義父の想い5
沙苗さんとの結婚披露には石塚と一緒に彼女でもある響子さんも呼んだが、お父さんまではまだ招待出来なかった。
「娘がなんと言っていたか知らないが、裕司は幼い頃から手の掛からない子だった。なんせ反抗期は一度もなかった」
そうだろうか、小学校の頃はかなり遊び回って姉と問題を起こしていたと聞いた。まあ、あの丹波の旅館に立てこもったのが、今に成って唯一の父に対する反抗かも知れない。もっとも本人にはそんな自覚はないようで周囲がいつも気を揉んでいる。一層のこと世間並みに反抗期を過ごした方がサッパリして、後腐れなく本人も家族も問題なく自立出来たんだ。
「娘は甘やかしすぎたと云っているが、私は自由に育てたつもりだ」
「お義母さんはどう思ってるんですか」
「佳乃は何も干渉しない主義なんだ」
子供より夫がすべてなんだろうか。
若き日の義父の恋談議は別所さんから聞かされた。どこまでが事実か解らないが。問題の決め手は、佳乃さんに云わせれば「いつ告白してくれるのか待たされて焦れったい人」だそうだ。これも別所さんの話で本当はどうなんだろう。
「沙苗さんとのデートで湖東三山の百済寺に連れて行ってもらい、そこでお義母さんの事も聞きました」
若き日の二人の想いでに浸ってもらうために、敢えて義父の反応を確かめたくて口にしたが慌てる様子もない。
「娘は何を思ってそうしたんだ」
こっちが聞きたいとばかりに少し苦笑いした。
「それだけ両親が一緒になった経緯に沙苗さんは深い関心を寄せてお父さんを模範にしているようです」
模範となる社長の本心はどうなんだと疑いたくなる。こうなると別所さんの話を何処まで鵜呑みしていいものか確かめるしかない。




