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【完結】魔王な彼の悪女研究(続編)  作者: 露原そら
第二章 アナクラシア編
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2-11 空の色

核が2つある魔族を倒した後。

私達は、紅く霞む地下の廊下を進んだ。

瘴気がどんどん濃くなっていく。

残り20分ぐらいといったけど、中和薬の効果は時間ではなくて瘴気の総量だ。

明らかに残された時間が少なくなっていく。

前を走るルヴァイとリューカス殿下に分析の魔術をかける。

それから、周囲の瘴気の濃度を測る。


私の導き出した結論は、このままでは全滅する可能性が高い、という事だった。


大きな扉が見えてきた。

中から何か音がする。

恐らく、ここが目的地。

そして、最も瘴気が濃い地点。


「っルヴァイ!」


思わず、そのまま扉の中に走り込もうとするルヴァイを引き止めた。


「エリィ……?」


切羽詰まったような私の様子に気付いたのか、ルヴァイは私の顔をじっと見つめた。


「………もう、薬の効果が、切れる?」


「…………うん」


「……………分かった」


キィンと金属音が聞こえる。

恐らく、中で戦闘が起こっている。

きっと上にいたあの魔族より、手間取る何かが、いる。


悩んでる時間は無い。

でも。


また、あの時のように。

ルヴァイの前で、倒れなければいけないんだろうか。

ルヴァイの心配そうな顔に、胸がぎゅっとなる。

このまま、あの時と同じように死に別れるなんて、考えたくない。


でも、そうだとしても。

この瘴気は、誰かが、止めなければ。


そっと胸に手を這わせる。

なんとなく、思いつきでルヴァイに作ってもらった、解毒薬を自分自身で注入できる魔導具。

最後の一瞬は、これにかけるしか無いだろうか。


「バカ、諦めるの早いから」


わしゃっと頭を撫でられる。


「今日は俺らだけじゃないだろ」


見上げると、ルヴァイは優しい顔で、でも自信満々に笑っていた。


『で、リューカス、そろそろ中和薬の効果が切れそうなんだけど。得意の結界術で何か工夫できない?』


『……いきなりですね。もちろんできますけど』


得意気に笑ったリューカス殿下は、何か魔術式を発動させた。

……いや、目の前で新しい魔術式を組み上げている。

すごい、いきなりそんな事できるの?


『薄い結界と風の膜を身体の周りに張って極力瘴気が身体に触れないようにしました。これで触れる瘴気の濃度は1/10以下にはなるはず』


『さすが。少しはマシかな、エリィ』


『う、うん……部屋の中の濃度によるけど……15分は持ちそう……』


マシどころじゃない。

もうおしまいだと思っていた事態に希望の光がさした。

神に感謝するようにリューカス殿下を見る。


『……ただ、これ動く人に対してやるから、かなり繊細な動きで魔術かけ続けないと……正直、これ以外の魔術はかなり雑になります』


『十分だ。で、次はエリィ。お前は俺らの後からこっそり部屋に入ってこい』


突然の私への司令にきょとんとする。


『え、こっそり?いくらなんでも強い魔族とか人とかなら、あっという間にバレるんじゃない?』


『それでいいの。コソコソしてるやつとか、弱そうでしょ?』


ルヴァイはニヤリと笑った。


『弱々しくコソコソして相手を油断させて……エリィの必殺薬付きのメスをぶちこめ。麻酔薬でも毒薬でもなんでもいい。』


『なるほどね』


私もにやりと笑う。

それぐらいなら朝飯前だ。


『他の不測の事態は俺がなんとかする。後は、俺を信じて……一緒にあの部屋に突っ込んでくれる?』


紅い霧の中で、ルヴァイのキラリと光る瞳が、いつもの紅とは違う、はるか昔に見た山葡萄のような紫色に見えた。


『……うん。よし、行こう!』


なんだかその山葡萄色の懐かしい目に元気づけられてルヴァイに笑いかける。

リューカス殿下もニコリと笑って頷いた。


『俺もそろそろタナトスが心配です。じゃあ、行きますよ』


そうして止まない金属音が聞こえる扉を、そっと開けた。

私は物陰に隠れて中を見る。

そして、その中の光景に目を見張った。

ブランディーヌ様とタナトス様が戦ってる!?


ルヴァイがサッと魔導具を構え、パン!と放った。

ブランディーヌ様が持っていた怪しい器具が粉々に砕け散る。


あれは、薬物投与の瓶……?


隠れながらこぼれ落ちた薬物に分析の魔術をかけた。

そしてゾッとする。


それは、魔族の血と人の血を混ぜ、反応させたものだった。

通常魔族の血は瘴気と同じように人にとっては毒だ。

だが、先に人の血を混ぜることで害のある反応を体外で終わらせ、人の体に魔族の血が馴染むように魔術で加工されていた。

あれを自分の血に混ぜれば、魔族と同じように瘴気の力を使えるようになるだろう。

ただし……もう、普通の人には戻れない。

どんな副作用があるのかも全く分からない。


あんなものを注入されたらと思うと背筋が凍る。


とにかく、状況把握だ。

そのままタナトス様と、どうやら偽物らしいブランディーヌ様の分析を隠れながら行う。


その結果を見て、愕然とした。


タナトス様の中和薬の残りがほんの僅かだ。


そして、偽物のブランディーヌ様は……上半身の半分と顔の半分が魔族だった。


そんな、まさか。

あれは、自分で……?


『……瘴気濃すぎるね。リューカス、天井に風穴開けてもらってもいい?』


『了解』


ルヴァイとリューカス殿下の掛け合いにハッと現実に引き戻される。

すぐにバーーンと天井が弾け飛んだ。

風穴というか丸ごと破壊だ。

なんという破壊力。

天井以外もあちこち壁が崩れている。


『っぷはぁ!やられたわ。同じところグルグル回ることになるなんて。壁が壊れて助かったわ。で、あなたどなた?私の姿に成り代わるなんて、悪戯が過ぎるのではなくて?』


崩れ落ちた壁を超えて、長剣をギラつかせて本物のブランディーヌ様が部屋に入ってきた。

怖い。

怒っているみたいだ。

ビビりつつも分析の魔術をかける。

……ブランディーヌ様は遅れてこの部屋にはいったからか、まだ大丈夫そうだ。

だからといって、余裕があるわけじゃないけど。


とにかく、今がチャンスだ。

私が成すべきこと。

すっとタナトスさんの背後に回る。


『ルヴァイとリューカス様から伝言です。ちょっとした作戦があります。とにかく、タナトス様はこれ以上動かないで、できるだけじっとしてて下さい。』


『……OK』


実際にはそんな伝言は貰ってないけれど、下手に事実を言うよりもこの方が言うことを聞いてくれるはずだ。

この人たちは、己の身を守るより、誰かの身を守ろうとするから。

だから、己を守るためじゃなくて、みんなのための作戦だということにする。


恐らくリューカス殿下は、既にこの状況から、タナトス様の命の危険を察知したんだろう。

目立たない魔術だけど、タナトス様は他の人よりも分厚い風の壁に守られているのが分析の魔術の結果から分かる。

少し酸素濃度が薄くなってしまっているけど、背に腹は代えられない。

とにかくあまり動かないで命を繋いでもらわないと……


リューカス殿下はこちらをちらりと見た後、目を細めてブランディーヌ様の偽物を睨んだ。


「………で、お前は誰なの?魔族?」


明らかに苛ついているリューカス殿下の問いに、暫く沈黙を守っていたブランディーヌ様のような誰かは、くすりと笑って答えた。


「いいじゃないですか、もう私は誰でもないんですから。まぁ、強いて言うなら……」


そうしてシュゥゥゥ、と紅い霧を纏って姿を変えた。


「ライエ・ゼライアだった男、でしょうか」


白に近い短い銀髪に白衣を纏ったその男の姿は、確かに過去になにかの資料で見たゼライア・カンパニーの社長そのものだった。

ただし、以前と違い、その目は紅く染まっている。


「ラ、イエ……?」


ブランディーヌ様が驚愕に目を見開いている。

ライエと呼ばれたその男は、その声の主には見向きもせず、妖しく微笑んだ。


「驚きましたか?今はもう、普通のニンゲンも魔族の力を手にできるんですよ」


妖しく笑ったその顔は、確かにヒトとはちがう雰囲気を醸し出している。

そしてその魔族のような片手は、赤い鱗に覆われ、長く鋭い爪が生えていた。


だけど。


あの姿も、魔族の力で見せた幻影だ。

本当の姿じゃない。


隙を見て更に分析をかける。

体内にある大量の魔族の血。

縫い合わされた魔族の身体。

核は魔族の身体の部分の、胸の中心だ。

しっかりと核が魔族の身体にあるように働いていて、その魔族と人の身体の融合の技術に驚く。

ただ、まだ魔族の身体との結合は弱い。

無理矢理合わされたその異質な身体は、血の交換や意志による動作はできても、感覚刺激の交換や繊細な魔力のやりとりはできていないようだった。


これなら……


物陰から核の位置を自分の身体を使ってルヴァイとリューカス殿下に指し示し、それから戦闘のどさくさに紛れて、新しくルヴァイに作ってもらった特注の小さなメスの替刃を飛ばす。

サクッと刺さったけど、気付いていないようだ。

やっぱり感覚共有ができていない。


続けて何本もメスの替刃を飛ばす。

うまく全て魔族の身体部分に刺すことができた。

後はメスの替刃に仕込んだ瘴気解毒薬を注入するよう替刃の魔導具を発動させればいい。

あのメスの替刃は、見た目はメスの切先そのものだけど、実はほとんど薬の注入用の魔導具として作り変えられている。

ミーちゃんの解毒薬と、ルヴァイの魔導具、そこにサミュエルの医療魔術式を組み込んで作った、瘴気チームの最新作の医療魔導具。

本当は、執刀しつつ薬を効率的に投与できるよう開発したものだったのだけど。

先にこんなふうに役に立つなんて。

苦笑いしつつ、刺さったメスの替刃の位置を確認しようと魔術での解析を試みる。


もう一度解析をかけたところで、おぞましい紅い液体が入った注入瓶を手にして嗤うライエ・ゼライアと目が合った。

気づかれたー


パチン!と音が鳴り、目の前にライエが現れた。

注入瓶の針を私の首筋目がけて振り下ろしてくる。


はっきりとわかる、そのシンプルな動作の軌跡。


油断しきった、愉悦に歪んだその表情。


弱いものを手中に収める悦びに震える下劣な笑み。




舐めないでほしい。


これでも私は。


お父様仕込みの体術は免許皆伝。

旧エラナリア王国護身体術大会成人女性部門優勝者だ!!



私は瞬時にメスの替刃の注入術式を発動させながら、ガシリと針を持つ手を掴み、ライエ・ゼライアを思いっきり張り倒した。


「ガッハ……!?」


パリンと紅い液体の入ったガラスが割れる。

遅れてパチン!と転移したライエは、少し離れた位置でふらつき、膝をついた。


「っき、さま……何を!?」


「何って、貴方のそのおかしな身体を元に戻してあげただけよ」


「なん、だと……!?」


解毒薬が回り始めたのか、魔族の力を急激に失っていくライエは、みるみるうちに姿を変えた。

その姿に息を呑む。

胸と顔の半分が赤い鱗に覆われ、その境目は焼けただれたように引き攣り、痛々しく縫い合わされている。

無理矢理魔族の血を体内に入れ、魔族の身体と融合したこの人は……もう、普通の人間には、戻れないだろう。


思わず目をそむけたくなるのを堪え、じっと見つめる。

今、私がやらなければならないのは。

なんとしてでもこの瘴気を止めることだ。

ぐっと手を握り、ライエと対峙する。


ライエは、魔族の半身を守るように硬い鱗のある腕で隠した。

解毒薬がまわり、転移ができなくなったこのタイミングで己の核を狙われているのがわかっているんだろう。

ルヴァイが核を撃ち抜くチャンスを狙って魔導具に魔力を込めているのが分かる。

なんとか、隙を作らないと……


ふぅ、と息を吐き出し、ニヤリと悪女らしい笑みを浮かべる。


『その縫い合わされた魔族の身体、あまり感覚が無いんでしょう?貴方がお喋りしている間に私が投げたお薬付きのメスの替刃、全然気付かなかったみたいね』


『薬付きのメスの替刃……!?』


やはり気付かなかったようだ。

ハッと身体を見渡している。

動きが悪くなった魔族の身体に対応できていないのか、体がグラついている。

ただ、あと少し、腕が外れない。


『その薬は高濃度の瘴気の解毒薬よ。瘴気と魔力の反応を防ぐから……貴方の魔族の身体の部分は、しばらく満足に動けないと思うわ』


動けなくなった身体。

抑え込まれる魔族の血の力。

溢れる瘴気の中、この男が初めて魔族の紅の混じった血液を体内に入れた時のことを思って、心にずしりと鉛がはいったような気持ちになる。


もう、元の身体には戻れない。

そして、男の身体の数値を見た限りでは……どちらにしろ、先は長くなかった。

きっとそれを知っていたから、この男は医師の私を仲間に引き入れようとしたんだろう。

少しでも、生きながらえるために。


重い気持ちを引きずりながら、再び口を開く。


「私は医者よ。本当は、貴方の命も助けたい。だけど……その身体になる前にはもう、致死量の瘴気を吸って、その紅い薬を使ってしまったんでしょう?」


「………貴様に、何が分かる」


ライエ・ゼライアは動かなくなった半身を引きずりながら、紅い目を光らせて立ち上がった。

昏い笑いが溢れている。


「あれはほんの少しの偶然だった。針の穴ほどの魔界との境界から漏れ出る新しい力。応用するのは簡単だった。これまでにない新しい技術、新しい文明。好奇心を揺さぶられない研究者はいるか?」


ライエがそう言い終わらないうちに、ブランディーヌ様が飛び上がり、空中から長剣を振り下ろした。

ライエは人の手に持っていた長剣で迎え撃つ。

キィンキィン、と金属のぶつかる音が聞こえた。


ブランディーヌ様は、このライエと知り合いだったのだろうか。

辛そうな顔で、ライエに刃を向けている。


「お前は確かに素晴らしい研究者だった。だがなぜ、こんな、世界を滅ぼすようなことを……」


「滅ぼす……?」


「そうだ、このままじゃここは瘴気に冒され人が住めない土地になるだろう!」


キィン!と長剣が勢いよくぶつかる。


だけど。

片手の長剣だけでも、ライエのほうがブランディーヌ様よりも上手だった。

いや、剣は互角かブランディーヌ様の方が上だけど、ライエは上手く魔術を使いながら攻めている。

そのまま、ライエの何かの魔術でブランディーヌ様が弾け飛んだ。

その表情は、なぜか、切なげなヒトの表情だった。


「違う……俺が欲したのは、発展だ」


ドサリと落ちたブランディーヌ様は、ぐっと立ち上がる。

その場所は、壁に空いた穴の向こう側。

ブランディーヌ様が出てきた壁の中だ。

そこは、この部屋の中で、恐らく最も瘴気が薄い場所。

そこから出ようとするブランディーヌ様を、結界のような何かが阻む。

その何かの魔術を使っているのは、何かに抗うような表情のライエだ。


それに気づいてハッとした。

なけなしの理性を振り絞るようなライエの顔。

魔族の血は、理性を喰う。

ほんの少し残った理性は、煙る瘴気にさらされ、その目を紅く濁らせ光らせる。

恐らく、この人の本当の理性は、もう、殆ど………


ライエは魔界との境目を呆然と見つめ、口を開いた。


「そう……発展だ。俺が欲したのは……人の世の、発展だ。発展だった」


ギラギラひかる魔界との境目の前に立つライエを、紅く濃い瘴気が包む。

瘴気と魔族の血が反応したのか、一気にその目が怪しく紅く光る。

ライエは魔界との境目の光に照らされながら、どこか違う世界を見ているようだった。


「俺は新しい世界が見たい。新しい技術を生み出したい。その果に、この命が消えるのなら本望だ………そうだ、だから見せてみろ。このニンゲンとして大きく進化した私に挑むというのなら……お前たちがこの高濃度の瘴気の中でどうするのか、『最後』に見せてもらおうか」


そうして、ライエは力の入らない魔族の手で、何かのスイッチを叩くように押し込んだ。

そして、濁る紅く光る眼で、私の方をぼんやりと見た。


ガコンと、私の足元で何かが外れたような音がした。


それと同時に、自分の身体がぐらついた。

ブシュウと大量の紅い煙が、足元の床から溢れ出し、落ちるような感覚にぞわりとする。


まさか、この床下が瘴気の濃縮タンク……!


あ、と思った時には、既に濃い紅い煙の中にいた。


煙の中深くに身体が落ちていく。


微かに、パンッという、ルヴァイの魔導具の音が聞こえた気がした。

核は、破壊できただろうか。

なぜか妙に冷静に、そんなことを思った。


濃い瘴気が充満する床下の暗く紅い空間の中に、身体が吸い込まれるように沈んでいく。

じわりと、身体から魔力が失われて力が抜けていくのがわかる。


中和薬が、切れた。


想像以上の脱力感に、意識が遠くなる。


はやく、はやく胸元の解毒薬の魔導具のボタンを、押さないと………


落下する感覚の中、タンっという胸への軽い衝撃と一緒に、ふわりと抱きしめられた。

続いて下からの風圧と、ドンッと床に叩きつけられるような、でも思ったよりも柔らかな衝撃。

そして衝撃と共に、カハッと口から血が飛び出す。


胸が痛い。


力が、入らない。



霞む意識の中、身体がふわりと熱を持った。


「エリィ」


何度も触れた、ルヴァイの優しい手の感触が、頬を撫でる。


「エ、リィ……、っ」


グッと握られた手とその苦しげな声に、ハッとして無理矢理目を開ける。

私を片腕で抱きしめるルヴァイが、もう片方の手で口を拭った。


袖口が、血で染まっている。


ルヴァイも、瘴気中毒が……


声をあげようとして咳き込む。

苦しい。

気管もやられてるかもしれない。


「エ……リィ、」


掠れた声で呟いたルヴァイが、力を失ってがくりと私の上に倒れ込んできた。


「っル、ヴァイ!」


やっと声が出て、私の体の中にあったルヴァイの魔力が、ルヴァイの方へしっかりと流れていく。


咳き込みながら、必死で声を出す。


「ルヴァイ、っルヴァイ!!」


「………エリィ」


ルヴァイがわたしを呼ぶ声は、なぜか少し笑いを含んでいた。

グッと顔を上げたルヴァイは、ククッと笑うと、ドサリと私の横に仰向けに寝転がった。


「っはぁ、ゴホッ……って……、はぁ………死ぬ、かと思った………」


「っまだ、死にそうなぐらい、痛い、けど……!?」


胃を抑える。

何これ。

本当に痛い。

泣きそうだ。


「……エリィ」


ふわりと魔力が優しく流れる。

またガハッと血を吐き出して口の血を拭ったルヴァイが、グッと私を抱き寄せて、背中をトントンと優しく叩いた。


「負けるな。……一緒に、歳とってくれるって、言っただろ」


横になったら少し楽になった。

そうだ、気道確保……

魔力はきっと、これで………

二人で横向きに寝転がり、顔を見合わせる。


「……ル、ヴァイ」


「うん、エリィ……ずっと、一緒だ」


絡んだ指の中で、私達の魔力が、温かく優しく混じり合う。


また少し、気が遠くなってきた。


でも……もう、少し…………



「エリィ!!ルヴァイ!!!」


「しっかりしろ!クソ、気道確保、気管保護完了!ミリアル、魔力値読み上げ!」


ミーちゃんとサミュエルの声が耳に届く。

良かった、そうだ。

二人がいれば、大丈夫。


弱さがあることは、悪いことじゃない。

助け合って、自分ひとりじゃできない何かを、成し遂げることができる。


ルヴァイが教えてくれた『強さ』を思い出して、それがとてもしっくりと身体に馴染んだ。


ほんの少し目を開いたら、ポッカリと空いた天井の扉から、青々とした空と流れるような高い雲が見えて。

みんなで大きな危機を乗り越えたんだと、流れ込む爽やかな風に、ほっと安堵の気持ちになって。


ルヴァイの手をキュッと握りながら、ふわりと体の力を抜いた。


読んで頂いてありがとうございます。


いいねブックマークしてくださった方ありがとうございます!

とても嬉しいです!


「やっと青い空が見えた……!!」と晴れやかな気持ちになってくれた方も、

「うぇぇ痛そう!!ミーちゃんサミュエル早く治してぇぇ」と胃を抑えた貴方も、

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