霧山宅へ2
「裕司さんの子供時分はそんなもんで、自己主張って云っても我が儘三昧なだけで、高校生になるとそんなものは通らない。で、独り没頭する中で越村さんと大学で巡り会ったんですよ『俺の性格を見抜いているのは彼奴だけだ』とうっかりとあっしの前でポツリと独り言を呟いてました」
目が合うとばつの悪そうに立ち去り、あれが本音だと確信した。
別所さんの指示通り車を南西方向に走らせていた。
「今日の営業は大阪ですか?」
「いや、その手前」
「手前?」
「大山崎だ」
ウッ、何でだ。
「今朝、社長が前もって電話を入れた家を見に行く」
「そこって、霧山さん宅ですか」
何で知ってるの、と怪訝そうな顔をした。別所さんは何も知らないのか。
「裕司の店の前の持ち主です」
フーンと考え込むから経緯を説明した。
「多分、どこまで使い勝手が悪いか、僕の目でなく別所さんの目で確かめたいんでしょう」
改善の余地があるのか、取り替えるのか別所さんに任した上で、社長が行く算段のようだ。
「社長は見積もりは適当で良いと言われたが、どうなんだろう」
社長が訪問する真の目的を別所さんは知らない。
「まあ、これを通じて昵懇の間柄になればと思っているんでしょう」
そうか、それじゃあ出来るだけ愛想良く取り組むかと事情を呑み込んだ。流石に年の功か地理に詳しく、込んでる国道を通らずに、次々と指示通り狭い道を抜けて大山崎に着いた。ここからは越村の案内で家の前の広場に車を停めた。インターホンには奥さんが出て、前回伺った件で来訪を告げて入った。丁度主人が外出して「まさかこんなに早く来てくれるなんて」と恐縮して直ぐに台所に案内してくれた。




