響子の友人の奈弥・1
蹴上から地下鉄に乗り乗り換え烏丸御池で降りて、御池通を石塚の店に向かう途中で越村が急に声を張り上げた。
結論が出た。エッと沙苗が驚く。今までの義父との散歩で知り得た義父の想いが、どれだけ彼奴に浸透しているか、今更ながら今日は、石塚の店に確かめに向かった。
「父が弟のことで何か言ったの?」
「何も言わないから困ってるんだ」
「それで如何すんの」
「しゃないから石塚に聞くしかないだろう」
「弟も知らないわよ。お父さんのことなんか」
「それは相手が気にくわないだけで、俺には愛想が良かった」
「それで父はあなたを取り込んで、結構当てにしていたのね」
「それが、どうも当てが外れたようだ」
息子はこうであろうという義父の思い込みも、越村の石塚を見る目にすれば幾つかの思い違いが見える。同じ屋根の下で今まで暮らしていた沙苗さんも気づかず指摘されて驚いた。
珍しく一同揃ったにもかかわらず、昨夜は社長の憂鬱が乗り移った夕食だった。沙苗は越村と父の様子を窺っても要領を得なかった。翌日の休みはお誘いが掛からず、社長は独りで散歩に出た。義母の佳乃さんはいたって気にしてない。そこへ越村が沙苗さんを誘って石塚スポーツ店を訪ねることにした。
「具体的にどんな状態なの」
大学時代から石塚を誘うには根気が要る。周囲との摩擦を避ける傾向が強いが悲観する必要はない。彼の精神的苦痛からの解放と向上を図ってやればいいんだ。
「それでどんなことを弟に施したの」
先ず俺はバイトに明け暮れてあいつとの接点は限られ、重い腰を上げさすには彼女を作らせるのが一番効き目がある。そこで夏の槍ヶ岳山荘にバイトに来る女性で、澤村さんがボランティア精神に富んでいた。彼女に石塚のような男をどう評価するか最初は大雑把に、その内に具体的に話した。そう謂う人ほど秘めたる未知の部分に光を与えれば大きく飛躍すると彼女は期待した。可能性と実際の実現に必要とする努力に開きがある人物はてこでも動こうとしない。そんな場合はあなたはそれでも惜しみなく愛情を注げますか。




