義父の思惑5
「育て方には問題ないと思います。人ってそう簡単には変わならないと、バイトで色んな職種の人を見る度にそう見えてしまったもんですから」
「なるほど、うちの社員にはない君の見方は、色んな職場でこびり付いた人間模様の違いから来ているのか。機能的を売り物にしても、それぞれの家庭に合った家族関係を考慮してシステムキッチンは進めないと、こっちの一方的な使い勝手さを売り物にしてもよくない。熟慮して対応する術を体験できたと、別所くんが君をえらく褒めていたなぁ」
あれは近江八幡の話だ。あの主婦は水回りの悪さに料理作りの意欲を削がれていた。それを是正する方法を、営業マニュアルを無視して説明した結果に過ぎない。創業当時の社長も、キッチンはこうあるべきだというものはなくて、手探りでここまで売り上げを伸ばした。売り上げが伸びると集約化されたお陰で急速に販路を拡げられた。今はそれぞれの家族構成からリビングとキッチンの一体型が受け入れられている。
「家庭内に於ける団欒のあり方が変わってきてるんですよ」
「そうか? ちょうど家庭に於ける中心的な存在の三十代四十代の社員からはそう謂う話は来ないんだがなあ」
「あの人達は仕事に没頭するあまり、食べて寝るだけの生活を甘んじて、家庭の団欒をもっと真剣に考えれば変わるでしょう」
「それじゃあ最近の我が家はどうなんだ」
「あの古い和洋折衷の建物では、リフォームするより建て替えた方がいいですが、クレーン車が入れないのは困りもんですね。それでそのままにしているんですか」
「佳乃は何も言わんからなあー」
「それでは沙苗さんはどうですか?」
「それは君の方が詳しいだろう」
「あの人、昔の話をしなくて、別所さんからの受け売りになるんですけど」
「それならわしとそう変わらんかぁ」
家の改築には妙案がないとアッサリ引っ込めた。




