1-14 傷心への薬(sideミリアル)
大きな大学病院の中、ルヴァイの個室から出ていったサミュエルを探す。
ここは国で一番大きい大学病院。
私達はこの国立大学の付属大学の医学部生だ。
……といっても、大半の者は医師免許を取得済みの職業研究員で、教養系の総合科目を履修しつつ、医師や研究員として働くものが殆どだ。
医師、特に医療魔術ができる者となるとかなり人材が限られてしまい、能力のある者はすぐにでも医師として働いてもらう必要がある、というのがこの国の医師の状況だ。
サミュエルはあっという間に医療魔術師として働き始めたし、エリィはこの人材不足な医療状況を改善すべく、医療魔導具の研究開発をメインに働いている。
入院患者のいる病棟を過ぎて屋上に出ると、案の定サミュエルが屋上に突っ立っていた。
わかり易すぎるその哀愁が漂った背中に、どう声をかけようか悩む。
「サミュエル」
「………なんだ」
不器用なこの男は好きな女をロクに口説くことも出来ないまま、レイミリアに可愛そうと憐れまれ、エリィとは何もないと大勢の前で告白させられ、更には好きな女の前世の夫だったという恋敵の治療をして、今ここにいる。
もうエリィに論文は渡さない、と言ったサミュエルの背中を思い出して、切ない気持ちになる。
「………優し過ぎるでしょ、あんた」
「必要だと思うことをしたまでだ」
「………………」
このカタブツが。
ポリポリと頭を掻いて、なんとなくサミュエルの隣に並ぶ。
サミュエルはメガネのない顔で不機嫌そうにこちらを見た。
「メガネ新しいの買うの?」
「………もう不要だ」
「えぇ?ていうか、なんで伊達メガネなんてかけてたの」
「………入学してすぐの魔導具の実験の時に、保護メガネをかけたら、すごく似合うし医者っぽくていいと言われた」
サミュエルは誰に言われたのか言わなかったけど。
多分エリィに言われたんだろう。
不憫すぎて涙が出てきた。
「お前が泣く必要ないだろう」
「悪い………」
メガネが無くなってスッキリした顔のサミュエルを見る。
「メガネも似合ってたし、このままメガネ無しでもいいと思うぞ。」
「……そうか」
「そうそう。だから、好きにしな」
「…………なんだかんだ、人情に厚い女王陛下だな」
「その呼び名はもう止めてくれ」
最後の仕事は王位返上に国の解散だった。
望んでやったことだが、改めて元の地位を述べられると気持ちが引き締まってしまう。
涙が引っ込んでしまった。
「……なんとなく、俺では駄目だろうなとは思っていた。ルヴァイが現れる前からそう思っていた」
ぽつりとサミュエルが呟く。
「諦めがついてよかった。次はメガネだとか論文だとかに頼らずとも、もっと自然体でいられるような人を探す。気を遣わせて悪かったな」
「……お前な!」
「なんだ、騒々しい声を出すな」
「うるさい!不器用過ぎてムカつくわ!!」
「……仕方ないだろう、俺はそういう男だ」
このカタブツが。
段々イライラしてきて、気がついたらむんずとサミュエルの腕を掴んでいた。
「アホ、自分の成長をそれで諦めてたら終わりだ。ちょっと来な!その根性叩き直してあげるから!」
サミュエルをぐいと掴んで屋上を出る。
「っおい待て、どこへ連れて行く気だ?午後の研究室の掃除をまだしてない」
「真面目か!!明日でいいわ!!!」
イライラしながらサミュエルを連行する。
本当に、この男は。
本気で涙が出てきそうだ。
「どこ行くんだ」
「女王御用達の旨い店。号泣するまで飲ませてやる」
「響きがすごいな………」
なんだかんだ大人しく私に連れて行かれるサミュエルの身体に全然力が入ってない。
多分、本人の想像以上に心にきてるはずだ。
もうちょい元気になるまで、暫く付き合ってやろう。
サミュエルを連行しながら、そう心に決めた。
読んで頂いてありがとうございます。
いいねブックマークしてくださった方ありがとうございます!
とても嬉しいです!
「サミュエルたん(;_;)」と涙してくれた方も、
「フフ、目の前にいるじゃん、自然体でいられる素敵な女性」とニヤついた方も、
ぜひブックマーク、
☆下の評価5つ星☆から応援よろしくお願いします☆彡




