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人間と偽って暮らすトラウマ持ちの魔女、番の竜人に拐われましたがそれなりに幸せです  作者: 立花 みどり
第一章

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解毒


 飛んだ先はセドリックに忠誠を誓う部下たちが働く場所にした。反対派がいればどうなるかわからない。部下たちにはエレイン派を牢に入れるよう伝えた。

 リゼはその間、これが証拠だと言って小さな小瓶を渡した。魔族の血が入っていたビンだと言った。


「お願い、私は大丈夫だから今は何も聞かないで。詳細は後でシドに聞いて。時間がないからロイド様と陛下のところに案内して」

「……なんで」

「二人を起こしてあげる」


 ロイドとフレデリックは同じ部屋で横になっていた。毒の侵食を抑えるのには大量の魔力を消費するのが理由だった。陛下もロイドも目を瞑って一見眠っているように見える。顔色は悪い。


 特別なこの部屋には、今はリゼとセドリックしかいない。

 眠っているフレデリックを見て、あまり似ていないなと思った。セドリックを見るとそれだけで愛おしさが込み上げてくるのに、フレデリックを見ても何も思わない。


「今から私がすることを止めないで」

「……わかった」


 わかった、と答えたもののセドリックはリゼの行動が何もわからなかった。どうやってエレインたちを制ししたのか、どうやって起こすのか。今日のリゼは初めて見るリゼだ。

 わからないけれど番のやりたいことを止めることはできない。ましてや久々に会った番だ。なんでも叶えてあげたい欲の方が強い。厄介だ。


 リゼはまずロイドの横に立つと、懐から小さなナイフを取り出した。小指ほどの小さなナイフだ。それをゆっくりと自信の手に突き立てる。


「……リゼッ」

「動かないで、みてて、お願い」


 自らを傷つけ出した番にセドリックは慌てる。けどそんなセドリックをリゼは止める。


 手から血が滴り落ち、リゼはそれをロイドと陛下、ーーフレデリックの口の中へと入れた。意識を失っているから何かを飲み込むことはできないから、口の中に浸透するように。数滴の血を垂らしていく。


 薄暗い部屋の中でも二人の顔色が戻っていくのがわかった。

 顔色が戻るのを確認するとリゼは小さなナイフを手から抜いた。セドリックが慌ててハンカチを手に当てるが、リゼは「大丈夫」と言ってハンカチを外す。そこにはもう傷はなかった。

 どう言うことか何もわからずセドリックは困惑している。


 やがてロイド、フレデリックの順に目を覚ます。


「……叔父上?……ここは?」

「ロイド、セドリック…?」

「セドリック、お二人はもう大丈夫です。念のためお医者様を呼んであげてください」


 リゼはそう言うと「では」と言って呆然とするセドリックを置いて部屋を出て行った。毒に倒れた家族が目覚めたのだからゆっくり再会させてあげた方がいいだろうという配慮だった。そして自分の限界が近いからでもあった。


 ふう、と部屋を出ると扉のそばにはシドが控えていた。シドもまたリゼを見て困惑していた。正体不明の人を見るように。警戒はしていないが、とにかく困惑しているようだった。


「セドリックたちが落ち着いたら説明するから、とりあえずどこかゆっくりできる場所に案内してもらえる?」

「……承知しました」


 どれだけ怪しんでも彼女がセドリックの番と言うことは間違いなく、であればどうすることもできない。説明してもらえると言うのであれば待とう。

 シドはセドリックが管理する休憩室へ案内した。


***


 リゼは休憩室でセドリックを待っている間に気を失い、……高熱を出した。


 ロイドと陛下が目覚めたこと、エレインが投獄されたことで城中は大混乱に陥った。エレインがセドリックの番を害そうとした証拠も揃った。


 セドリックは高熱を出したリゼの看病をしながらシドの報告を受けた。そのどれもが信じ難いことだった。一旦事実は伏せておくことにした。


 リゼが毒を飲み干したこと、ロイドと陛下に自信の血を飲ませて起こしたことは秘匿された。


 公爵家が襲撃に遭い、番であるリゼが攫われた。急いでセドリックが助けに向かった。リゼに毒を飲ませようとしたところを間一髪で助けた。エレインが隠し持っていたデアの霊薬によって二人は目覚めた、と言うことにした。

 取り急ぎそれだけを公表して、事後処理に追われた。流石に猛毒から目覚めたばかりの二人に処理を託すことはできなかった。番が高熱を出して倒れているというのに。それがとても苦しかった。


 一度、目が覚めたのは高熱を出して三日後のことだった。

 リゼが高熱を出したのはエレインを魔力酔いさせるために触れたからだ。


 自分から触れたのに。少ししか触れていないというのに。倒れてしまう体質らしい。生きづらくて仕方がない。


 目を覚ますと以前滞在していた離宮に居た。セドリックと会えずに精神的に不安定だったせいか、いつもより症状は激しかった。

 夜中に目が覚めたかと思えば、胃の中のものを全て戻してしまった。最初目を覚ました時にはまだセドリックは事後処理に追われそばにいなかった。それがまた症状を悪化させた。

 吐き戻して使用人たちが心配してくれるが、彼らに触られると症状が悪化してしまう。

 着替えとタオルと水桶だけ置いてもらって一人にしてもらう。けれどあまり動く気にはなれずとりあえず着替えだけして、ソファに横になった。シーツを汚してしまいベッドでは眠れそうになかったから。


 ーーせめてセドリックの服でももらってくればよかった。


 そうすれば少なくとも番の匂いに包まれることができるから。あの匂いをかぐと安心できるから。リゼはソファに丸くなり、高熱に体を震わせながら眠った。


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