義父の想い2
「佳乃、当然だろう。新婚時代はお前も親より俺に気に掛けていたくせに」
順繰りだと父に言われ、沙苗さんが早速お父さんに手を回したのは、こういうことかと納得した。越村も積極的に取り組む必要性に駈られた。沙苗にしてもここはお母さんに感づかれないようにしたい。それに依ってお父さんの対処法が変わってくる。それだけに佳乃さんには素知らぬ顔を貫く必要があった。
石塚裕司に関しては、義父は妻の考えより越村の意見を聞きたいのだ。それで左右されないように妻には相談していない。問題は息子裕司の店を何とか軌道に乗せたい一身で、義父は動いている。それだけにここまで裕司の店に肩入れしてくれた越村には感謝していた。
石塚家の朝食は和食で、いつも味噌汁の具材に時間を掛けて、出汁の吟味から始まる。それからその日に依って変わる具材の準備をする。まあこの二つはほぼ同時進行には違いないが一番は出汁だ。それに依って具材が生きてくる。佳乃はこれを二十年以上も拘り続けて朝食に提供していた。以前は長男純一の嫁さんに仕込んでいたが、早々とマンションを借りてここから出て、今は沙苗さんがその秘伝の研修を受けていた。
食卓には秘伝の味噌汁と漬け物の他に一品、今日は焼き魚だ。毎度の事ながら何だか修学旅行の食事に似ている。
今朝から義父の通勤散歩に越村が同行するのは、沙苗さんから耳に入っていて、十分後に身支度を終えて出ると言われ、社長は佳乃さんと一緒に居間に下がった。
天王町の店には歩いて十分で着ける。なのに社長はいつも三十分掛けて店にくる。二十分も余計に歩く道はいつも決まってない。西は白川通、南は冷泉通までで、東は山裾までだ。大きな通りは避けて、小さい込み入った道を歩くのが好みのようだ。以上が沙苗さんから聞いた朝の散歩道だ。もう何十年とそうしてコースごとに歩く道は決まっている。その時の気分で変えるがずっと同じ場合もある。




