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時還のシャーナ (じかんのシャーナ)  作者: 青葉 星


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11/15


あの夜から、2ヶ月が経った。

最初の数週間、蒼星たちは避難所で生活していた。

人で溢れた空間。絶えないざわめきと、不安。眠りも浅く、気の抜けない日々。

(正直、限界だったな……)

だが状況は、少しずつ変わっていった。

“結界”を張れる能力者が現れ始めたのだ。

最初は建物ひとつ分ほどの小さな範囲だった結界は、日を追うごとに広がり——

やがて、街の一部を覆うまでになった。

そして。

蒼星たちの自宅も、その結界の中に含まれるようになった。

「……帰れるのか」

父がぽつりと呟いた日のことを、蒼星は覚えている。

玄関の扉を開けた瞬間。

懐かしい匂いが、ふわりと広がった。

(……家だ)

見慣れた空間。変わらない配置。

それだけで、張り詰めていたものが少しだけ緩んだ。

(戻ってこれた……)

でも——

それは“完全な日常”じゃない。


テレビをつければ、必ず流れるニュース。

「現在、全国各地で“動物の異常変化”が確認されています」

「特に——哺乳類においてのみ発生しており…」

「この現象は、“モンスター化”と呼ばれています。なおモンスター化している動物を異形獣いぎょうじゅうと呼称することといたしました。」


(モンスター化…異形獣…)

蒼星は静かに画面を見つめる。

(哺乳類だけ……)

犬、猫、鹿、熊——

身近だったはずの存在が、“別の何か”へと変わる現象。

「なお、モンスター化した個体は——」

「夜間、特に月明かりを強く受ける状況では、行動が鈍る傾向があります」

(……月が苦手)

「満月に近いほど弱体化が確認されており——」

「一方で、新月や日中では、活発に行動するため注意が必要です」

(じゃあ……)

(昼でも、普通に出る)

むしろ——

“安全な時間なんてない”。

「現在、警察や自衛隊では対応が困難なケースも多く——」

「一部では、“能力を持つ人間”による対処が確認されています」

(……やっぱり)

自分の力を思い出す。

あの時から、消えていない。

(私みたいなのが、戦うしかない)


「蒼星」

母の声。

「ご飯よ」

「……うん」

テーブルにつく。

父、母、そして兄の薙。

(こうしてると、普通なんだけどな)

「仕事はどうだ?」

父が聞く。

「リモートばっか」

蒼星は軽く肩をすくめる。

「会社も外出制限してるし」

「そりゃそうだろ」

薙が言う。

「昼でも出るんだからな、あいつら」

(……現実なんだよね)

その時、ふと胸に引っかかる。

(ミオ……)

あの日から、いない。

ミオは私が小さかった時にうちに来た白猫だ。

人懐っこくていつも玄関のドアが開くと健気にお出迎えしてはお腹を見せて甘えてくる。

(でも……哺乳類は全部……)

ニュースの言葉が、頭に残る。

(もし、ミオも——)

そこから先は、考えないようにした。


その日の昼過ぎ。

「蒼星、ちょっと外行くぞ」

薙が声をかける。

「昼なのに?」

「ああ」

短く答える。

「だからだよ」

(……昼でも出るってことか)

「結界の中だけな」

「遠くは行かねえ」

「……分かった」

蒼星は頷いた。


外は明るい。

日差しもある。

それなのに——

人は少ない。

静かすぎる。

「最近、この辺でも出てる」

薙が低く言う。

「昼でも、普通に」

(やっぱり……)


「来るぞ!近い!」

父が声を上げた

次の瞬間——っ!!!

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