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時還のシャーナ (じかんのシャーナ)  作者: 青葉 星


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9/15

避難

結界へ向かう途中。

瓦礫の影から、ふいに声が響いた。

「蒼星!!」

(……え?)

「……お父さん!?」

振り返った先。

埃まみれのまま立っていたのは、父だった。

その後ろから、母も駆けてくる。

「蒼星……っ!」

「お母さん……!」

次の瞬間、強く抱きしめられた。

「よかった……本当に……」

(……あったかい)

さっきまで張り詰めていたものが、一気にほどける。

「……うん」

小さく頷く。

(ちゃんと、生きてる)

父が、少し離れた場所にいる氷の青年に目を向けた。

「君が一緒にいてくれたのか」


「別に、大したことは」

「助かった。ありがとう」

父はしっかりと頭を下げる。

青年はは少しだけ困った顔をした。

「……やめてください、俺も助けてもらいましたから」

蒼星は、そんなやり取りを見ながら――

少しだけ笑った。

さっきまでの恐怖が、少し遠くなる。

「ここは危ない。避難所へ行こう」

父が周囲を警戒しながら言う。

蒼星は頷いて、一歩踏み出す。

その瞬間――

視界が、少しだけ揺れる。

(……あれ)

足元が、ふわっと浮くような感覚。

時間の流れが、ほんの少しだけズレる。

(……さっきの、せい?)

自分の手を見る。

わずかに震えている。

「おい」

ぐっと腕を掴まれる。

「ふらついてるぞ」

「あ……」

氷の青年だった。

「……大丈夫です」

「いや、大丈夫じゃないだろ」

即答。

蒼星は少しだけむっとする。

「ほんとに平気」

「……そうか」

それ以上は何も言わない。

でも、手は離さないまま。

(……優しいのか、雑なのか分かんない)

そんなことを思いながら、歩き出す。

瓦礫の道を、慎重に進む。

(さっきの感じ……)

頭の奥が、少し重い。

(能力のせい?それとも時間いじったせい?)

(……これ、使いすぎたらどうなるんだろう)

誰にも言わないまま、胸の中で考える。


しばらく歩くと建物が見えてきた。

その周囲を淡い光が包んでいる。

「結界……?」

蒼星が手を伸ばすと、指先に柔らかい抵抗。

膜みたいな感触。


「……避難所はここだ。俺はまだ避難しきれていない人がいないか外に探しに行ってくる。この中は比較的安全だから、じゃあまた」

青年が静かに言う。

「あの…!ありがとうございました!」


少年は一瞬だけ黙って――

それから、少しだけ笑った。

その笑顔を残して街中の中に、消えていく。

(あ…名前聞きそびれちゃった)

蒼星は、その背中をしばらく見ていた。

(……また、会えるかな)

理由は分からない。

でも――

そう思った。


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