再会
蒼星たちは結界の中へ入る。
中に入った瞬間空気が変わる。
一歩踏み込んだ瞬間――
音が戻る。
人の声。
泣き声。
ざわめき。
「……人、いっぱい……」
少しだけ、安心する。
父が言う。
「空いている場所を探そう」
その時――
「……蒼星!!!」
聞き慣れた声。
でも、少し息が荒い。
(……この声)
ゆっくり振り返る。
人混みの中。
驚いた様な安堵した様な今にも泣きそうな顔の男性が立っていた。
「……お兄ちゃん?」
一気に駆けてくる。
速い。
人を避けながら、一瞬で距離を詰める。
(速っ……)
「無事だったのか……!」
肩を強く掴まれる。
「……うん」
「探したんだぞ……!」
息が荒い。
額に汗が滲んでいる。
「避難所、何ヶ所も回って……全然見つからなくて……家に行っても誰もいなくて。父さんも母さんも無事でよかった…」
母が目を潤ませる。
「薙も無事で……よかった……」
父も小さく息を吐く。
「……これで全員だな」
(……そっか)
(みんな、揃った)
胸の奥が、じんわり温かくなる。
兄が少しだけ照れたように笑う。
「まあ……ちょっとだけ足速くなってさ」
「それで探し回ってた」
「能力……?」
蒼星が聞く。
「たぶんな」
軽く肩をすくめる。
「地味だけどな」
「そんなことない」
すぐに言葉が出る。
「ちゃんと見つけてくれたし」
兄は一瞬だけ驚いて――
「……そっか」
少しだけ照れたように頭をかく。
「正直、役に立つか分かんなかったけどな」
「でも、探すのは楽だった」
(ずっと走り回ってたんだ……)
蒼星は少しだけ胸が熱くなる。
「ありがとう」
小さく言うと、兄は少しだけ視線を逸らした。
「家族だからな」
ぶっきらぼうな言い方。
でも――
(ちゃんと、来てくれた)
その事実が、すごく嬉しい。
父が周囲を見ながら口を開く。
「……ここも安全とは限らないが、ひとまずは落ち着けるだろう」
母も小さく頷く。
「そうね……少し休みましょう」
その言葉に、張り詰めていた空気が少しだけ緩む。
蒼星は、ふっと息を吐いた。
(疲れた……)
その瞬間。
さっきの“違和感”が、また少しだけ戻ってくる。
頭が、ほんの少しだけ重い。
(……やっぱり、時間使ったせいかな)
でも、立っていられないほどじゃない。
(このくらいなら、大丈夫)
誰にも言わずに、心の中で処理する。
「蒼星、こっち来い」
父に呼ばれる。
「うん」
蒼星は小さく頷いて、家族の方へ歩いていく。
避難所のざわめきの中で。
やっと、日常の“形”に少しだけ戻る。
でも――
あの獣。
この力。
(これから、どうなるんだろ)
誰にも分からない未来が、
静かに、動き始めていた。




