記念日6
「負けず嫌いがそのまま自分の道を切り開く実行力に繋がっている。高校生であの槍ヶ岳に独り挑む響子さんには十分に期待できる」
「そうね、あのバイタリティーにはあたしも根負けしそう」
浮かべた笑いは負け惜しみでもなさそうだ。それでもめげずに歩かなければ、人生を歩んだ意味がないが、意味はあとからなんとでも付く。悔いがなければ減点の対象にはならないはずだ。それで道を大きく変えてしまった石塚はこれからどうするのだろう。行くところまで行くしかないのか。
「今の石塚に対する話より、僕には仕事しか喋らないお義父さんについてもっと聞きたい」
「どうして」
「だって、お義父さんは家族にはよく話すんだろう」
「家族と言っても子供達については深入りしない。あたしはさっき云った通りだけど、兄も弟も進路には何も言わなかった。それは小さいときからお父さんは、息子達は屹度こうするだろうと、肌で感じていたのよ」
「でも石塚については、お義父さんも読みを間違えていませんか」
「でもだいたいは、それほど逸れてないと思う」
「でも就職活動をしないで、大学を卒業して直ぐに独立してやっていけるのか」
「まあ今のところは珍しさもあって、トントンね」
「そうか、そんな子供たちを育てたお義母さんとは朝夕食事で会ってるが、どっちか言うと物静かで、どうして一緒になったんだろう」
「回りくどい。どうしてそんなこと聞くの、知りたいのはお父さんでしょう」
「若いときは、恋人としてお義母さんの影響を受けたと思う。親の後を追うのでなく、特に自分で店を作った起業家としてお義母さんと謂う恋人の存在は大きい」
「そうか、父と母の馴れ初めを言ってもいいけど、お父さんには内緒よ」
肉と魚料理にローストまで平らげたテーブルに、ウェイターはデザートを置いた。




