引きこもり生活終了
リゼが回復してさらに一週間。
セドリックは仕事に行くことになった。
皇帝が病に倒れているのだ。
本来は一日も休める立場じゃない。長年探し続けた番が見つかったと言うことでセドリック側のあらゆる人が最大限配慮してくれていたらしい。
不在の間少しずつ業務が溜まっていき、ついに宰相がセドリックを呼びにきた。
その時初めてセドリック以外の人を見た。
セドリックは宰相に対しても、リゼに対しても「見るな」「減る」とガルガルしていた。
最初は仕事の会話をするセドリックが新鮮で、セドリックの隣で大人しく座っていたのだけど、宰相と目があっただけでもセドリックが嫉妬してしまうので話が進まなくなり、リゼは隣室に移動した。
隣室へ移動して長い時間は待たなかったと思う。
言い合うような声が聞こえた後、セドリックはため息をつきながら戻ってきた。
そして心底残念そうな顔で数日後に仕事に戻ることを伝えたのだった。
「セドリックがいなくなると暇かも。部屋の外に出てもいい?だめ?」
「……信頼できる護衛を用意するからそれまでは絶対に外に出ないで。すぐに用意するから」
どうやらこの部屋の外はもう危険らしい。どれだけ危ないんだこの城は。
「セドリックが不在の間の過ごし方について注意事項はある?命を狙われてるかもって言われても正直あまり実感がなくて」
というか死なないから命に関する危険がピンと来ていない。
「侍女と護衛を用意するから、僕がいない時はどちらかと一緒に行動すること。毒を検知する魔道具を用意するから、何かを食べる時は絶対にそれを使って」
「わかった」
「訪問者が来ても無視して」
「うん」
「窓辺にもなるべく立たないでほしい、のと、なるべく庭にも出ないでほしい。あと、男とは目を合わせたらダメだし、もしも出会ったら絶対に報告して」
「わ、わかった」
それは命を狙われる話とは関係がない気がする。
他にもあれやこれやと注意事項を受けた。セドリックが仕事に行く前日、行動していい範囲を確認するために初めて部屋の外に出た。リゼが世話になっていたのは王城の敷地の奥にある、かわいらしい離宮だった。もともといつかの代の皇帝が番と二人きりで篭るために建てたらしい。
通りで部屋から出なくても不自由なく暮らせるはずだ。
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「リゼ、侍女と護衛を用意したから紹介するね」
セドリックが仕事へ行く前日、部屋に二人の女性がきた。
「こっちのグリーンの髪のおさげの子がピナ。見た目は若いけど100歳は超えているよ。陛下の乳母の娘なんだ。昔からの知り合いで信用できるし、仕事もできる。王宮のことも知り尽くしているから何かあれば彼女に聞いて。
それから、隣に立ってる赤髪の彼女はレイン。公爵家の騎士団で副団長をしている。女性騎士では一番強い。この部屋の外に出る時は必ずレインと行動をともにして」
「わかった。えと、二人ともよろしくお願いします」
「お前たち、わかっていると思うが私の番だ。くれぐれも頼むぞ」
「は」「はい」
二人とも背筋をピンと伸ばして返事をした。
セドリックが私って言うの新鮮だなあとリゼはのんびりそんな様子を眺めた。




