下手に構えたまま権天使に迫っていた。
そしてこれ以上ないタイミングでレイトが後方に飛び退く。
「喰らえやぁ!【地擦り斬月】!!」
重量級に大剣を足元からアッパーカットのごとく半円を描く斬撃。
ズ.パン...
右半身と左半身が泣き別れになった権天使は、瞬く間に光の粒子になって霧散した。
「……やった!」
少し離れた場所だったが、オレらの聖女サマが渾身のガッツポーズをキメるのが見えた。
「やったやった! セイヤくんウルトラスーパー
かっこよかったよぉぉぉぉっっ!!!」
ユミィがとんでもない勢いでジャンピングハグをかましてくる。
「アハハッッ!! さすがセイヤ!!!」
なんと! 続いてレイトがオレの首筋に抱きついてきた。
「うん。さすが僕らのリーダーだ。」
ナーシュが穏やかな笑顔でレイトをオレから引っぺがした。
「いやいや、お前らがあってこそだろ!
特にアイ。本当に助かった。」
よろよろと駆け寄ってきたアイの両肩を抱く。
「―――――うっ」
緊張の糸が切れたのか、急に身体が鉛のように重くなりその場にへたり込む。
見ると他のみんなも同じように床に崩れ落ちるように座り込んだ。
肩でゼェゼェ呼吸して、これ以上会話にならない。
「―――――フフッ」
それでも、九死に一生を得た逆転勝利に心は羽根のように軽い。
オレたちはしばらく無言でその勝利の余韻に浸っていた。
バトルは書いててけっこう楽しいです。
一時期と比べてゆっくり書いててごめんなさい。
(2026/04/07)




