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人間と偽って暮らすトラウマ持ちの魔女、番の竜人に拐われましたがそれなりに幸せです  作者: 立花 みどり
第一章

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魔法と魔術


 手紙を送った後は装飾品や部屋に対して幾つかの魔術を施すことにした。急に身一つで連れてこられたので、普段使っていた隠匿の術がかけられてないのが気になっていた。


 魔法を使えないリゼは家や装飾品に魔術をかけることで身を守ってきた。


 魔法とは詠唱を通して魔力の形を変えて出力する。

 対して魔術はあらかじめ用意していた陣に魔力を通すことで、陣に記載してある効果を出力することができる。


 大抵の場合、二つとも同じ結果を出すことができる。大きく違うことは、魔法は詠唱さえすればすぐに出力できること。魔術はあらかじめ陣を用意する必要があること。

 これだけ聞けば圧倒的に魔法に分があるように思えるが、魔術は瞬発力がない代わりに細かい出力の調整や長期間の使用に向いている。


 単純な一騎打ちや攻撃には魔法が向いているが、結界や民間向けの治癒などには魔術が向いている、ということだ。実際、大都市の教会には治癒の魔法陣が張られた民間向けの治癒室などがあり、軽い体の不調を抱えた平民たちはその部屋に滞在することで、身体を癒すことができる。


 大抵の人は魔法を選ぶ。魔法の方が需要があるのだ。騎士や警護、研究員、どの職業も魔法が必須で魔術は任意なことが多い。

 あえて魔術を選ぶ人間はリゼのように魔法が使えない人間か変態のどちらかだ。ちなみにそのような人は本当に少ない。少なくともリゼは自分以外に見たことがない。

 たまに魔術師と出会っても、大体は魔法の才能がなかったが故に仕方なく魔術をとった、程度のことがほとんどだ。


 魔術は魔法より劣ったものであるという認識が一般的なため、リゼほどに本気で魔術と向き合い、極めたものはいない。


「とりあえずこんなものでいいでしょう」


 紙に少しだけ複雑な、書き慣れた陣を書いた。自分を探しているものから身を隠す魔術だ。探索魔法などから自分の存在を隠すことができる。


 魔力を通すとその紙を部屋の隅に貼り付けた。これでこの部屋にいる限りは存在を認識しにくくなる。本音を言うなら常日頃この魔術をかけておきたいところだけど、そうすると誰からも認識されづらくなるので、万が一攫われた時に見つけられにくくなる。いつかその辺をうまく調節した魔術をきちんと研究したいところである。


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