義父の思惑12
「でも社長は霧山さんの本質を知りたくて会ったのでしょう。それで納得されたのですか」
「そこだ、君が夏休みに穂高の山荘にバイトに行ってる話は娘から聞いて、それらを重ね合わせて伺ったが、どうも息子が君を羨ましがる動機が益々解らなくなってきた」
それは初耳だ。幾ら時給が良くても二ヶ月丸々何もない山の中では、余程の山好きでない限り憧れるはずがない。稼ぎ口が幾らでもある町中ならバイトを三つぐらい掛け持ちすれば、山小屋以上の収入になり娯楽もある。もっとも無駄使いすれば元も子もないが。石塚がそんな環境を羨ましいと嫉妬していたのか。
「丹波の旅館に引き籠もった時は秘境と呼ばれる山奥へ行ったときは驚いた」
「そうですかね。あの時は意外と直ぐにこっちの話に乗ってきましたよ」
心の動揺と鈍った身体の板挟みで悶々としていたのか。初日は芦生の秘境ではまだ澤村が居ないにも拘わらず良く付いて来たと感心した。それでも日頃の態度から自然界に心を寄せていたとは思えないが。
「それが未だに何を考えているのか解らないからこうして霧山に会ってみた」
「何もお義父さんが、いえ、社長がそこまでしなくても、それにしてもどうしてあの時に石塚は素直に言ってくれなかったのだろう」
「裕司は子供の時からそうだったんだ。それが最近解ってあの頃に気付いてやればもっと自由奔放でなく、あの子に合うやり方をやらせたのに。やはり俺でも母親でもダメだったのに、君が息子の重い腰をやっと上げてくれて、響子さんがそれに気付いて見守っている。それが愛情だと子供の頃に気付けば、自由なとど勿体ぶった無責任な育て方はしなかったと後悔した」
「それで社長は納得されたのですか、石塚の身の置き所について」
「息子はあれでいて、やっと自分を見つめ直して、やっと自分で磨ける時代になったと気付いたんだ」
それでもまだ未知数で掴みにくいと社長は越村に期待している。




