義父の思惑1
着る服を選ぶのに困る季節になった。朝昼の寒暖差が大きすぎるのだ。沙苗さんはジャケットを羽織っても昼前にはブラウスでスカートはそのままだ。別におかしくないが独身の時はジーパンが多かったのに。別におしゃれに目覚めたわけではない。父の店の手伝いが増えて、学生時代と違って身なりを気にしたのかも知れない。でもパートのおばさんが休んだときに手伝う彼女にタイムカードがあるわけでない。
最近は店が順調で、家の手伝いに精を出し、越村は彼女に見送られて出勤していた。それが今朝からお父さんの見送りを母と一緒するのが気恥ずかしくて、彼女は越村が帰宅してからゆっくりと顔を合わしている。
越村は定時に帰るが社長はいつも全社員が帰り、残った別所さんから報告と対応を相談して帰宅する。それでも社員より早く帰宅出来ても八時をまわる。その頃二人は二階で寛いでいる。父の心配が伝染しているのか、このところ沙苗は何か落ち着きがない。
「一年もすればうちの仕事にも慣れたでしょう」
この言葉の裏を返せば沙苗さんは、越村には仕事以上に弟にも対応して欲しいようだ。
「とんでもないみんな身内の対応に追われている」
と義父の不安に探りを入れた。
「今朝はどうだったの」
やはり直ぐに反応が返って来た。
そうだなあと即答を避けると「仕事と身内に関してお父さんの対応に開きがあるのでしょう」と言い当てられた。
「それじゃあ聞くけど、何で義父は裕司の話になるとこれほど気にするのか、そこが知りたい」
大学時代から石塚の自己中心的な振る舞いには頭にくるが、彼のように社会人でない学生という身分は世間から認められても、一定の隔たりを多かれ少なかれ持っている。越村にすればたまに愛嬌のある石塚は許容範囲に収まっても社会人になれば別だ。
「たまにうずくまる子猫を可愛がるような典型的な親馬鹿なのよ」
彼奴のそんな仕草なんてほとんどお目に掛かれない。
「でも、あの店では仕事は適切でかつ売り上げも良いでしょう」




