義父の思惑8
「ご主人さんはもう完全に落ち着いた暮らしを始めているんですよ。此の際ですからご主人の意見も参考に取り入れてキッチンをリフォームしませんか」
ウッ、何だ社長の此の変化は、ここが別所さんとは違うところだ。
「以前からそんな雰囲気はなかったのに、なんだか邪魔して申し訳なさそうに自分の好みのつまみを作っていたけど、そこまで主人は考えてなかったみたいです」
「あの部屋の飾りは過去のものですから。ご主人もその方面で再出発するには肩書きや経歴は皆さんご存じでしょう。ソロソロ新しい人生を始めるにはもっと団欒を大事にしませんか? そうすれば寄り付かなくなった息子さんや娘さんも遊びに来るでしょう。その為のキッチンにしませんか」
「でも急に云われても」
と奥さんは居間を振り返って目を曇らせた。
「どうですか、奥さんが無理ならわたしからご主人とその辺をゆっくりとお話したいのですが」
「分かりました聞いてみて下さい」
この人はだてに歳を喰ってない。あの部屋を見て、越村も別所も思いつかない霧山の深層心理に行き着くなんて。自分の誤った判断で自らの道を閉ざされた心境が社長には見えるなんて、この人の奥底を垣間見た。
そんな発想が湧き上がるのに、どうして息子を理解できないのか。接し方の違いならその辺辺りを解析しないと、石塚親子には本当の愛情は訪れない。
越村と奥さんとでキッチン回りを、都合の良いように段取りをするのに、霧山の意見が是非必要な理由を社長はリビングに戻って説明した。
霧山にはそんな感覚はなく、ここのままでも一向に構わないようだ。
「あなたに取ってそうかも知れませんが、これからは奥さんと二人、二人三脚で台所仕事をされる日が増えれば、矢張りここはこうあるべきだと、その時に気付いても遅いです」




