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人間と偽って暮らすトラウマ持ちの魔女、番の竜人に拐われましたがそれなりに幸せです  作者: 立花 みどり
第一章

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離宮での一日

「セドリック、おかりなさい」

「ただいま」


 セドリックは帰ってくるなりリゼを抱きしめた。ぐえ、という声がリゼから漏れる。


「今日は何をして過ごしたの?」


 これは日課だ。

 セドリックはリゼが一日をどう過ごしたか本人の口から聞きたがる。

 ちなみにピネからも報告を受けるし、レインからも報告を受ける。リゼから聞き、護衛二人からも報告を聞く。三者に矛盾がないことを確認し、安心するのだ。


 リゼの過ごし方は安定していた。


 少し遅めの朝食をとり、一人で部屋に籠る。籠っている間は魔術を試している、らしい。片付けのためにピネが部屋に入ると失敗した魔術・成功した魔術・それぞれの陣が部屋に散らばっている。ピネも学校で習う程度の魔術の知識はあるが、リゼの部屋にある魔術はどれもみたことないものらしい。価値がわからなくて触れるのが少し怖いそうだ。


 作業をした後は読書の時間。

 ピネとセドリックが持ってきた本を読む。魔術の本か番の本か歴史の本だ。本を読んでいる間にピネがお茶を入れるが飲んだことはない。話しかけても気づかない。

 気になる魔術があればメモをして次の日に試す。研究者並に熱心だ。


 本を読んだあとは、遅めの昼食。

 セドリックの指示で食事には常にリゼの好物を入れるようにしている。野菜が好きなようだ。そして甘いものはあまり食べない。

 昼食後はコーヒーを飲み、レインと離宮を散歩する。散歩を楽しむと言うよりは、体が鈍らないように義務的に歩いているようだ、とレインは言っていた。その証拠に毎日決まったコースを歩く。庭に花が咲いていれば「綺麗ね」と言うが、立ち止まってじっくり鑑賞するようなことはしない。


 散歩を終えて部屋に戻ると、散歩の間にピネが淹れ直したコーヒーを飲み、再び読書をする。散歩後の読書は主に番やフレド王国の歴史、マナーに関する本。わからないことがあればピネにも聞く。これはあまり楽しい読書ではないらしく、1時間程度で終わる。


 その後は再びセドリックが帰ってくるまで魔術の実験をしているらしい。


 セドリックの帰宅の知らせを聞いてリゼは迎えに行く。そのまま夕食を一緒にとり、その間にピネは再度魔術で散らかった部屋を片付ける。


 毎日その繰り返し。本人からも、ピネとレインからも同じ報告を受けていた。


「退屈じゃない?」

「全然。今まで私は結構魔術を極めた方だと思っていたけど、この国には知らない魔術がまだまだあるみたいで。新鮮で楽しい」

「それならよかった。公爵邸にも魔術書はたくさんあるから、楽しみにしてほしい」

「ほんと!たのしみ」


 ここ数日でリゼは笑顔を見せるようになった。その変化がセドリックにとっては眩しくて愛おしい。



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