義父の想い4
家の前は昔の田圃のあぜ道を拡張しただけに、対向車が来れば広い場所で待ち合わせなければ行き来できない。そんなあぜ道が縦横に通ってる狭い道ばかり義父は歩いた。
「どうしてこんな狭い道ばかり歩くのですか」
「ちゃんとした歩道があるのは鹿ヶ谷通だけで、こういう道は地元の人しか使わないので歩いているんだ」
「じゃあいっそ白川通に出れば良いでしょう」
「それもそうだが味気ないんだ。こうして狭い道を歩けば垣根越しに空き放たれた窓から台所が見えて、そろそろキッチンを変えたらいいのにと思う家を観察したり使いかっての良さも判って参考になるんだ」
「でも毎日同じ道なら飽きませんか」
「いや、だから十分の距離を三十分に伸ばして道は色々変えて、時には遠回りすることもしばしばある」
アレ? 三十分も早く出ているのに、そう謂えば朝礼ギリギリに社長が見えるときもあった。
今日のコースは沙苗さんに言わすと稀な寄り道だと後から聞かされた。いつもの街中でなく山手の方へえらく迂回する道を歩き出し、これは遅刻すれば同行する越村が咎められる。何の為に同行しているのか、とベテラン社員の烈しい目にさらされても、社長を咎める訳にはいかない。社長に対する捌け口になっている越村に、社員の小言が集中するのは当然だ。社長の娘婿たる身内の越村が、批判を一手に引き受けるからこそ、会社は安泰であり和やかなに済む。社長が越村を必要としたのは、社員とのワンクッションを狙っていたのか。それでは沙苗さんとの恋は、利用されたのかと勘ぐりたくなる。
「娘から聞いたが霧山に会ったそうだねぇ、どうだった」
やっと沙苗さんから任された本題に入れた。
「澤村さんのお父さんとの学生時代の影響を、今は自分の戒めとして大事に心の中に納めているそうです」
「そうか。響子さんとは会ったが、お父さんとは昵懇でない。なんせまだ裕司は式を挙げてないからなあ」




