義父の思惑4
結婚後にこうして仕事で社長と一緒に営業に出るのは入社して初めてだ。
「別所君から君の営業はお客さんの身になってやってると聞いたが、一年前に大学を出たばかりで、どこからそんな発想が生まれるんだ。学生時代は取得単位ギリギリまでバイトの明け暮れで苦労しているとは聞いていた」
それに引き換え裕司は、と言われた。結婚が決まると越村の実家の状況を聞いて、石塚家で持つからジミ婚は止めてくれと哀願され、沙苗さんに相談すると「費用は父が持つんだから別に良いんじゃないの」いとも簡単に決めてしまった。越村にすれば肩身の狭い思いをしたくないと悩んだだけに、それに応えようと頑張っている。大学時代は車の教習費用まで出してもらってる。これもすべてあの次男坊への投資だとすれば恐ろしい執念だ。それでも社長の横顔からは、そんな悲壮感はまったくない。至ってのんびりと構えていられるのも何だか気が抜ける。
「桐山さんところへは仕事で行くんですよね」
「当然だろう。息子の事はあくまでもついでだ。向こうが乗ってこなければ無理に聞くことはしない」
と割り切っていた。じゃあ何しに行くんだ。仕事なら別所さんと行った方が慣れてはかどるのに。
「越村、裕司のことは別所君から色々聞いてるだろう。それでどう思っている」
家と違って呼び捨ては、完全に社長モードに入ってる。
「中々に判りづらいと云う評判ですが、取っ付きにくいのは息子さんでなくて周りの彼を見る目です」
散歩の時と違って、義父でなく社長として対応すると、ハンドルを持つ手にまで緊張が走り滅入りそうだ。
「周りの目がどうだと云うんだ」
口調の割には目は穏やかだ。ある程度は石塚について期待してないと解る目だ。これが沙苗さんの云う親バカだと認識すると社長でなく義父に見えてくる。




